レポート

LPI-Japan,『エグゼクティブセミナー「HTML5/OSS ビジネスサミット 2014」~新たなビジネスを切り開くHTML5とオープンソース~』レポート

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基調講演:『楽天における「変化に対応していくOSSとHTML5の活用」の実際』

基調講演として,楽天⁠株⁠ 森正弥氏が登壇した。

楽天⁠株⁠ 森正弥氏

楽天(株) 森正弥氏

はじめに

楽天市場のビジネスは現在にいたるまで重要な知見がある。それはロングテールである。ロングテールはAmazonのビジネスに対しての分析の仮説から出てきた概念である。しかしロングテールという言葉自体は昔からあった。とてもマニアックな商品を1人や2人が少しだけ購入している。売上総和的に見たときに,その少しだけ購入しているものが全体の8割を占めている。ロングテールには売上の非常に大きな部分の可能性があり,そこをいかに制圧するかが問題である。商品はジャンルによらず,すべてはロングテールである。

OSSの活用と楽天⁠株⁠⁠以下,楽天)の歴史やビジネスは非常に密接に関わっている。

楽天はOSSの技術を積極的に活用するだけではなく,開発メンバーを提供したりパッチを提供したりしている。独自に開発したノウハウも公開している。とくにビッグデータはOSSを120%フルに活用している。商用製品はほとんど使用していない。

インターネットは今のITのアーキテクチャをひっくり返し続けている。その変化を生み出しているのはエンジニアである。インターネットのエンジニアたちがつながりあい,協力しあって新しいOSSのソリューションを出して行く。今の問題に対して応えられるのはOSSであって,そのためにOSSの開発者を提供したりOSSを提供している。

世界的に起きている変化

バチカンで行われるローマ教皇選挙会である「コンクラーベ」の,2005年と2013年の様子を比べてみる。世界的に起きている変化として2013年の様子では,参加者は皆,スマートフォン,タブレット端末,中間のファブレットを使用して写真撮影をしている。

世界中のすべての人が一人一人マシンを手に持っており,かつ常にインターネットに接続されている世界で活動している世の中になった。

ロングテール

かつて, 人々は自分が行けるところで,そこで扱っている物しか買えなかった。企業はあるまとまりをもったクラスタに人々は分類されると考えていたが,そうではなくて,本当はそのようなクラスタに人々を押し込んでいたのだ。インターネットはそれら制約から人々を開放した。とくにモバイルは本人が欲しいものにダイレクトに結びつく。

一般的に通常なにかの集団を考えるときは正規分布を使う。しかしインターネットにはそのような集団は存在しない。グループを分析すると言うことには意味がなく,個人を分析することに意味がある。楽天市場はインターネットの多様性に応じて,ダイレクトにお客様を結びつけて広がって行く,と言うのが創業のコンセプトである。

楽天市場では,1本,1,500万円のロマネコンティが残り1本,とあってもこれが売れてしまう。ヘリコプター1機,4,000万円が売れてしまう。3ヵ月に一度スーパーセールを行っているが車が売れる。これらのほとんどがロングテールである。この商品を欲しい人がもしかしたら地球上に10人いる。この10人に届くかどうかということを考えることが重要である。

情報爆発,ビッグデータとクラウド

世の中では,これまでのアプローチでは追いつかない情報爆発という様相を呈している。一番わかりやすいのはモバイルデータである。楽天が持っている内部のデータも爆発している。一般的にビッグデータ,データサイエンティストと言われている時代である。楽天ではデータを分析して行き,たとえばレコメンドして,広告のサービスを改善して行くとか,データの活用をして行くとか価値の発見を同時に行っている。

とは言え,楽天ではこれまでバッチ処理に非常に長時間かかるとか,またストレージがあふれてサービスを停止しなければならないこともあった。裏側ではこれまでのアーキテクチャではデータ処理できないケースが少なくない。しかし問題が起きると同時にソリューションが現れてきた。2006年から一気に来たのがクラウドである。

これらの関連技術はOSSとして公開されているものが多い。楽天はOSSの技術を積極的に活用するだけではなく,開発メンバーを提供したりパッチを提供している。独自に開発したノウハウも公開している。とくにビッグデータはOSSを120%フルに活用している。商用製品はほとんど使用していない。

アーキテクチャをひっくり返す

楽天は今のアーキテクチャをひっくり返し続けている。それに対してインターネットのエンジニアたちが協力し合って新しいOSSのソリューションを提供して行く。今の問題に対して応えられるのはOSSである。そのため楽天ではOSSの開発者を提供したりOSSを提供している。

商用製品でもOSSでもインターネットのトランザクションの爆発的増加の中では,とんでもないバグが出てきたりする。世界で初めて出たというバグがよくある。成長していく最前線だと商用製品でもOSSでもバグに対するサイクルの差はあまり出てこない。

楽天は情報爆発に対して,オンメモリでI/Oを処理して行く新しいRDBのような処理をしないNoSQLなどについてのプロダクトを,Rubyのまつもとゆきひろ氏と共同開発した。

楽天市場のスーパーセールでは1時間で60億円売れるような爆発的なトランザクションが来る。データが増えていく時代,ストレージも重要であり,楽天は独自開発してOSS化している。商用の製品と比較しても遜色がない。このOSSの安定性はNo.1である。楽天の20種類を超えるサービスで活用しているが,システム障害を起こしたことは一度もない。

ビッグデータの話としてはキーワードはHadoopである。様々な企業のアーキテクチャとして標準になっている。楽天では2007年から取り組んでいる。

放棄することになりかかったサービスをOSSが救った

一般的に,データの更新頻度が変ると売上が変る。たとえば1年間更新されていないより,1週間で更新されるほうが良い。楽天ではできる限りリアルタイムで更新するようにした。しかし,システム的には非常に大変だった。

一般的に,商品のジャンル分けが細かければ細かいほど全体の売上が伸びる。インターネットにおいては,探すことに対するコストが低い。検索してダイレクトに飛ぶ。カタログの分類が細かくても問題はない。そのため楽天市場では数百種類だったものが8,000種類に一気に増えた。しかし,バッチが死んでしまった。このサービスは放棄することになりかかってしまった。しかし,Haddopを使ってバッチ処理をしROMAを使ってI/Oするというような仕組みを実装していくことで,更新頻度を高め,ジャンルを増やし,売上を伸ばした。

一般的に,インターネット,ロングテール,ビッグデータというものに対応して行くには,OSSの活用が非常に重要であることがわかる。

コンピュータが予測できるものと,人間しか予測できないもの

楽天市場では商品検索されたキーワードの精度を高め,売上につなげて伸ばして行っている。たとえば,検索したかった言葉を間違い訂正する。Eコマースに入って行くともっと踏み込んで,商品名に近付ける,固有名詞に近付けて行く。まだ実装できていない研究テーマだか,在庫があるものに近付けていて行くことも注力している。

楽天ではOSSの活用を一歩進めて,ありったけのOSSをつなげてプラットフォームを構築している。たとえばなにをしているのかと言うと,需要予測の最適化を行っている。ある商品がどれだけ売れるのかを予測して仕入れを最適化して行く。ある事業においてはバイヤーの経験に基づいて仕入れを行っていたが,このシステムをバイヤーと比べて全戦全勝するまで育て上げた。氷川きよしのCDの売上であればピッタリ当たる。

しかしこのシステムには絶対に予測できないこともある。たとえばAKB48の新しいCDの売上は予測できない。レコード会社が毎回新しい売り方などを仕掛けてくるためである。ルールを破壊してくるのでコンピュータには予測ができない。

一般的にトップのほうや爆発的なものは人間に依存するが,しかしロングテールに関してはコンピュータがすべてである。

変化が激しい世の中

世の中の変化が激しくてて楽天は正直ついて行けない。スマートフォン,モバイルの普及,人々はよりロングテールになっていく。楽天はビッグデータと戦っていく。

たとえば一般的にオンラインtoオフラインという用語が小売りを中心に普及しているが,このような概念も出てきている。オンラインの店舗と実店舗でのサービスを融合させるビジネスである。オンラインと実空間をまたぐ購買は購入額が大きいと言うことが分析でわかっている。

さいごに

ファブレットというキーワードが海外ではよく聞かれる。楽天ではHTML5を使用してレスポンシブWebデザインでどの画面でもこちらが意図しているものを提供する。楽天の中ではHTML5は非常に重要である。

社内の人材育成については正直,苦しんでいる。様々なトレーニングプログラム,資格認定試験,さらにカバーしなければならないトピックが多い。どんどん新しい技術が出てきている。

楽天では世界中からエンジニアが集まっている。国内の3割が外国勢である。ビッグデータ部では20ヵ国を超えていて,ほとんど日本語を話す人はいない。

社内では知識を共有するテックトークというイベントをほぼ週1で行っている。楽天テクノロジーカンファレンスと言うイベントも行っている。テックトークを行っているエンジニアが中心に運営している。

まだまだ人材が足りない。楽天ではHTML5プロフェッショナル認定試験の認定者を求めている。

著者プロフィール

林也寸夫(はやしやすお)

gihyo.jp編集部の中の人。

URL:https://www.facebook.com/clagas2003

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