Qtのフラッグシップイベント「Qt Developer Day Tokyo 2014」開催レポート

はじめに

5/20(火)に秋葉原コンベンションホールで開催したQt Developer Day Tokyo 2014は、約300名の参加者を集め、大盛況のうちに終了しました。

参考
Qtのフラッグシップイベント「Qt Developer Day Tokyo 2014」5月20日に秋葉原で開催

「Qt Developer Day」はマルチプラットフォームGUI開発フレームワーク"Qt"の最新情報に関するセッションやトレーニング、Qtを使用する上でのアドバイス等、初心者から熟練者までの幅広い層を対象としたイベントです。例年アメリカとドイツで開催され、多くの参加者を集めるフラッグシップイベントで、日本では初の開催となりました。

会場内の大パネル
会場内の大パネル

このほどセッション資料、基調講演の動画等が公開されましたので、これに合わせて開催レポートをお送りします。

基調講演「現代のアプリケーション開発の最前線にあるQt」

午前中は、会場2階ホールで基調講演が行われました。

会場前の通路には、主催のDigia、スポンサーであるSRA、Wind River、QNXソフトウェアシステムズと、日本Qtユーザー会が展示するデモが並んでいます。朝の9時から会場に集まり始めたたくさんの参加者は、デモを眺めながら開始を待っていました。

受付を待つ来場者。会場外まで伸びる長蛇の列
受付を待つ来場者。会場外まで伸びる長蛇の列

開始時間には300以上ある席がほぼ満席となりました。Digiaの副社長であるJuhapekka Niemiによる挨拶の後、基調講演が始まりました。

最初の基調講演はDigiaの上級副社長であるTommi Laitinenによる「技術の壁を打ち破る:現代のアプリケーション開発の最前線にあるQt」です。このセッションでは、Digiaのフォーカスポイントに触れつつ、1年間のQtの動きを振り返ります。

振り返りでは、2013年10月にリリースされたQt Enterprise Embeddedについての紹介の他、昨年12月リリースされた5.2のダウンロード数が100万を超えたことに触れ、さらにイベント当日となる5月20日に5.3がリリースされたことが発表されました。

また、増加傾向にあるQtアプリケーションのマルチスクリーン化と、それを実現するために有効な手段として、アプリケーション管理、DB管理、ストレージサーバ管理といったバックエンドに必要な機能をクラウド提供する新サービスであるQt Cloud Services等の紹介がありました。

そして、研究開発への投資を強化してQtユーザへ貢献し、50万人を超えるQtユーザの95%以上が満足もしくは非常に満足と感じている状況を更に好転させたいと宣言し、スピーチを締めました。

満員となった基調講演会場
満員となった基調講演会場

基調講演2「Qtのあゆみ」

続いて壇上に立ったのは、DigiaのCTOかつQt ProjectのChief MaintainerであるLars Knollです。⁠Qtのあゆみ:我々の今とテクノロジーの向かう先」というタイトルで講演が行われました。

Qtが20年前に2人の開発者が立ち上げたプロジェクトから始まり開発が進んでいった経緯の話から入り、恐らく会場のほとんどの参加者が最も興味を持っていた直近のQtの動向や今後のプランを語ります。

この1年で、Qtのバージョンは5.2、そして5.3へとバージョンアップされました。大きな変化として、Android,iOS,WinRT等の新たなプラットフォームでのサポート開始に加え、Positioning,Bluetooth,NFCといった新たなモジュールや、Qt QuickコンテンツをWidgetベースのアプリケーションに統合する新たなクラス QQuickWidget、QMLを事前にコンパイルすることでロード時間とパフォーマンスの高速化が可能なQt Quick Compiler等の追加、QtCreatorの3.0/3.1 リリース、他いくつかの機能追加や強化点が挙げられました。

また、事前に構築されたQtベースのソフトウェアスタックを提供することでデプロイ等組込み開発の準備手順をなくし、開発期間短縮に寄与するソリューションであるQt Enterprise Embeddedや、Qt WebKitからの移行が予定されているChromiumベースのHTMLレンダリングエンジンQt WebEngine、前述のQt Cloud Services 等がフィーチャーされていました。

今後の見通しとしては、Qt5.4が今年の10~11月ごろ、5.5は来年の4~5月のリリースが予定されているそうです。また、組込み機器向けにに特化した付加価値やパフォーマンス向上といった今年の研究開発における注力分野について発表し、最後に、Qt 5.3でのデスクトップ側での強化によりQt4から5への移行が容易になっているためぜひ移行して欲しいとメッセージを残し、セッションは終了しました。

日本市場のQt

休憩をはさんで、本イベントのメインスポンサーであるSRAのシニアマネージャ 山口 大介による、⁠日本市場におけるQtの拡がり」からセッションが再開されます。

実はこのイベントの参加者は、SRAからの招待客が大多数を締めていましたが、まずはSRAを知らない、知っていてもSRAのQt関連サービスについて認識していない参加者に向けたサービス紹介からスタートします。そして、日本国内でのQtの急速な普及状況やプラットフォーム別の利用者の割合をデータを交え紹介した後、車載や医療といった業界別の市場ニーズとそれに対するQtの利点についての話をしました。

基調講演最後のセッションは、Digiaのテクニカルプロダクトマーケティングマネージャー Tuukka Ahoniemiによる「QtはあなたのInternet of Thingsにつながるデバイスの戦略を後押しします」です。このセッションでは、多くの組込み機器やセンサーが互いにつながりインターネットに接続される、昨今の状況におけるQtの活用方法を提案します。

インターネットを介してつながるさまざまなデバイスやPCでは、Qtでのクロスプラットフォーム開発は大きなアドバンテージがあり、リッチな画面、短期リリースを実現する為に、Qt Quick, Qt WebEngine, Qt Widgets,といった機能や、Qt Cloud ServicesやQt Enterprise Embeddedといったサービスが有効であるとTuukaは語ります。

最後に、Digiaの展示ブースに置かれていた、Qt Cloud Servicesを介して気象センサーとPC、モバイルが連携するデモを紹介し、午前中の基調講演は全て終了となりました。

ランチタイムでは、参加者は無料で配られた弁当をつつきながら、日本Qtユーザ会が主体となって一人5分ほどの小ネタを披露したライトニングトークに耳を傾けたり、デモブースを回ったりと思い思いに過ごします。

気象観測機器、Kinect、楽器等と連携したDigiaのデモ
満気象観測機器、Kinect、楽器等と連携したDigiaのデモ
QNX CARでの車載デモ
QNX CARでの車載デモ

テクニカルセッション、トレーニング

午後からは、複数のセッションルームのある5階に会場を移し、3つのセッションが同時に進行します。

100名以上収容可能な部屋で行われた「Qtエッセンシャル」というトラックでは、Qt自身やライブコーディングを交えたQt Creatorの紹介から始まって、Qt Quickについては、基本的なコンセプトや機能の紹介と、C++ による拡張を含むより応用的な活用方法を紹介すると2つのセッションが用意されました。また、注目度の高いQt Enterprise Embedded による組込み開発手法を紹介するセッションもありました。どちらもビギナーからエキスパート迄広い層の聴講者で部屋を埋めていました。

もうひとつのトラックであるQtエッセンシャル2では、この日3本のセッションを担当しフル稼働したLars Knollによる、最新のQt5の主な機能や、ネイティブとHTML5のハイブリッドなアプリケーション開発手法についてのセッションの他、QNX、Wind Riverによる、RTOSにターゲットを絞ったセッションも行われ、こちらも立見が出るほどの盛況ぶりでした。

また、別部屋ではトレーニングトラックも並行して行われ、前半はQt MobileにフォーカスしたQtの基本機能を用いた開発手法について、後半はQtのクラウドサービスやQt Cloud APIを使ったEnginio Data Storageによるクラウドバックエンドの作成方法についての講義が行われました。終了後には、5時間近く集中して講義を受け、疲弊しながらも満足気な面持ちで帰路に着く参加者の姿が印象的でした。

余談になりますが、休憩時間に日本Qtユーザ会「おやつ部」が用意した、Qtのロゴを施したチョコレートや瓦せんべいといったハイセンスなおやつが、参加者の注目を集め喜ばせていました。

日本Qtユーザ会「おやつ部」提供のお菓子
日本Qtユーザ会「おやつ部」提供のお菓子

最後に

今回のイベントでは、広告等の集客活動が決して十分とは言えず、果たして参加者が集まるのだろうかという懸念もありましたが、結果、予想を大きく上回る参加者を集め、国内におけるQtの高い注目度を改めて感じました。来年以降も、より良い形で開催し続けられることを願っています。

また冒頭で触れた通り、セッション資料やセッションで使われたサンプルコード、基調講演/デモ展示のYouTube動画等が以下で公開されています。

DEVELOPER DAY JAPAN 2014 公式サイト
URL:http://Qt.Digia.com/Jp/QtDD2014/QtDDTokyo2014/

SRAによるQtトレーニングやイベント関連記事へのリンク等も追加されていますので、ぜひご覧ください。イベントに関して、Qtに関してのご質問や詳細説明のについては以下からお問い合わせください。

SRA Qtページ
URL:https://www.sra.co.jp/qt/inquiry/index.html
※ この記事に掲載した画像の著作権はすべてDigia, Qtに帰属します。

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