レポート

アートとテクノロジーのカンファレンス FITC Tokyo 2015 詳細レポート(2日目)

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2015年2月7,8日の2日間にわたり日本科学未来館で開催された,FITC Tokyo 2015をレポートします。

前回に続き,今回は2日目である2月8日分のセッションについて触れていきます。

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Cod.Act – 動きとサウンドの関係を研究

Cod.Act

2日目のトップは,Cod.Actの音楽家André氏(兄)と建築家であり造形芸術家でもあるMichel氏(弟)が登壇。最近の作品について制作過程を交えながら紹介しました。

Cod.Actというレーベルでは,様々なリサーチを活かしてマシンと音響を合体させた音響インスタレーションを制作しています。彼らがコントロールして観せるタイプと,インタラクティブなタイプのどちらも制作します。毎年,マシンを改良し,それと響き合う音響の開発について調査を重ねています。このセッションではCod.Actが「音響彫刻」と呼んでいる最近の作品2つについて紹介しました。

Cycloïd-E

1つ目は第14回メディア芸術祭のアート部門で大賞を受賞したCycloïd-E(サイクロイド・イー)です。

メカニックについて

Cod.Actはサウンドもメカニックも,波長によって動きを変えるという点で共通であると考えています。Cycloïd-Eは振り子の原理をもとにしており,振り子が振動することによって様々に動きを変え,連結して波状の動きを作り出すように制作したそうです。

振り子の原理を採用したことについて,振り子は調和の取れた動きをする。ランダムな動きではあるが私たちはハーモニーがあると見ている。それはサウンド面でのハーモニーにもつながるのではないかと思ったと述べています。また,普通の振り子は重力によって動きますが,モーターを付けて水平に動く振り子をつくったそうです。

動きについては,⁠全くコントロールされない方向に向かって空間を早く動くことが大変重要だった」と述べています。それぞれのチューブにスピーカーをひとつずつ,センサーは関節部に付け,センサーから得た信号をモーターに伝え,モーターが動きを制御していると説明しました。

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サウンドについて

André氏は音楽家である故,⁠サウンドは,音ではなく音楽である必要がある」と考えています。Cycloïd-Eの音楽は,メカニカルな部分の動きと連携して,増幅したり音を奏でたりするように制作したそうです。彼は「振り子の振動を利用してハーモニーが生まれるが,私はサウンドのほうでもハーモニーが生まれると思う。重要なのはこの機械が生み出すハーモニーのようなシステムをつくり出すことだった」と話し,メカニックなほうにかかるエネルギーがどんどん大きくなり加速すれば,サウンドのほうも膨らませてリッチなものにする,という仕組みを作ったのだそうです。

まずおこなったのは,音の断片を拾い合わせてハーモニーをつくり,その上にまた別のハーモニーを重ね合わせていくこと。ピアノ,バイオリン,人の声を録音し,それぞれのハーモニーの周波を抽出,マシンにおとしていったそうです。

音楽のハーモニーは低音でエレクトロニクスのような感じにし,速くなればなるほど様々な音程が加わり,オーケストラのようになるようにしました。こうしてCycloïd-Eというメカニックは,動きながらリアルタイムに音楽を自作して投げかけるというつくりになりました。

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Nyloïd

2つ目のNyloïd(ナイロイド)という作品は,Cycloïd-Eを発展させたものです。Cycloïd-Eが複雑だったのでシンプルにしたいという想いからつくられました。FITC Tokyo 2015と同時期に開催された第18回文化庁メディア芸術祭でも展示されており,この作品もまたアート部門で優秀賞を受賞しました。

メカニックについて

「動きがランダムでありながら,有機的かつ自然で,生き物が動いているような印象を与える」というのがNyloïdにおける重要なテーマであったそうです。Cycloïd-Eが硬いチューブに多くの機能を盛り込んでいたのに対し,有機的な動きを表現するためにはチューブではなく違う素材を使おうとMichel氏は考え,ケーブルを試しました。

ケーブルにエネルギーを溜め込み,何らかの形でデフォルメする,デフォルメを重ねていってある一瞬それを放出し,そしてもとに戻る,という動きを実現できる素材を探しました。また,圧力を加えることによって,折れ曲がったり結び目ができるような動きをするようになりました。汎用性を高めることと,神経組織のような動きを出したいという気持ちから,ケーブルの改良に試行錯誤したと言います(ケーブルが絡まって動けなくなってしまったこともあったそうです。危険なので,人々には少し離れた距離から見てもらった,とも話していました)⁠

開発段階のNyloïd

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他にも,安定性を持たせるため土台を三脚にし,3つのトライポートから軸を出すようにするなど,工夫をしたそうです。ケーブルは様々な性質を持っているものを調査し,最終的にポリアミドというナイロンのような素材に辿り着きました。全体の仕組みとしては,下につけた3つのモーターが回転することでケーブルがたわんだり伸びたりし,ヘッドに付けたセンサーで方向を制御,取得したスピードを音楽へ伝え,ヘッドのスピーカーから音楽を出す,というものになりました。

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サウンドについて

音楽の面でもCycloïd-Eを発展させ,より有機的な音が出せるように,たわんだときにどのような音を出すのか,メカニックな動きに合わせてどのように音を変えていくか,という点を工夫したそうです。そして様々な音をテストした結果,人の声が最も相応しいということになりました。André氏は人の声には,人の耳を傾けさせたり,惹きつける要素があり,音の幅もある。そして,人間を超えた音幅にしていこうとも考えたと言います。

録音した音をシンセサイザーで再生し,組み合わせていくことによってひとつのサウンドをつくり上げました。すべての動きを音響に反映していて,⁠ナイロイドは動きと出す音によって自己表現をしている」のだと言います。⁠ただ単にシンセサイザーでロボットのような音を出すのではなく,動きによる自然な音にしようとした」と説明しました。

André氏は「人の声をもとにシンセサイザーで出力し直したのは,人間の声には限界があるけど,機械でその限界を超えることができたという点で,面白いと思った。私は音楽家であるので,必ず音が音楽でなければいけないと思っている。音節で区切った様々な音を重ね合わせることによって,ひとつのハーモニーが生まれる」と語っています。

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さらに課題となったのは,ナイロイドが動くときに音でどのような表現をするのかということ。⁠ナイロイドが圧力をかけられて下を向いているときに,呻めいているようにするにはどうしたらよいか。メカニックに付けられているセンサーで,信号の値が表示され,信号の値の分析結果からどの音を出すか,別で構築されている音節を探しにいく。そして探し得たものをいかに音楽に昇華していくか」というサウンド面での試行錯誤について説明しました。

著者プロフィール

関谷繭子(せきやまゆこ)

株式会社 えにしテック

昼は受託系Web開発の会社でデザインのお仕事。夜はおうちでoFやLiveで遊んでいる。

Facebook:https://www.facebook.com/mayukosekiya

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