GMIC北京2015レポート:地元企業が躍進する独自巨大市場に

中国・北京でGW直前の4月28日から30日まで開催されたアジア最大のモバイル・インターネットのイベント「GMIC北京2015⁠⁠。筆者は2011年、2012年と参加した後、ここ数年PM2.5に嫌気がさしていたこともあり、参加をしていませんでしたが、数年ぶりに参加をし、その変遷に驚かされることになりました。

GMICの会場。このどんよりとした曇り空が北京ではあたりまえになってしまいました
GMICの会場。このどんよりとした曇り空が北京ではあたりまえになってしまいました

FacebookもGoogleも存在感がなく、Appleの存在感も限定的な市場

数年ぶりにGMICに参加してみて驚いたのが、数年前とは比べられないほどの来場者と、ブースやキーノートのスピーカーの大きな顔ぶれの変化です。2011年や2012年のころは、日本からはDeNAやグリーがメインステージでキーノートを行い、ノキアやモトローラが大きなブースを出していました。また2012年のGMICでは、Xiaomi社のCEO雷軍氏がはじめてGMICでキーノートを行い、中国発の企業が大きく躍進し、その存在感が大きなものになる一方、日本や欧州のプレイヤーの存在感が相対的に小さくなっていっていると感じた節目となる年でした。

地元の参加者が増えたGMIC会場
地元の参加者が増えたGMIC会場

数年前までは、英語でのセッションもかなり見受けられていましたが、今年のGMICでのセッションはほぼ中国語一色で、ごく少数英語のセッションがあるのみ。来場者の数もとても増え、地元中国の企業のブースの出展やスピーカーの登壇が大部分を占めるようになっていました。とくに展示会場では、モバイル広告関連の地元企業による巨大なブースがいくつも立ち並んでいました。

日本からは、Adways社やZucks社のブースなどが見受けられましたが、数年前は最小単位のスタンドでの出展しか見られなかったモバイル広告関連の事業者が今年は、中国企業も外資企業もかなりの予算をかけて、イベントに取り組んでいるのがひしひしと伝わってきました。

中国のアプリ事業者の巨大ブース
中国のアプリ事業者の巨大ブース
中国のモバイル広告事業者DoMobのブース
中国のモバイル広告事業者DoMobのブース
日本から参加のZucks社のブース。数年前まではモバイル広告関連の企業のブースはこのサイズばかりの出展でした
日本から参加のZucks社のブース。数年前まではモバイル広告関連の企業のブースはこのサイズばかりの出展でした

会場に花をそえるコンパニオンの数も増えており、中国のインバウンド・アウトバウンドのモバイル広告予算を取りに行こうと各社非常に力を入れているのが伝わってきました。外資系企業も各ブースに地元スタッフを何人も配置しており、数年前にモバイル広告関連での海外進出、及び外資系モバイル広告企業のアジア進出に携わっていた筆者としては、この領域で中国へ進出しようとするには相応の準備と規模感でないと難しくなってしまったのだなとため息が出るようなレッドオーシャンぶりです。中国でもドッグイヤーの早さでモバイル広告市場に大きな変化が起きてきていたようです。

GMIC会場でのコンパニオン
GMIC会場でのコンパニオン GMIC会場でのコンパニオン GMIC会場でのコンパニオン

また、このGMICでは、Xiomi、UCWebなど、毎年躍進している中国企業が登場してくるのですが、今年はCheetahMobileというアプリ事業者が目立っていました。CheetahMobileはCleanMasterというタスク管理アプリでしられる急成長の企業。昨年、設立3年で上場し、フランスのモバイル広告事業者、MobPartner社を買収しています。中国のアプリデベロッパが海外市場に目を向けていくのに合わせて、こうした海外の事業者を中国の会社が買収していくという事例は増えていきそうです。

会場前に並べられたCheetahmobile社のマスコット。どことなく'80年代の日本テイストです
会場前に並べられたCheetahmobile社のマスコット。どことなく'80年代の日本テイストです

去年に引き続き注目を集めていた石黒氏のヒューマノイドロボット

海外、とくに日本の存在感があまり感じられなくなったGMICですが、今年も昨年同様にメイン会場でセッションを行い注目を集めていたのが、大阪大学教授の石黒浩氏のヒューマノイドロボットのデモンストレーション。自身にそっくりなロボットをつくった研究者として日本でもニュースなどで目にした人が多いのではないでしょうか。その石黒氏が今回、GMICで披露したのがデモンストレーションしたのが、ヤンヤンと名づけられた女性の外見のロボット。

GMICのメインステージでのヒューマノイド・ロボット、マダム・ヤンヤン
GMICのメインステージでのヒューマノイド・ロボット、マダム・ヤンヤン

実はこのロボット、上海で石黒氏と共同で、青少年へのロボット教育、研究の普及を進めているNPOを主導しているソン・ヤン氏がモデルとなっています。本人とそっくりなヒューマノイドロボットのデモンストレーションは北京の会場でも興味深く見られていて、メディア各社が盛んに撮影を行っていました。

日本ではデパートでの販売や案内のために導入が始まっていますが、石黒氏は今後、介護の分野や、語学学習の分野でのユースケースを紹介していました。中国では日本とは違った導入が進んだり、受けいられ方がされるようになっていくか気になるところです。そのためには、地元の方に似せたヒューマノイドロボットを使って、地元の人を巻き込んで進めていっているのが功を奏しているようです。

中国でも増えているIoT関連の商品

GMICではモバイルアプリ、モバイル広告関連の展示に交じってIoT関連の出展も目立っていました。展示会場入り口付近で目立っていたのが、スマートウォッチ関連の出品。高級時計に似せたスマートウォッチとしてフランス企業のWithingsの商品が話題となっていますが、inWatchFusionというブランドは同じようにシンプルなたたずまいのスマートウォッチ。文字盤の外周部分の時刻の位置のところ12ヵ所にLEDが入っており、1日の活動量が目標に対して何パーセントまで達しているかがチェックできるほか、メールや電話の通知をLED点灯で知らせてくれます。会場ではスワロフスキーのラインストーンでデコレーションされたモデル、inWatchHerも展示されていました。

クラシカルな外見のスマートウォッチ、inWatchFusion
クラシカルな外見のスマートウォッチ、inWatchFusion
スワロフスキーが使われている豪華な外見のinWatchHer
スワロフスキーが使われている豪華な外見のinWatchHer
別会社によるmoto360によく似た外見のスマートウォッチ
別会社によるmoto360によく似た外見のスマートウォッチ
おそらく許諾は得ていないと思われるウォッチフェイスのデザインも。左下はとなりのトトロ風
おそらく許諾は得ていないと思われるウォッチフェイスのデザインも。左下はとなりのトトロ風

その他にも、なぜかコーヒーメーカ風にデザインされたお洒落な3DプリンタMOCAや、スマートフォンで操作できる電源タップや、ホームカメラといったIoT製品やロボットの展示も増えていました。中には日本企業のロボットにそっくりなものも。

まるでコーヒーメーカのような3Dプリンタ。マグカップもこれでプリント?
まるでコーヒーメーカのような3Dプリンタ。マグカップもこれでプリント?
GMIC会場ではこのような小型ロボットも多く展示されていました
GMIC会場ではこのような小型ロボットも多く展示されていました
レゴのマインドストームとゾイドを組み合わせたような子供向け学習ブロック・トイ
レゴのマインドストームとゾイドを組み合わせたような子供向け学習ブロック・トイ
NECのPaPeRoとよく似たUnisroboのロボット。なにか協力関係があるかもしれませんね
NECのPaPeRoとよく似たUnisroboのロボット。なにか協力関係があるかもしれませんね

ひと昔までは、海外から中国に進出していこうという外資系企業の展示ばかりが目立ちましたが、今年は地元企業の成長と成熟がより強く感じられた展示会でした。

訪れるたびに変化を感じるGMIC。来年はどんな企業やサービスがでてきているだろうか
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