レポート

オープンソースは,今,黄金時代を迎えた ─LinuxCon Japan 2015基調講演レポート

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

持続的イノベーションがソフトウェア開発を変革

基調講演の2番目のスピーカーとして登壇したのは,PaaS基盤ソフトを開発するCloud Foundry FoundationのTechnology Chief of Staff であるChip Childers氏です。Childers氏は,⁠The Makings of a Modern Application Architecture」と題して,新しいアプリケーションの動向を紹介するとともに,なぜ,企業がそのような新しいアプリケーションアーキテクチャに取り組んでいるかを説明しました。

Chip Childers氏

Chip Childers氏

Childers氏はまず,新しい時代の夜明けだと告げました。MITスローンビジネスクールは,持続的競争優位がビジネスには大切だと主張していたが,現在では,そのような戦略をとることは困難であり,⁠持続的イノベーションが必要だ」と続けます。

持続的イノベーションに対応するために,今,ソフトウェア開発が変化してきているといいます。これまでの「ウォーターフォールメソトロジー」によるリスクの高い開発方式から,⁠アジャイルメソトロジー」によるリスクの低い開発方式に進んでいるといいます。そして,⁠モノリシック/レイヤー型」から「マイクロサービス型」へとアプリケーションパターンも,変化しているといいます。一方で,マイクロサービスはすばらしいものであるが,それに対応するには,開発者と運用者の制約を取り除く活動が重要であると述べました。

時代はモノリシックからマイクロサービスへ

時代はモノリシックからマイクロサービスへ

最後に,Childers氏は,これらの動きを踏まえ,Cloud Foundryが,継続的イノベーションを行うための道場(place of practice)であると紹介しました。

エコシステムがオープンソース成功の秘訣

初日の基調講演の最後に,Treasure Data社Founder CEO,芳川 裕誠氏が登壇しました。芳川氏は,レッドハット社および三井ベンチャーズに勤務し,2011年Treasure Data社をシリコンバレーで創業した経歴を持ちます。

芳川 裕誠氏

芳川 裕誠氏

まず,Treasure Data社は,エンドツーエンドのフルマネージドのビッグデータサービスを提供するリーダーであり,ガートナー社が選ぶ2014年ビッグデータ分野の⁠Cool Vendor⁠であると紹介しました。読者のみなさんにとっては,Treasure Data社は,オープンソースのデータコレクターであるFluentdを開発したベンダとしても有名だと思います。

その経験を元にして,⁠The Evolution of Open Source Business from Dual Licenses to Hybrid Ecosystems 」と題して,オープンソースの歴史を振り返るともに,ソフトウェアビジネスの未来を語りました。

オープンソース時代の前は,秘密でプロプライエタリなソフトウェアがメインフレームなどの周辺に生息しているものであったといいます。その後,オープンソースが進化し,x86サーバー,Linuxなどのコモディティプラットフォームの採用がITの基盤となっていったが,依然として,巨人(IBM,マイクロソフト,オラクル)が業界を支配していたと進めます。

しかし,クラウドが業界を変えたと述べます。それは,Amazon Web Servicesの登場で,企業がクラウドに移行するようになり,グローバルで24時間365日サポートを求めることで,ソフトウェアビジネスのあり方に変化をもたらしたことだとします。その変化とは,今までのソフトウェアは地理的に小さく展開してきたため,クラウドの需要に対応できず,グローバルにスケールができるオープンソースだけが,その需要に対応できたことだといいます。

では,このような変化をさらにドライブするものには,何が必要でしょうか?
それは,イノベーションであり,それには,コラボレーションとエコシステムが重要だとします。

芳川氏は,⁠プロプライエタリソフトウェア企業は,本当にはコラボレーションはしない」とする一方で,オープンソースの現実も紹介します。それは,オープンソースプロジェクトの98%が,2年目以降は何も開発されず,84%は2名以上のコントリビューターがいないというデータです。

オープンソースの現実

オープンソースの現実

そのような事態を避ける方法として,⁠プロジェクトをハブとみなし,エコシステムを構築すべきだ」と主張しました。その成功事例として,レッドハット社のLinuxディストリビューション,Fluentd,APIを使って協力が容易になる取り組みを行って成功したチャットサービスSlackをあげました。

Fluentdがハブとなるエコシステム

Fluentdがハブとなるエコシステム

最後に芳川氏は,ガンジーの言葉である

『最初,彼らはあなたを無視する。つぎに,あざ笑い,それからあなたに戦いを挑んでくる。そして,あなたは勝つのだ(First they ignore you, then they laugh at you, then they fight you, then you win)⁠

を引用し,取り組みを開始しても,最初は無視されたりするだろうとも,最後には勝てるのだと述べ,⁠エコシステム,コラボレーションへの取り組みが成功の秘訣である」と締めました。

ガンジーの言葉

個人的に,芳川氏とは,彼のレッドハット時代に一緒に仕事をしていたので,彼がオープンソースについて熱い思いを持っていることを昔から知っていましたし,また,独立後の活躍の遠くから見ていました。そのため,この日の講演内容は,彼の経験,考えたことから,本当に導き出したことだと実感した次第です。

参加者として,ボランティアとして,スピーカーとして

海外カンファレンスに何度も参加してきた経験から,LinuxCon+OpenCloudは,日本でもっとも海外カンファレンスの香りを感じるイベントです。

それは,すべてのセッションが英語で実施されるということもありますが,他には,アジア最大のLinuxイベントということもあり,海外からの参加者も多いためです。そんな彼らが,セッションを聞くだけでなく,ランチタイムなどで日本のエンジニアとコミュニケーションしているシーンを何度も見かけました。あまり,日本の他のITイベントでは見られない光景だと思います。

また,ボランティアメンバーとして参加している人が多いこともあるでしょう。いつも,みなさんにはお世話になっています。毎回,LinuxCon+OpenCloudでは,ボランティアを募集しています。

そして,Linux Foundation主催のほとんどのイベントは,スピーカーも公募で受けて付けています。採用されれば,誰でも登壇可能です。

つまり,さまざまな人に開かれた日本では貴重なイベントです。ぜひ,参加者として,また,ボランティアとして,そして,スピーカーとして,LinuxCon+OpenCloudに参加してみるのはいかがでしょうか?

著者プロフィール

赤井誠(あかいまこと)

日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)に入社後,ソフトウェアR&D,事業企画,マーケティング部門を歴任。2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり,日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。また,x86サーバーを活用したハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)を立ち上げ,HPC No.1ベンダーに導く。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し,現職。
キャリアデベロップメントカウンセラー

著作・翻訳:
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降,ライター活動も実施中。『リーダーにカリスマ性はいらない』,『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリー・ジャパン)など多数。

コメント

コメントの記入