レポート

今年もサンフランシスコに“夢のチカラ”が集結!「Dreamforce 2015」を彩ったVIPな面々

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

サティア・ナデラ─CEOの仕事は"カルチャーのキュレーション"

DreamforceでMicrosoftのCEOが単独でキーノートを行うとは,おそらく2年前なら誰も想像しなかったのではないでしょうか。CEOに就任以来,Microsoftをあらゆる面から改革しているサティア・ナデラ(Satya Nadella⁠⁠。Dreamforce 2015ではSalesforceとMicrosoftのパートナーシップ強化策としていくつかの発表が行われています。たとえば今回発表されたIoT Cloudではストリームデータの処理にMicrosoft Azureを使うことが予定されており,さらにOffice 365のイベントデータもキャプチャできるようになります。また,LightningとOffice 365の統合も進み,Skype for BusinessやOneNoteといったコンポーネントをLightning上でフレキシブルに扱うことが可能になりました。

CRMの世界では圧倒的な強さを誇るSalesforceですが,MicrosoftもまたDyanmicsというCRM製品をもっており,Salesforceのシェアを奪うことに血道を上げてきました。しかし16日の午後に行われたキーノートに登壇したナデラは「IT業界の中でゼロサムゲームを演じるのはばかげたこと。我々はもうそういうことはしない。我々の業界が成功できるなら,それは顧客に価値を提供できたときだけ」と断言しています。こうしたナデラの姿勢を,先に登場したパーカー・ハリスは「Microsoftがいま取っているモバイルファーストやクラウドファーストといった戦略は我々のそれと非常に近く,同じ方向を見ている。だから我々は手を組むことにした」と高く評価しており,間違いなくナデラCEOだからこそ可能だった両者のパートナーシップ強化だと言えるでしょう。⁠企業の生産性はテクノロジではなく,コーポレートカルチャーにひもづく。そしてCEOである私の仕事はカルチャーのキュレーションだ」というナデラの言葉は,Microsoftという巨大企業を変革している当事者だからこそ,重く強く響きます。

ここでお目にかかれるとは…Microsoft CEO,サティア・ナデラ氏

ここでお目にかかれるとは…Microsoft CEO,サティア・ナデラ氏

エド・リー─サンフランシスコの子供たちに100万冊の本を

マーク・ベニオフは夫妻揃って米国きっての慈善家としても知られており,Salesforceでは収入の1パーセントを社会貢献活動に使う「1-1-1モデル」をミッションとしており,社内外に広くそのプログラムを提供しています。Dreamforceも毎年,期間中にテーマを設定した社会貢献活動を行っており,今回は「100万冊の本を子供たちに届ける」という"1 million books"を掲げ,これを実現しています。

ベニオフとともに1 million booksの会場に登場したエド・リー(Edwin Lee⁠⁠ サンフランシシコ市長は「Salesforceのような企業が公教育という子供たちの未来を作るプロセスに協力してくれる,そのことに心から感謝したい。子供の教育にとって本はなくてはならないものであり,知識や教養のベースとなる存在。こうしたプログラムに関われて本当に光栄だ」とコメントしています。ただお金を落とすだけでなく,世界中の参加者を巻き込み,1冊の本が未来を作るきっかけになるという自覚をもたせる,そのために企業と自治体が手を組む─日本ではなかなか見ることができないかたちの自治体と企業のパートナーシップかもしれません。

本棚をバックに語るエド・リー サンフランシシコ市長(中央)

本棚をバックに語るエド・リー サンフランシシコ市長(中央)

ジェシカ・アルバ─女優/母親/起業家の顔をもつ新世代の女性リーダー

シリコンバレーには女性のキャリア進出を全面的に支援している企業が多く,女性エグゼクティブも少なくありません。Salesforceももちろん同様で,とくにDreamforceでは意図的に女性エグゼクティブの登壇回数を増やしているように思えます。女性を対象にしたプログラムも多く,Dreamforce 2015では映画「ファンタスティック・フォー」等で有名なジェシカ・アルバ(Jessica Alba)がYouTubeのCEOであるスーザン・ウォジスキー(Susan Wojciki)とともに「Women's Innovation Panel」と題されたパネルディスカッションに登壇し,話題を呼びました。

ジェシカ・アルバは女優としてだけでなく,ベビーケアブランド「The Honest Company」を起業したことでも知られています。自身も2人の娘をもつ母親である彼女は,パネルの席で「The Honest Companyは2016年から16週間の産休に対して通常の勤務と同じ給与を支払う(父親の場合は8週間⁠⁠」と発言し,会場から喝采を受けていました。日本と違い,米国では産休というシステムが用意されていない会社がほとんどです。こうした状況に対し,ジェシカは「子供たちの親である人たちをスタッフとして迎えたい。彼らはマルチタスクを強いられるからこそ,その人たちが働きやすい環境を作る」と語っていました。

今回は起業家として登場,女優 ジェシカ・アルバさん

今回は起業家として登場,女優 ジェシカ・アルバさん

なお,The Honest Companyはアプリケーション開発のプロジェクト管理ツールに「Atlasian JIRA」を採用しています。ジェシカは「私はコードを書けないけどJIRAのチケットを扱うことはできる」とコメントし,すぐれたツールが生産性を向上させると強調しています。⁠ビジネスに必要なのはコラボレーションしたいという意思であり,そういう意思と常識を備えた人々。それは私にとって学歴より重要な判断材料」というジェシカ。そしてコラボレーション向上にJIRAが一役買っているようです。

YOSHIKI─ベニオフの友人はDreamforceの常連

Dreamforceの常連ゲストとして知られる元X JAPANのYOSHIKI氏は"Japanese Rock Superstar"今年も登場。マーク・ベニオフの友人でもあるYOSHIKIは今回,サティア・ナデラの登壇前に「白鳥の湖」と米国国歌のピアノ演奏を披露し,スタンディングオベーションを浴びていました。海外の記者の中にも彼の名前を知っている人は多く,キーノートのどこかで白いピアノを見かけるのはもはやDreamforceの風物詩となりつつあるようです。

Dreamforceではもはや「お約束」元X JAPANのYOSHIKI氏の演奏

Dreamforceではもはや「お約束」元X JAPANのYOSHIKI氏の演奏


年々スケールが大きくなっていくDreamforceですが,これだけの大物が揃うのもITが社会全体の根幹を支える重要なインフラだという共通認識があるからこそ。クラウドファースト/モバイルファーストを迷うことなく前面に押し出してきたSalesforeceの方針が世の中に受け入れられていることのあらわれでもあります。2016年のDreamforceにはどんな面々がサンフランシスコにやってくるのか,いまから期待したいところです。

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。