IoTインフラの進化が世の中を変える「SORACOM Conference “Connected.”」基調講演レポート

クラウド直結のIoT通信のプラットフォーム事業で注目される⁠株⁠ソラコムによる初の大規模なユーザイベント「SORACOM Conference ⁠Connected.⁠~IoT つながる その先へ~」が1月27日(水⁠⁠、東京。大崎ブライトコアホールにて開催されました。午前中に行われた基調講演では、会場を埋め尽くした800名を超える参加者を前に、同社代表取締役社長の玉川憲氏による新サービスの発表やサプライズゲストの登場など、盛りだくさんの趣向が凝らされたものでした。

基調講演に立つソラコム社長 玉川憲氏。同社を「NTTドコモとAWSの両巨人の肩の上に乗ったIoTバーチャルキャリア」と紹介。
基調講演に立つソラコム社長 玉川憲氏。同社を「NTTドコモとAWSの両巨人の肩の上に乗ったIoTバーチャルキャリア」と紹介。

「AB」に続く「CDEF」─4つの新サービスを発表

玉川氏はまずソラコムの創業コンセプトから、創業から4ヵ月間の活動、そしてユニークなユーザ事例を次々と紹介していきます。初期投資のいらない1日10円の従量課金でスモールスタートからスケールもでき、プログラマブルなAPIを備えた基盤は、4ヵ月の間に1,500を超える顧客を獲得し、デバイス、インテグレーション等のパートナーも117社もの申請を受けています。

ここでソリューションパートナーとして、セールスフォース・ドットコム 取締役社長兼COOの川原 均氏が登壇。
ここでソリューションパートナーとして、セールスフォース・ドットコム 取締役社長兼COOの川原 均氏が登壇。
マンションのショールームに設置したセンサーデバイスとSORACOMのSIMを入れたタブレットからの情報をクラウド上で処理し、訪れた顧客の興味に合わせた情報を表示するサービスを紹介。
マンションのショールームに設置したセンサーデバイスとSORACOMのSIMを入れたタブレットからの情報をクラウド上で処理し、訪れた顧客の興味に合わせた情報を表示するサービスを紹介。

そして玉川氏から、現行サービスへの新たな機能追加が発表されました。1つは、コントロールパネルやAPIへのアクセス管理機能―SORACOM Accesee Management(SAM)です。メンバーごとにアクセスできる権限や利用可能期間を細かく設定可能で、大規模なIoTシステムに携わる役割別にきめ細かい管理が可能になりました。もう1点は、IMEI(International Mobile Equipment Identity)の取得です。デバイス固有の識別番号を読み取ることにより、SIMと携帯モジュールをペアで管理、SIMの盗難時等に照合して処置が可能です。いずれも無料で利用できます。

ユーザ環境と直結「SORACOM Canal」「SORACOM Direct」

続いて新サービスの発表です。最初の2つはSORACOMのネットワークとユーザのネットワークをインターネットを介さず直接つなぐことによって強固なセキュリティを確保できるサービスです。

閉じたIoTシステムを求める声に応えた
閉じたIoTシステムを求める声に応えた

1つは「SORACOM Canal⁠⁠。Canalとは運河のことです。これはAWS内にユーザのクラウド環境がある場合にAmazon VPC(Virtual Private Cloud)の仮想ネットワーク機能を使ってSORACOMサービスと接続します。もう1つの接続サービス「SORACOM Direct」はAWSの外にあるユーザのサーバやデータセンターにAmazon Direct Connectの機能を使って専用線接続を行うサービスです。どちらもAWSのサービスをうまく取り入れたサービスですね。

なお、現行のSORACOM Beamでもユーザのシステムとのセキュリティを確保した通信をうたっていますが、こちらはHTTPやTCP、UDPといったプロトコル別の変換機能により実現されるため、利用アプリケーションやサービスが限定されます。CanalとDirectはこれにくらべてシンプルに全通信を外部と切り離すことが可能です。

ここでシークレットゲストとしてさくらインターネット フェローの小笠原 治氏が登壇
ここでシークレットゲストとしてさくらインターネット フェローの小笠原 治氏が登壇
「さくらのIoTプラットフォーム」構想のキモとなるIoTデバイスと同社クラウドのセキュアな接続にSORACOM Directを採用することを初めて表明しました。
「さくらのIoTプラットフォーム」構想のキモとなるIoTデバイスと同社クラウドのセキュアな接続にSORACOM Directを採用することを初めて表明しました。 「さくらのIoTプラットフォーム」構想のキモとなるIoTデバイスと同社クラウドのセキュアな接続にSORACOM Directを採用することを初めて表明しました。

SIM認証サービス「SORACOM Endose」

次に紹介された新機能は、SIMの認証機能をさまざまな通信の認証に利用できる「SORACOM Endorse」です。よく携帯キャリアのWiFiサービスへの自動接続で使われる、SIM認証によるWiFiオフローディングをイメージするとわかりやすいかもしれません。このように他のネットワークの認証の簡易化に利用することもできますし、IDパスワードを必要とせず特定のSIMを使った場合のみログインできるシステムを作ったり、他の認証方法と組み合わせて認証を補強するといった用途も考えられるとのこと。

SORACOM Endoseのしくみ
SORACOM Endoseのしくみ

クラウドリソースアダプタ「SORACOM Funnel」

「One More Thing」として発表されたのが、面倒な処理やコードを記述することなくクラウドベンダの特定のサービスに直接データを送り込むためのサービス「SORACOM Funnel」です。

SORACOM Funnelの紹介は、ソラコムCTOの安川健太氏によって行われました。
SORACOM Funnelの紹介は、ソラコムCTOの安川健太氏によって行われました。
サービスへの認証情報とリソースを指定するだけでクラウドサービスにデータを送ります。
サービスへの認証情報とリソースを指定するだけでクラウドサービスにデータを送ります。
現在のところAmazon Kinesis、Amazon Kinesis Fierhose、そしてMicrosoft Azure Event Hubsの3つのサービスに対応しています。
現在Amazon Kinesis、Amazon Kinesis Fierhose、そしてMicrosoft Azure Event Hubsの3つのサービスに対応しています。

これで、既存のSORACOM Air、SORACOM Beamに加えて、A~Fまで6つのサービスがラインナップされました。

サービス無料枠も提供
サービス無料枠も提供

前半の締め括りに、玉川氏は前職のAWSで2006年ごろからクラウドの隆盛に関わった際に、小さな投資から始められることから、それまで見られなかったスタートアップ企業が続々と生まれてくるさまを目の当たりにした経験を語りました。⁠まさに世の中が変わった。IoTでも同じことが起こせるのではないか」と思ったのがSORACOM起業の原点だそうです。

今は非常識なことが将来は常識に ―IoTテレマティクスの未来

基調講演後半は「IoTとテレマティクスの未来 〜つながるクルマ 今とその先〜」と題したパネルディスカッション形式で進められました。スピーカーは、トヨタ自動車(株⁠⁠ e-TOYOTA部部長 藤原 靖久氏、JapanTaxi(株⁠⁠ 代表取締役社長 日本交通(株⁠⁠ 代表取締役会長 川鍋 一朗氏、⁠株)ガリバーインターナショナル 執行役員 CIO 許 哲氏の3名です。モデレータとして、アナウンサーの膳場 貴子さん、そして引き続きソラコム 玉川氏もトークに加わります。

スピーカーのお三方、左からトヨタ 藤原氏、JapanTaxi 川鍋氏、ガリバーインターナショナル 許氏
スピーカーのお三方、左からトヨタ 藤原氏、JapanTaxi 川鍋氏、ガリバーインターナショナル 許氏
モデレータ側のお2人、ソラコム 玉川氏(左)と善場さん
>モデレータ側のお2人、ソラコム 玉川氏(左)と善場さん

話題は、日本の、そして世界の車がこれからは通信できてつながっていかなければ、まず安全面、そして利便性においても将来は無いのではないか、という視点で進みました。その「1台1通信モジュール」を実現するには導入コスト、そして通信のコストをどのように抑えるかが重要であり、ソラコムの技術とその進化のスピードから見える将来性は、そのために大きな役割を果たすことができるという点で全員の意見が一致しました。

かつてはインターネットとは無縁と考えられていた自動車も、その制御やセンシング等の電子化が進み、今度はそのデータを生かすために「外とつながる」需要が急速に膨らんでいます。昔は非常識と言われていたことが、どんどん常識になっていくのを見てきた皆さんには、つながることでまったく新しい価値を生む車の未来が見えているようです。

基調講演登壇者全員が最後に勢ぞろい
>基調講演登壇者全員が最後に勢ぞろい

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