レポート

2016年はVR元年となるか~日本企業の参入とアメリカの動向から考察するVR

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

VRに加えた新たな体験

このように,今までにない新たな体験を求めているユーザに対して,Enhance GamesはVRに加えた体験をもたらそうとPlayStation VR向けの新作,Rez Infiniteで取り組んでいます。水口哲也氏がプロデュースした代表作である『Rez』をVR化しただけではなく,昨年12月のPlayStationの発表会では,26個の振動素子と,振動素子の反応にあわせてLEDが光る特別な体感スーツを着ながらの操作によるゲームデモンストレーションが水口氏により行われました。

2015年12月のPlayStation ExperienceでのRez Infiniteのデモンストレーション

『Rez』はプレーヤの操作により,シューティングの結果によってBGMや効果音が音楽化されていくゲームで,その音に合わせて体のさまざまな部分が振動し,その部分が光ることでプレイヤーだけでなく観ている人も楽しめるようになっています。体験をした多くの人が初めての体験で,言葉が出ないようです。この『Rez Infinite』は2月26日から3月21日まで,Media Ambition Tokyoと題したテクノロジーアートのショーケースとして六本木ヒルズの52階で体験展示されました。体験したいという声は,とくに女性からのほうが多かったのだそうです。

女性の体験中の写真

女性の体験中の写真

筆者も,展示終了間際の先週末に六本木ヒルズの展示会場にて,このスーツを装着してのゲームプレイを体験してきました。PlayStation VRによる没入感は,違和感がない自然なもので,ゲームの操作によって与えられる体への振動により,体全体がVR空間に一体化しているような感覚を時折感じました。また,操作しているプレーヤだけではなく,周りで観ているギャラリーも楽しそうにゲームプレイを眺めていたのがとても印象に残りました。

六本木ヒルズでの展示での『Rez Infinite』がプレイされる様子

敷居が下がったゲーム制作

こうした新たな体験を生み出せることができるようになったゲームコンテンツですが,開発の敷居は近年になってきて大きく下がってきたようです。まずゲームの流通がパッケージだけではなく,デジタル配信も成長してきたため,デジタル配信の場合は劇的にパブリッシングコストが下がり,流通させるための人数を抱える必要がなくなりました。

また開発だけのことを考えてみても,以前は100くらいかかっていたのが,現在は70くらいまで下がってきたと言います。技術革新により,Unityなどの開発エンジンが充実してきたこと。またEnhance Gamesでは,人的なネットワークができたことから,優秀なクリエイターを厳選してアライアンスを組むことにより,常時,社員として抱える必要がなくなったことが大きく作用しているようです。

マーケティングに関しても,E3といったゲームの展示会で,メディアによる取材フローが整理され,非常に楽になってきていると言います。

「昔苦労していたことがどんどんと消えていっている。莫大な開発費がVRだから掛かるわけではない」⁠水口氏⁠⁠。

VRならではの新たな体験を日本から生み出せるか?

このようにゲーム制作への敷居がさがってきた一方でVR市場に対しては,今までになかった工夫が必要となるようです。

「ゲームをVR化したらよいのではなくて,VRで新しい体験を生みださないといけない。今までの目線と同じで入ると苦労するので,そこはジャンプする必要がある」⁠水口氏⁠⁠。

そして,こうした人材が日本ではそれほどおらず,アメリカには多くの予備軍がいると言います。アメリカでは,ハッリウッドなどの映像系の世界からも多くの人がVRの世界に流れ込み,ゲームのコンソール市場が成長し続けたため3Dゲームのクリエイターが多く存在する一方で,日本ではスマホの市場が大きくなりすぎ,コンソールからスマホ市場に人材が寄りすぎてしまったことが大きく影響しているようです。

「日本にはコンソールを体験したクリエイターが多かったのが武器だった。その人たちもまだいるので,うまくマージしていくことができるのでは。このままだと勿体ない。」と水口氏は語り,こういった状況はとくに若い人にとっては大きなチャンスであるといいます。

「僕がセガに入ったときには誰も先生がいなかった。そんなときにいきなり3Dポリゴンの開発ボードが渡された。レシピもないし,初めてやることだらけで若いメンバーは考えながら名作を産んできた。その人たちがまだゲーム業界に残っている。ここから新しいチャンスがあるし,すごい人が出てくるのでは?」と,VR市場から次の作り手が生まれてくることへの期待を語ってB Dash Ventures Campでのセッションを終えました。

日本発の次の作り手が生まれてくることに期待を寄せる水口氏

日本発の次の作り手が生まれてくることに期待を寄せる水口氏

著者プロフィール

美谷広海(みたにひろうみ)

1975年フランス生まれ。引越し歴14回。ゲーム,モバイル,Webとデジタルコンテンツの企画,プロデュースを行い,Webサービスの海外進出、海外から日本への事業展開に従事中。ブログは『Fool on the Web』。海外に日本のIT情報を紹介するasiajin.comにも参加しています。

メールは hiroumitani@gmail.com