Java“次の20年”への萌芽 「Java Day Tokyo 2016」開催

2016年5月24日、東京、品川にある東京マリオットホテルにて、日本オラクル主催によるJavaの年次カンファレンス「Java Day Tokyo 2016」が開催されました。昨年はJava 20周年にあたる記念開催で盛り上がりましたが、今年は「次の20年」でJavaをどのように変えていくかをテーマに、国内外から多数のスピーカーが揃い、それを支える多くの開発者が参加しました。

ここでは午前中に行われたキーノートを中心にレポートします。

Javaコミュニティは現在も発展中

キーノートの最初に登壇したのは、昨年までと同様、日本オラクル⁠株⁠取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏。今年はラフなジーンズ姿で登場した杉原氏は、Javaがどれほど世の中に浸透してきたかをさまざまな数字を挙げて紹介しました。

日本オラクル CEO 杉原博茂氏
日本オラクル CEO 杉原博茂氏

これまで人類が経験してきたテクノロジーイノベーションと同様に、現在社会が抱える多くの問題はクラウド、IoTといった新たなプラットフォームが解決していく、そこでキーとなる技術がJavaであると述べ、そこからJavaの現状をさまざまな角度から取り上げるスピーカーがリレー形式で次々と壇上に現れました。

プログラミング言語のネットでの話題性をランキングする「TIOBE Index」で、2015年からJavaが1位になっていることがキーノート中2度も取り上げられていました
プログラミング言語のネットでの話題性をランキングする「TIOBE Index」で、2015年からJavaが1位になっていることがキーノート中2度も取り上げられていました

Oracle、Java Platoform Product Management & Developer Relationsのディレクター、Sharat Chander氏は、Javaの開発事情について紹介。JavaのオープンソースプロジェクトであるOpenJDKは、2010年からの5年間でアクティブなコミッターが136%増えたそうです。

Java開発のエコシステムの発展を数字を挙げて紹介するSharat Chander氏
Java開発のエコシステムの発展を数字を挙げて紹介するSharat Chander氏

Javaの進化はやはりクラウドとともに

Java Platform Developmentのシニアディレクター、Bernard Traversat氏が登壇し、ラムダ(Lambda)式やStreamといった注目機機能満載のJava 8を「Modernizing Java」として紹介しました。Javaが登場したとき、非常に洗練されたプログラミングスタイルに新しさを感じた開発者も多かったと言いますが、Java 8はそれに匹敵するインパクトをもたらしたと言います。

Traversat氏はさらに「その先のJava」についても言及しました。Java SEはクラウド環でのさらなる活用を見据えて、ランタイムのセキュリティ強化、メモリ管理の効率化、マイクロサービスや起動の軽量化、そしてガベージコレクタ(GC)のより高度な予測動作等の機能強化に向かっていくとのこと。

開発中のJava 9のその先、Project Valhalla、Project Panamaについても言及するBernard Traversat氏
開発中のJava 9のその先、Project Valhalla、Project Panamaについても言及するBernard Traversat氏

続いて、Oracle Developer Tools groupのPrincipal Product Manager、Geertjan Wielenga氏によるJava開発プラットフォームNetBeansのデモが行われました。NetBeansもいよいよJavaSvript、HTML、CSS開発に対応し、より使いやすい開発環境に進化しています。

Geertjan Wielenga氏はオランダ人、いつもはアムステルダムで活動しているそうです
Geertjan Wielenga氏はオランダ人、いつもはアムステルダムで活動しているそうです
クラウドアプリケーションの基本プロダクト部門のディレクター、David Delabassee氏によるJava EEの進化の紹介。Microserviceと分散コンピューティングの対応がここ数年のキモです
クラウドアプリケーションの基本プロダクト部門のディレクター、David Delabassee氏によるJava EEの進化の紹介。Microserviceと分散コンピューティングの対応がここ数年のキモです
将来のエンタープライズアプリはJava EEのAPIとJava SEランタイムを合わせてコンパイルすることで、1本jarファイルを作り、それをさまざまなクラウドプラットフォーム上で改変なく動作できるというイメージ
将来のエンタープライズアプリはJava EEのAPIとJava SEランタイムを合わせてコンパイルすることで、1本jarファイルを作り、それをさまざまなクラウドプラットフォーム上で改変なく動作できるというイメージ

「日本のJavaエンジニア」の活躍

キーノート後半はバラエティに富んだ事例紹介となりました。

最初は損保ジャパン日本興亜⁠株⁠の浦川伸一氏による同社のJavaによる基幹システム再構築プロジェクトの紹介です。売上高3兆5千億円、従業員7万6千人が利用するメインフレーム+COBOLによるシステムを、Java EEベースのシステムに完全移行中とのこと。

損保ジャパン日本興亜のシステムを紹介する浦川伸一氏
損保ジャパン日本興亜のシステムを紹介する浦川伸一氏

続いて、Oracle、JavaエバンジェリストのStephen Chin氏とSebastian Daschner氏が、この4月から1ヵ月間、愛車のDucatiに乗って日本全国のJavaコミュニティを訪れた模様を動画とスライドで紹介します。

Stephen Chin氏(左)とSebastian Daschner氏
Stephen Chin氏(左)とSebastian Daschner氏

Stephen Chin氏から紹介を受け、日本Javaユーザーグループ(JJUG)会長の鈴木雄介氏が日本のJavaユーザコミュニティの活動について語ります。JJUGの会員数は現在4,920人、月1回のナイトセミナーと年2回のカンファレンス、地域JUGでの勉強会など活発な活動が続いています。

「JJUGの年2回のコミュニティイベントはこのJavaDayよりも大規模です」と語る鈴木雄介氏
「JJUGの年2回のコミュニティイベントはこのJavaDayよりも大規模です」と語る鈴木雄介氏

「なぜコミュニティなのか?」という問いに、鈴木氏は3つのポイントを挙げています。

現場のノウハウがわかる
現場のエンジニアが参加しているので、実際に困っていることがダイレクトで聞けます。
すごいエンジニアに会える
優れたエンジニアが多数参加。会ってすごさが体感できます。
学んだことを発信できる
学んだことをコミュニティでさまざまな形で還元でき、それがさらに学びになる。

⁠株⁠アットマークテクノ 代表取締役の實吉智裕氏は、Oracle IoT Cloud Serviceを利用したセキュアIoTゲートウェイによる、ドローンを使ったデモを行い、注目を集めました。

デモの概要を紹介する實吉智裕氏
デモの概要を紹介する實吉智裕氏

セキュアIoTゲートウェイのユニットには「SAM」という携帯電話のSIMに似た通信カードが入っており、その認証機能で機器を区別し、認証された操縦者のみがコントロールできるようになっています。

デモの模様
デモの模様

最後は、JavaDayではおなじみ、日本オラクルFusion Middleware事業統括本部シニアマネージャー 伊藤敬氏による、PepperとOracle Cloud Platformを使った通信デモです。

Pepperと手元のiPadの両方で撮った画像を、クラウドに保存して相互に表示できるというデモ
Pepperと手元のiPadの両方で撮った画像を、クラウドに保存して相互に表示できるというデモ
少しアクシデントもありましたが、なんとか無事画像が出ました。
少しアクシデントもありましたが、なんとか無事画像が出ました。

Java誕生21年を経て、コミュニティ活動、開発ベースとも上向きなJava、今後の発展はJava自体の進化をいかに時代の流れに合わせていくか、今回のJavaDayでも紹介された新機能やプラットフォーム対応の進み具合が気になります。

展示会場に設けられたグッズストアも相変わらず盛況です
展示会場に設けられたグッズストアも相変わらず盛況です

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