レポート

「NEXT」に向かって~メルカリを支える技術を大公開――Mercari Tech Conf 2017開催

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国産ITベンチャーでは珍しいヨーロッパリージョンの展開~メルカリUKの今とこれから

基調講演のほか,もう1つ,印象的なセッションがあったのでレポートします。クロージングセッションとなった,VP of Engineering, Mercari Europeを務める田中慎司氏による「イギリスでの開発チームの作り方」です。

クロージングセッションを務めたVP of Engineering, Mercari Europeの田中慎司氏

クロージングセッションを務めたVP of Engineering, Mercari Europeの田中慎司氏

ヨーロッパリージョンの開設は2016年9月の開発はじまり,2017年3月にメルカリUKがリリースされています。このヨーロッパリージョンにおける開発およびチーム構築を担当したのが田中氏です。

開発スタート時は3名の日本から出向しているエンジニアチームで,その3名からメンバー増員とプロダクトリリースを並行して行ってきたとのこと。

UKという外国なので)英語力が必要とも考えましたが,最初のチームメンバーは英語力よりも技術力を優先に選びました」とのこと。このあたりは,まずしっかりとしたプロダクトを作ることが大事であるという考えの表れでもあります。

3つのリージョンでいつも頭を悩まされるのが時差とのこと。3リージョン同時の会議を検討するとUKの時間帯が深夜になる

3つのリージョンでいつも頭を悩まされるのが時差とのこと。3リージョン同時の会議を検討するとUKの時間帯が深夜になる

その後のメンバー採用のフローについては,日本と大きく変わらないようで,当初はエージェントを利用して採用活動を進めていったとのこと。ただ,このときいくつかの問題点もあったと,田中氏は採用開始時を振り返りました。

⁠まず,UKではメルカリ自体の知名度がそれほどなく,また,そもそもロンドンには日本のインターネット企業があまり存在していなかったことで,認知されるのが大変でした。一方で,ロンドンには日本のナショナルクライアント(大企業)は進出しており,先入観からハードワーク(≒残業が多い)といった印象を持たれるなど,日本企業のネガティブイメージが採用活動に影響した場合もありました」と,当時の苦労を説明しました。

それでも,⁠各分野(API,iOS/Android,QA)の最初の1人目のエンジニアが,その後の各分野のアウトプット,ひいてはメルカリUKのアプリ全体に関わる,非常に重要な役目を果たすため,1人目のエンジニア選定にはとくに力を入れ,厳選して採用を進めました」⁠田中氏)と,ただその瞬間で良い人材を確保するのではなく,その後の長期的ビジョンも見据えた採用活動をしていったことにも触れました。

そして,メルカリUKリリース時には20名ほどのエンジニアチームになったとのこと。採用自体も当初はエージェント経由だったのが,Webを通じた募集や社員紹介などの直接採用と,少しずつ採用環境が整ってきているそうです。

印象的だったのは,⁠日本の採用に比べて,応募者が自身のTitle(肩書)を非常に重要視している」という話です。とくにロンドンのIT企業では,1つの会社に在籍する平均年数は2~3年ほどだそうで,一人ひとりが意識的にキャリアパスを考え,そのために肩書を意識しているとのこと。そのため,肩書にあった業務内容であることが大事で,リードという立場で採用した場合は,本当にリードとしての業務でなければ,採用すらできない可能性があるのです。

現在はロンドン,UK内での採用を進めているとのことですが,将来的にはヨーロッパ全域から採用を進め,ヨーロッパ内でのメルカリの認知度を高めていきたい,と田中氏はこの先のビジョンを語りました。

そして,これから先のゴールは,⁠リリースではなく,リリース後の保守・改善,そして,ロンドン開発チームの成長とし,そのためには,日本やUSリージョンと同じように,ヨーロッパリージョンを成長させていきたい。そのために,もっともっとマーケットフィットしたプロダクトを目指します」とコメントしました。

先進的な技術はすべてマーケットフィットのため

今回,基調講演とクロージングセッションを紹介しました。ここでは紹介しきれなかった,インフラやデバイスごとのクライアントアプリの話,メルカリを実現するための要素技術など,非常に多岐にわたる,そして,内容の濃い発表が多数行われました。

また,展示スペースではスピーカーとの対話スペースや,メルカリ初のIoTプロダクトとなるメルチャリ,ほかにも実際の自動化テストの様子など,まさにメルカリ技術大解剖となる1日となりました。

大盛況の展示ブース。基調講演で紹介されたテストの自動化のデモも実践されていた(右)

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このカンファレンスを通じ,筆者が強く感じたのは,同社の行動規範の先にある「ユーザのためのマーケットフィット」です。メルカリのようなC2Cビジネスの場合,利用するユーザのリテラシーはもちろん,国ごとの商慣習や価値観によって,求められるニーズ,最適なユーザ体験が異なります。

その多様性を満たすにはどうすべきか,C2C,シェアエコノミーという軸をぶらさずに,すべてのユーザニーズを満たすための技術力,その追求を日々行っていることが伺えた内容だったと思います。

また,各セッションで必ず耳にした「マーケットフィット」という言葉は,まさにユーザを意識していることの裏返しであり,研究開発のための技術ではなく,ユーザに使われるための技術をつねに考え,プロダクトやサービスに適用しているように感じます。

最後に,基調講演を務めた3名からイベントの感想についてコメントをいただきました。そちらを掲載して,今回のレポートを締め括ります。

鶴岡氏:

たくさんの方から参考になった,満足したと聞けて良かったです! 来年はメルチャリのような IoT プロジェクトの成果や,ソウゾウでの新プロダクトの話もご期待ください!

柄沢氏:

ご来場いただいたたくさんの皆さまから「良かった」とフィードバックをいただき,励みになるとともに,安心しております! 皆さまのおかげさまで大盛況となりました。来年以降にむけて,さらにおもしろい,刺激的なコンテンツを用意できるようにしていこうと思いますので,またぜひ足をお運びください。

名村氏:

メルカリが考えている技術の姿を一部ですが話すことができて良かったです。少しでも皆さんの考えの刺激になり,より良い技術に向けた議論の種になれば幸いです。来年はもっと成長したメルカリの考え方,成果を発表できればと思います。

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著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

Twitte ID:tomihisa(http://twitter.com/tomihisa/

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