横浜で始まった自動運転の社会と未来~Easy Ride試乗モニタレポート

2017年1月、株式会社ディー・エヌ・エーと日産自動車株式会社は自動運転車両を活用した新たな交通サービスプラットフォームの開発を開始しました。そして、同12月にサービス名を「Easy Ride」とし、2018年3月5日より、神奈川県横浜市のみなとみらい地区にて実証実験を開始しました。

今回、実証実験に参加し、試乗する機会を得たのでその模様をお届けします。

始まりはスマートフォンから

スマホで目的地設定・配車予約

まず、スマートフォンにてEasy Rideのアプリを起動します。

起動画面
起動画面

すると「何しに行く?」とアプリから質問が表示されます。ユーザはここで目的を答えながら、Easy Rideで移動する目的地を決定することになります。今回は、赤レンガ倉庫まで行くことを目的に、横浜のソウルフード「崎陽軒」の赤レンガ倉庫店をゴールに設定しました。

配車予約完了画面
配車予約完了画面

予約日に乗車場所まで

今回の実証実験は、共同開発企業の1社、日産の本社があるみなとみらい・日産グローバル本社前が乗車場所に設定されています。

日産本社の写真
日産本社の写真

筆者は予定の13:30より少し早めの13:15ごろに到着したところ、スタッフから「スタートが13:30なのでもう少々お待ちください」とのこと。時間ぴったりで稼働するあたりはITならではの特徴と感じました。

乗車にあたっての注意事項
乗車にあたっての注意事項

13:30になり、Easy Rideの試作車が到着。外観は普通の車です。車種は日産が開発している「日産リーフ」をベースにしたもの。

Easy Rideの試作車
Easy Rideの試作車

到着するとスマートフォンにアラートが飛び、画面のように到着案内が届きます。

到着案内画面
到着案内画面

そして、乗車時にスマートフォン経由にて鍵を解錠し、乗車ができます。

鍵の解錠
鍵の解錠

タクシー乗客気分で自動運転を体感

さっそく乗車しました。今回は試乗モニタのため、運転席および助手席にはEasy Ride担当スタッフが同乗しています(現行法令では、運転者はいつでもハンドルを握れる状態になっている必要があるため、写真のように座っています⁠⁠。

スタッフはハンドルを握れる状態で同乗
スタッフはハンドルを握れる状態で同乗

後部座席に座ると目の前にタブレットが用意されており、⁠ようこそ」のメッセージとともに、乗車~降車地、時間や気温などの情報が表示されています。

乗車時、席前のタブレットに情報が表示される
乗車時、席前のタブレットに情報が表示される

あとはこのままスタートです。

“普通”であることの凄さと不思議

今回のレポートを執筆するにあたり、実際のところ、乗っている身としては大きく変わったことはないです。誤解を恐れずに言えば、いわゆるタクシーなどで運転してもらっている感覚とまったく同じといっても過言ではありません。

ですから、まずはこちらの動画をご覧ください。

この映像は、Easy Rideに乗っている風景です。ポイントは運転者がまったくハンドルを握っていない点、そして、映像には映っていませんが、アクセルやブレーキを踏んでいない点です。

映像でもわかるように、目的に向かって自動運転をしているわけですが、たとえば車線変更(それに伴うウインカーの表示⁠⁠、赤信号の停車、歩行者の認識、走行速度の設定(40km/h)など、これらがすべて自動で行われているのです。

あまりにも⁠普通⁠の運転ではありますが、実証実験の段階でここまで実現できるようになったのです。これらの技術や開発の舞台裏については、改めてgihyo.jpにて取材後、報告する予定です。

自動運転だけが目的ではない、サービス環境としての交通基盤

このように、11分間の乗車期間の間、本当に普通に自動車が自動で運転し、目的地まで到着しました。Easy Rideの魅力はただ自動運転するだけではなく、スマートフォンおよびインターネットを活用した情報提供、サービス環境としての交通基盤にもあります。

まずはこの画面をご覧ください。

情報案内。移動中の近隣施設などに関する情報やイベントが案内される
情報案内。移動中の近隣施設などに関する情報やイベントが案内される

これは移動中の近隣で行われているイベント情報の紹介です。この画面では、みなとみらい地区で楽しめる日本丸への乗船およびそれに伴う関連情報が表示され、乗車中に知ることができます。

続いてこちらをご覧ください。

移動中の近隣施設や店舗で使用できるクーポンの配布
移動中の近隣施設や店舗で使用できるクーポンの配布

このように、Easy Rideで提携している店舗に関して、提供されているクーポン情報も表示されます。これをダウンロードすることで、自身のスマートフォンにクーポンが送られる仕組みとなっています。

スマートフォンに送られたクーポン
スマートフォンに送られたクーポン

いわゆるO2Oマーケティングではありますが、このように交通基盤をサービスインフラと活用することで、今後、さまざまな土地や地域の特徴に合わせたマーケティング・サービス環境としての可能性を感じることができました。

目的地到着、その後の案内もすべてスマートフォンで

11分間の乗車を追え、目的地に近づくとまた画面に案内が表示されます。

目的地付近まで
目的地付近まで

そして、目的地であるワールドポーターズの降車地にて今回の試乗体験は終了しました。その後、最終目的地である「崎陽軒 赤レンガ倉庫店」までのルートについては、スマートフォンのマップでガイドしてくれます。

降車後、最終目的地までのガイド
降車後、最終目的地までのガイド

徒歩で移動後、目的地到着で全行程が修了しました。

目的地到着の案内
目的地到着の案内
崎陽軒 赤レンガ倉庫店
崎陽軒 赤レンガ倉庫店

試乗体験を終えて

以上、Easy Ride試乗モニタの体験レポートをお届けしました。前述のように、利用者の立場としては、誰かが運転してくれる車に乗って、さらにスマートフォンで最終目的地まで丁寧に案内してくれるという、⁠普通の⁠サービス体験だったと感じています。

ただ、この普通が今までと違うのは、⁠誰かが⁠という部分が自動である点。さらに10年前と比較して違うのは、スマートフォンで細かく案内をしてもらえる点。こうした体験を実現しているのが、いわゆるIoTと呼ばれる環境であり、インターネットやスマートフォン、それを支えるさまざまなセンサなどの技術です。

一方で、技術部分でもまだまだ課題解決はあるとのことで、たとえば、今回筆者が乗車した日は快晴でまったく問題がなかったのですが、前日は天候が悪く、一部のモニタ試乗回については(天候の影響で)キャンセルになったとのこと。このように、生活で活用するサービスにおいて、自然環境に対して技術が追いつかなければならない部分はまだまだたくさんあるのも事実です。

技術意外にも、法令遵守といった重要な要素、こうした技術を社会で活用するための環境整備など、サービス提供者および利用者間で考え、解決していく事項が多数あるかと思います。

Easy Rideが実現している自動運転についてはこれからの日本はもちろん、世界各地での利用と浸透が期待されています。とくに日本においては少子高齢化に対する解決策の1つとしても期待されていますし、課題解決だけではなく、便利さやその先にある生活の充実にもつながるのではないかと筆者は考えています。

そして、現在顕在化している課題や問題に対して、全員が前向きに取り組み、1つ1つ解決していくことで、技術を活用した健全なIoT社会が生み出されるのではないか、また、そうなっていくことを筆者は願っています。

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