レポート

Qtが拓くUIの未来を先取り ―「Qt World Summit 2018 Boston」レポート

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キーノート

2日目はカンファレンスデーとして,The Qt Companyアメリカ支社の営業部長であるMichael Aubin氏の挨拶によりキーノートが開始されました。キーノートは通常のキーノートとQtのカスタマー企業によるカスタマーキーノートに分かれてカンファレンスのはじめに行われました。通常のキーノートは2つ,カスタマーキーノートは4つのトピックが扱われていました。

ここではまず,2つのキーノート「Recent Developments and Future Outlook of Qt」⁠⁠Beyond The UX Tipping Point」の詳細を記載し,その後でカスタマーキーノートの一部を簡単に紹介します。

Recent Developments and Future Outlook of Qt

Lars Knoll氏によるキーノート

Lars Knoll氏によるキーノート

このキーノートはQtWSでもお馴染みのキーノートで,The Qt Company社のCTOであるLars Knoll氏から,Qtの最新情報や今後の方向性について説明がありました。大きくは,Qt 5.12の内容とQt 6への取り組みに触れていました(Qt 5.13 以降については触れられていませんでした)⁠

まず,Qt 5.12について。Qt 5.12は次期LTSバージョンで,執筆時点ではBeta 4までリリースされています。最終リリースは,2018年12月を予定しているそうです。Qt 5.6.3からは5,000以上のバグ修正を含めた29,000ほどのコミットが,Qt 5.9.7からは2,000以上のバグ修正を含めた12,000ほどのコミットが行われているとのことでした。

主な対応内容としてはまず,QML/QuickでECMAScript 7,Input Handler,TableViewへの対応が行われました。また,QML/Quickではメモリ使用量の削減や性能向上も行われています。QML/Quick以外にも,Qt Remote ObjectsとQt WebGL Streaming Pluginが正式にサポートされたこと,Qt for AutomationでOPC/UAのM2Mプロトコルに対応されたことが強調されていました。

Qt 6への取り組みとしては,重複したAPIの削除,より新しいC++標準の採用,グラフィックスのクロスプラットフォーム化(OpenGL,Metal,Vulkan,DirectX等)⁠2Dと3Dのアーキテクチャの統合,デザインツールの統合,音声による制御等が挙げられていました。特に,2Dと3Dのアーキテクチャの統合においては以下を検討しているようです。

  • Qt QuickとQt 3Dのシーングラフを統合
  • 効率性の向上
  • グラフィックス関連リソースの共有
  • C++とQMLの両方のAPIに対応
  • AR/VRのユースケースに対応

その他に主要な機能としてQt Safe Rendererを挙げていましたが,Qt Safe Rendererについては後述のセッション「Qt and You: Navigating the Medical Device Regulatory Pathways」を参照してください。

Beyond The UX Tipping Point

Jared Spool氏によるキーノート

Jared Spool氏によるキーノート

Center Centre(UX デザインスクール)とUIE(Center Centreにおいて,競争力のあるプロダクトやサービスの研究を専任で行う組織)の創設者である,Jared Spool 氏によるキーノートです。今日の市場がUX転換期(Tipping Point)に来ていると指摘した上で,成熟したUXデザイン組織になるためにはどうすれば良いかを説明していました。

はじめにJared Spool氏は,UXデザイン組織の成長段階に触れた上で,一般的なスタートアップチームは最も成熟した段階にいること,既存の多くの企業は初期の未成熟な段階にいることを指摘しました。

また今日では,技術が提供できることやビジネスのニーズに答えられることは当たり前で,素晴らしい UX をデザインできるかどうかが企業の明暗を分けるとし,これが UX の転換期であると述べていました。最後に,成熟したUXデザインの組織になるためには以下が必要であると結論づけていました。

Immersive Exposure
定期的なユーザビリティテスト,フィールドテストを通し,顧客が直面している問題を理解すること。
Shared Experience Vision
デザインにおける重要な決定をする際のガイドとなるビジョンを共有すること。
Culture of Continuous Learning
消費者のニーズを深く理解するために,学習し続けること。

このキーノートではユーモア溢れる説明が多く,会場内では終始笑いが起きていました。

カスタマーキーノート

HARMAN社,Esri社,Yuneec社,Mentor, A Siemens Business社の4社がスピーカーとなり,それぞれの企業の取り組みについて紹介していました。

地理情報システムのソフトウェア・データを提供しているEsri社の「Working Together to Build Great Products for Developers」では,CTO の Euan Cameron 氏が ArcGIS という製品の紹介を行っていました。ArcGISはGIS(地理情報システム)を拡張し,新しいアプリを作成するための開発プラットフォームです。Qtと連携することで,C++でのクロスプラットフォームアプリの開発がしやすくなっていると述べていました。

また,ドローンのメーカであるYuneec社の「Flying drones autonomously: The future of mission planning」では,グローバルソフトウェアプロダクトディレクターであるPaul Chen氏がDataPilotという製品の紹介を行っていました。DataPilotは,ドローンのミッションプランニングソフトウェア(ドローンの自動操縦において,自身の飛行ルートやカメラでの撮影ポイントの設定等を行うソフトウェア)です。Qtを採用することで,開発コストの削減をはじめとするさまざまなメリットがあることを述べていました。

著者プロフィール

千田順子(ちだじゅんこ)

株式会社SRAのエンジニア。2016年からQtチームに配属され,Qtのアプリケーション開発を担当している。

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