レポート

日本をはじめ各国のスピーカーが語るPythonのいま ―「PyCon Thailand 2019」レポート

この記事を読むのに必要な時間:およそ 7 分

2日目ライトニングトーク

2日目のライトニングトークからも,いくつか面白かった話題を紹介します。

Python "OS" for hackers

python-os.github.ioにあるPython製のOS用のコンポーネント集です。以下のようなツールが揃っており,それぞれをデモを交えて紹介していました。Pythonでここまでできていてすごいなと感じました。

  • Qtile:Window Manager
  • Kitty:Terminal Emulator
  • Xonsh:Shell
  • Qutebrowser:Borwser
  • Ranger:FIle Manager

Pythonの数値の話

2つの変数に数値を設定してprint(a == b, a is b)でどこまでがTrue Trueとなるか?という話です(※ オブジェクトが同一の場合はisの結果がTrueとなります⁠⁠。会場に答えさせて,答え合わせをしながら進んでいきましたが,筆者もうろ覚えなので結構間違えました。みなさんもぜひ手元の環境で255,256,257のときやマイナスのときにどうなるかを確認してみてください。

数値を比較

数値を比較

Keynote「How Python Can Excel」― Katie McLaughlin

Katie McLaughlin@glasnt氏はPSFフェローであり,PyCon AU(オーストラリア)のカンファレンスDirectorやPSF(Python Software Foundation)やDSF(Django Software Foundation)のDirectorを務める方で,さまざまなカンファレンスでキーノートもするスピーカーでもあります。

トークを始める前に画面トラブルでうまく表示がされないときに,ステージ上で陽気に踊り始めたときには「この人,大丈夫か?」と一瞬思いましたが(笑⁠⁠,いざトークが始まってみるとスライドの見やすさや,トークの展開など,ものすごく上手に構成されていて個人的にとても勉強になるなと思いました。

トークは「How Python Can Excel」と題して「PythonはどうやったらExcelのようになれるのか?」という内容で進みました。まず,Excelは多くの人に使われいてとてもパワフルであること,また協力なカスタマイズも可能で例としてExcelで作られたデジタル時計があげられていました(そんなものがあるんですね…⁠⁠。次にPythonの利用者は約2,500万人,それに対してExcelは約8億人とのことで,この32倍の差をどのように埋めていくことができるか,と問いかけながら話は進んでいきます。

そして,HumaneDevelopment.orgの以下の言葉が繰り替えし引用されました。日本語訳すると「私たちは,人と一緒に働いて,人々の利益のための,ソフトウェアを開発する,人間です」といった感じでしょうか。

We are humans

working with humans

to develop software

for the benefit of humans.

次に具体的な例として,科学者,教育者,クリエイター,求道者という4つの職種に対して,Pythonでどのような役に立つソフトウェアが提供されているかを語りました。

科学者に対しては,Jupyter Notebookやpandasなどのデータ分析用のライブラリが紹介されました。ここで紹介されている,グラフを手書きっぽくするXKCD plotsや,music21でNotebook上に楽譜が描けるのは面白いなと思いました。

教育者に対してはmicro:bitCircuitPythonといった,小さな基板上でPythonプログラミングする例が紹介されていました。

クリエイターに対しては事例としてRasPiで制御できる編み機を使って巨大な編み物を作った話を紹介しました。他にはゲームを作成するフレームワークのpygameや,ゲームプログラミングの課題を出すPyWeekが紹介されていました。

求道者の例としては2019年に話題となったブラックホールの可視化が例としてあげられました。この可視化にはachael/eht-imagingというプログラムが使用されています。このプログラムはPython製で,たくさんのパッケージに依存しています。直接のコントリビューター(コードに貢献した人)は14名ですが,関連するパッケージのコントリビューター21,715人とものすごい数になります。

最後に「ぜひみなさんもライブラリなどを使ってバグを見つけたら,レポートしてほしい。バグに対して修正して貢献をしてほしい」と呼びかけていました。

Katie McLaughlin氏の講演

Katie McLaughlin氏の講演

クロージング

クロージングでは参加者の内訳などが示されていました。全体の参加人数は初回から2倍以上で400名を軽く超えていたようです。参加者の年齢層が若いこと,女性の比率は約17%であること,タイ以外に9ヵ国以上から参加者がいることがわかります。日本からの参加者数はタイ,シンガポールについで3番目だったようです。

このクロージングでChairのDylan氏からRegime Change(政権交代)というスライドで「次のPyCon ThailandのChairを募集する」という話がありました。無事新しい主催者が出てきて,来年もPyCon Thailandが開催されることを期待します。

主催者,ボランティア,キーノートスピーカーの集合写真

主催者,ボランティア,キーノートスピーカーの集合写真

まとめ

以上でPyCon Thailandのレポートは終わりです。初めてのタイで2日間のカンファレンスを非常に楽しく過ごすことができました。英語でのトーク発表はフィリピンでのPyCon APACに続き2回目ですが,質疑応答をガッツリできたことが大変ではありましたが自信にもつながりました。

日本からの参加メンバー

日本からの参加メンバー

私以外にも2名も日本からスピーカーがいたことも,とてもよいことだと思います。こんな感じで,いろんな人が海外のカンファレンスでの発表に挑戦してくれるといいなと思っています。

さて,次はどこのPyConに行こうかな?(まぁ,すでに次の予定は決まっているんですが)

PyCon Thailand参加者の集合写真

PyCon Thailand参加者の集合写真

著者プロフィール

鈴木たかのり(すずきたかのり)

一般社団法人PyCon JP,副代表理事,株式会社ビープラウド所属。

部内のサイトを作るためにZope/Ploneと出会い,その後必要にかられてPythonを使い始める。PyCon JPでは2011年1月のPyCon mini JPからスタッフとして活動し,2014年-2016年のPyCon JP座長。他の主な活動は,Pythonボルダリング部(#kabepy)部長,Python mini Hack-a-thon(#pyhack)主催など。

共著書に『Pythonによるあたらしいデータ分析の教科書(2018 翔泳社刊)』『Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版(2018 秀和システム刊)』『Pythonエンジニア ファーストブック(2017 技術評論社刊)』『いちばんやさしいPythonの教本(2017 インプレス刊)』などがある。

最近の楽しみはPython Boot Campの講師で訪れた土地で,現地のクラフトビールを飲むこと。2019年は世界各国のPyConでの発表に挑戦している。趣味は吹奏楽とボルダリングとレゴとペンシルパズル。

Facebook:takanory.net

Twitter:@takanory

Github:takanory

バックナンバー

2019年

バックナンバー一覧