レポート

「フェイスアップ!」「ビルドアップ!」「マインドアップ!」~JaSST'19 Hokkaidoレポート~

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ワークショップ:体験しよう! テスト分析設計エクササイズ

本ワークショップは,筆者らとTA2名(NaITEの岡野麻子氏と角田俊氏)により実施しました。テスト初級者を受講想定者とし,基調講演でも解説されたマインドマップを利用したテスト分析設計を体験いただくものです。ワークショップのゴールは次のとおりです。

  1. テスト分析設計の基本的な考え方を理解する
  2. マインドマップを使ったテスト分析設計の基本を体感する
  3. テスト分析設計技法の使いどころを考えられるようになる
  4. マインドアップする

チュートリアル

最初にゲストチュートリアル講師の池田氏から,改めて手法について解説いただきました。

マインドマップによるテスト分析について語る池田氏

マインドマップによるテスト分析について語る池田氏

テストケースを作るうえで,テスト初級者はテストケースが仕様の転記になりがちですが,テスト上級者は,仕様に対してテスト観点を発想/検討したうえで戦略的にテストケースを作成します。たとえば,⁠機能」⁠プラットホーム」⁠エンドユーザ」⁠ドメイン特性」⁠組織のノウハウ」や階層や関連,組み合わせを考慮し,仕様書に書いていないことも発想します。

そのため,テストケースを作るにはとても多くのことを考えることが必要です。しかし,頭の中だけで考えたり,テストケースのフォーマット(表現形式)を使って考えたりするのは,実際の作業としては難しいことです。そこで「試行錯誤できる」⁠構造化しやすい」⁠整理するための俯瞰ができる」⁠発想力を刺激する」という特徴を持つマインドマップを活用します。

池田氏は「⁠⁠テストの思考⁠を実践するための道具としてマインドマップを活用し,単なる仕様チェックから卒業するための手段の一つとして持ち帰ってください」とチュートリアルを締めくくりました。

演習 マインドマップを用いたテスト分析・テスト設計を体験してみよう

演習ではいくつかのグループに別れて,テスト分析・テスト設計を行いました。下記のようなシナリオを設定して,そのシナリオの上でワークに取り組みます。

みなさんは急遽結成されたテストチームのメンバーです。顧客からは仕様書のみがテストベースとしてインプットされ,2時間でテスト設計を提案してほしいと要求されました。顧客は別の対応があるので問い合わせができません。このテストベースのみで,テスト分析設計を実施する必要があります。グループメンバーで協力してこの状況を乗り切りましょう!

(1)3色ボールペンを遣ってテスト分析しよう

テスト対象は,架空のスマートフォン向け「まりもの放置型飼育」アプリです。JaSST'19 Hokkaidoらしく,北海道ならではの題材としました。まずは,配布された仕様書を3色ボールペンで分析していきます。

  • 赤:客観的に「重要」な箇所<
  • 青:客観的に「まあまあ重要」な箇所
  • 緑:主観的に「気になる」箇所

次に行うテスト設計では,3色ボールペンでチェックしたところが手掛かりとなるため,参加者は必死にペンを走らせていました。

ワークショップの模様

ワークショップの模様

(2)マインドマップを遣ってテスト設計しよう

3色ボールペンを使ったテスト分析のあとは,いよいよマインドマップの作成です。チュートリアルで説明があったポイントが役に立ちます。

  • 仕様書に書いていないことも意識する
  • 観点を意識する
  • 3色チェックしたところを手がかりに
  • テストカテゴリ
  • 過去の経験,など……

マインドマップ作成には参加者に持参していただいたカラーペンが威力を発揮しました。カラーペンにより多くの色を使うことで表現力や発想力が上がります。また,絵や図表もできる限り⁠描く⁠ようにしていただきました。図は文章よりも情報量が多く,より多くのことを表現できるようになります。

マインドマップの作成

マインドマップの作成

(3)設計結果を発表しよう

各自が作成したマインドマップによるテスト設計を,グループメンバーに発表します。一人1分で自分のマインドマップを指さしながら,特に重要だと思うポイントについて説明します。それぞれ重要だと思うことが異なり,参加者には新鮮な気づきが得られたようです。

(4)テスト設計結果を集約しよう

各自のテスト設計結果をグループで1つのマインドマップに集約します。重要だと思うポイントや,テスト観点は人それぞれです。集約時のヒントは次のとおりです。

  • グループとしてのテスト設計方針を統一する
  • 集約,補完できるところはないか?
  • 階層関係はどうか?
  • 集約過程で足りないと思ったら観点を付け加えてもOK!

大きな模造紙を使用し,個人で作ったマインドマップを見ながら,仕様書を読み返しながら一つのマインドマップにまとめていきます。このステップでは,集約のプロセスも大切になります。メンバーそれぞれのユニークな観点を探して,取り込んでみるのも良い方法でした。それぞれが思いつくことには限界があります。複数で保管し合うことでより網羅性が高く,観点漏れが少ないテスト設計ができるだけではなく,お互いの方向性を一致させることにも効果があります。

グループごとにマインドマップを集約

グループごとにマインドマップを集約

(5)グループごとに発表しよう

最後に,グループごとに作り上げたマインドマップを発表しました。

発表の模様(1)

発表の模様(1)

発表の模様(2)

発表の模様(2)

各グループそれぞれに特徴があり,どの発表も質疑が盛り上がり,熱気の中ワークは終了となりました。その様子は写真でいくつかお伝えします。

発表結果(1)

発表結果(1)

発表結果(2)

発表結果(2)

発表結果(3)

発表結果(3)

今回のワークショップは,グループでのワークをメインとしました。普段参加者が仕事をされる中で,テスト分析・テスト設計をする際は,ほとんどの場合は一人で,あるいは分担で行っていると思われます。実際の現場では,なかなかテスト設計やテスト分析を教えてもらうということは少なく,すでにあるフォーマットに沿って粛々と作っていくことが多いように感じます。

ワークショップでバックボーンの違うメンバーでチームを組み,発表を行うことで,テスト分析・設計の基本的な考えを体感しつつ,普段触れることのできない観点を体感していただけたのではないでしょうか。マインドマップを手書きで紙に色分けをして描いていくことは,先ほど挙げたような単純な整理,分類ではなく,気づきや発想を喚起するクリエイティブな作業だということも体感していただけたと思います。

おわりに

基調講演およびワークショップにてテスト設計技法の前に行うべきテスト分析・テスト設計について知識を得るとともに体感してもらうことで,明日からよりうまくテスト設計技法を活用することのヒントが得られたのではと思います。筆者らも今回基調講演を聴き,そしてワークショップを運営することで,よりその重要さを認識しました。自分自身の作業はもちろん,チームでもこれまでよりもさらに意識を高めて取り組みたいと思います。

当日のワークショップではお土産としてもう1冊仕様書を用意しました。⁠カントリーサインマップ」という北海道のカントリーサインを集めるGPSを使用した架空のアプリの仕様書です。参加された皆様のチーム・プロジェクト内,または一人でじっくりとマインドマップを書いてもらいたいという思いで,配布致しました。ぜひご活用いただきたいです。

ほかのセッションも含め,このJaSST'19 Hokkaidoをきっかけに,ご自身やチームのフェイスアップ,ビルドアップ,そしてマインドアップに繋がっていくことを願っています。

著者プロフィール

金丸優介(かなまるゆうすけ)

日本ナレッジ(株)

第三者検証の立場からWebアプリ・組み込み系のシステムテスト・SQA業務などに従事。興味のある分野は,アジャイル・テスト自動化・AI・テスト系ツール全般。


吉田絵理(よしだえり)

日本ナレッジ(株)

組み込み系のシステムテストやSQA業務に従事。2019年からJaSST Hokkaido実行委員に参画。

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