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『生物ミステリー プロ』シリーズ,『リアルサイズ古生物図鑑』著者土屋健氏,2018年度日本古生物学会貢献賞受賞――執筆活動を通じた古生物学普及への貢献が評価される

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日本古生物学会は2019年6月21日,静岡市内で開催された日本古生物学会2019年総会にて,2018年度日本古生物学会学術賞,論文賞,そして貢献賞の3賞4組を発表した。

2018年度日本古生物学会貢献賞は,黒本という名称で多くの読者を獲得している『生物ミステリー プロ』シリーズや,2018年発行部数6万部を達成し,図鑑から古生物ブームを牽引したリアルサイズ古生物図鑑 古生代編など(いずれも技術評論社刊⁠⁠,多くの古生物関連書籍を執筆している土屋健氏が受賞した。

真鍋真日本古生物学会会長より,土屋健氏に表彰状が授与される

真鍋真日本古生物学会会長より,土屋健氏に表彰状が授与される

今回の受賞に関しては,先に上げた『生物ミステリー プロ』シリーズが,大学の副教材として採用されるなど,良質の古生物学啓発書として多くの読者から評価されたこと,また,⁠子供の科学』『ニュートン』など,幅広い読者層を有する一般科学雑誌への積極的な寄稿を通じ,若い読者の興味を惹き付けていることなどが評価された。

前述の『リアルサイズ古生物図鑑』に関しては,2019月6月12~23日の間,新宿マルイアネックスにおいてリアルサイズ古生物図鑑 イベント編と題した催事が行われるなど,土屋氏自身の執筆活動を通じ,書籍の枠を越えて古生物学の普及活動が続けられている。

今回の受賞者を含め,これまでの各賞受賞者については,以下Webページにて掲載されている。

日本古生物学会受賞者一覧
http://www.palaeo-soc-japan.jp/awards/

真鍋真日本古生物学会会長に訊く,古生物学の面白さと情報発信

今回,土屋氏の日本古生物学会貢献賞受賞にあたり,日本古生物学会会長 真鍋真氏に,改めて受賞の背景,そして,書籍や出版物,情報発信を通じた古生物学の魅力とこれからについてお話を伺ったので,その模様をお届けする。

今回の受賞理由について
真鍋氏:

土屋さんは幅広く活躍されていて,古生物学の世界でも土屋さんの筆の力で助けられています。そういった業績に対して,日本古生物学会の中から「何かお応えできないか」⁠賞を差し上げられないか」という声が多数上がりました。こうした背景から,今回の受賞に至りました。

土屋さんの受賞は大変ユニークで,これまで貢献賞というと,古生物の研究や研究者をサポートしてきた方にその長い間の貢献をお認めして授与するかたちが通例となっていました。しかし,今回の土屋さんの場合,過去の受賞者と比較しても年齢的にお若く,貢献に対する表彰とともに,まだまだこれからも頑張ってもらいたい,というエールが込められているのです。つまり新しいかたちとしての貢献賞を受賞していただくことで,貢献賞自体の幅が広がる,と判断して,2018年度の貢献賞を差し上げることになったのです。

古生物学への興味とロールモデル
真鍋氏:

土屋さんのこれまでの経歴は(古生物を学ぶ学生や興味のある方にとって)1つのロールモデルになるかと思います。土屋さんご自身も,もともとは古生物学を学んだ身で,研究を起点に雑誌編集にかかわり,サイエンスライターとして活動されている。

こういうキャリアは新しい進み方と言えますし,参考になるのではないでしょうか。まさに,古生物学の世界を開拓していると私は思います。

日本古生物学会には,研究者だけではなく「古生物が好き」⁠化石が好き」という気持ちで参加してくださる方も多くいます。その先に,自分で情報発信をしようという気持ちを持ってもらえる可能性もあります。

ぜひそういった方たちには,土屋さんのあとに続いていってほしいですね。そうすることで,古生物学の世界がもっともっと多くの方に拓けていくはずです。

日本古生物学会から期待したいこと
真鍋氏:

古生物学に限らず,学問には難しいというところがあります。その中で,古生物学を扱う場合,目立ちやすいところ,わかりやすいところに意識がいきがちです。たとえば,古生物と言えば恐竜に注目が集まるのはその一例でしょう。

土屋さんは,そういった目立つ部分と,難しい部分の間をつないでくれています。ご自身が研究の出自から,伝える側(雑誌制作)に関わり,今に至ったというバックグラウンドがあるからではないでしょうか。日本古生物学会としても,こういうつながりは非常にありがたく,学会として参考にしている点が多々あります。

本という観点で言えば,出版社の皆さんには,わかりやすい内容や興味を持ちやすいテーマに加えて,難しい基礎部分や,ふだんあまり日の当たらないテーマにも目を向けて,新しいアプローチ,幅広い関心につながるような刊行物を期待したいですね。

私自身,本の価値として,手に取った方が読んで理解して自分で咀嚼していくこと,そこに楽しみがあると思っています。たとえ難しい内容の本だったとしても読み終えたあとに,もっとわかりたいと読み直したり,その本がきっかけでさらに深い興味を持って先に進んでもらえるような,そういった本が増えていったら嬉しいですね。

今回の貢献賞をきっかけに,さらなる古生物学のファンたちが増えていくことを期待しています。

お知らせ:化石友の会に参加しよう!

⁠将来古生物学者になりたい⁠⁠化石研究の最前線を知りたい⁠⁠化石の研究をしたいのだけれど,どうすれば研究ができるの?⁠⁠,そういった気持ちを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本古生物学会では,そんな方たちが情報共有できる,化石の研究を志す人たちや化石が大好きな人たちが集まる場として「化石友の会」を用意しています。

ご興味のある方は,以下URLを参考の上,ぜひご参加ください。

化石友の会への入会案内
http://www.palaeo-soc-japan.jp/friends/membership.html

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

Twitte ID:tomihisa(http://twitter.com/tomihisa/

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