瀬山士郎先生の 数学よもやま話

第6回 数学と数学記号

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しばらく前,2013年に技術評論社から数学記号を読む辞典という本を出版していただいた。小学校から始まる数学記号(数字,+,-など)から大学で学ぶ行列や偏微分の記号までを使用実例を挙げながら解説した本である。現在,放送大学で数学に少しだけ関係していて,何名かの学生の方から,数学記号の読み方や使い方を質問されたことがある。それも本書を執筆する動機になった。放送大学の勉強会では数学書を朗読しながら話を進めているので,文字通り物理的な読み方も問題になるのだ。実際は数学書を独習しているときは,読み方は分からなくても,記号の意味さえつかめれば大丈夫である。

数学は抽象的な学問だが,記号を使って研究を展開するという大きな特徴がある。もちろん文字も記号の一種だから,どんな学問でも記号を使って展開されるのだが,数学記号の場合,その記号列を一定の規則に従って変形できる(広い意味での計算といってもいいと思う)という特徴がある。

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数学が数学記号を使うのは,思考過程が記号変形によって目に見える形で取り出せるからであり,その方が普通の文章表現よりずっと正確に内容を表すことができるからだ。多くの人は,記号を使うことで難しくなるのではと誤解している。そんなことはない。記号を使うことで,扱っている数学的な内容がずっと分かりやすく明確になる。数学記号は言語であり,しかも論理的に洗練された綺麗な言語なのだ。と言いつつ,線形代数学で出てくる添え字の多さに戸惑う学生さんたちを見て,なるほど,いささか面倒だなあ,と思うこともあるのですが。

著者プロフィール

瀬山士郎(せやましろう)

1946年群馬県生まれ。1970年東京教育大学大学院理学研究科終了。専門は位相幾何学,グラフ理論。

1970年群馬大学教員となり,2011年定年退職。群馬大学名誉教授。数学教育協議会会員。

主な著書に「バナッハ・タルスキの密室」(日本評論社,2013年)「読む数学」(角川ソフィア文庫,2014年)「はじめての現代数学」(ハヤカワ文庫,2009年)「幾何物語」(ちくま学芸文庫,2007年)「無限と連続の数学」(東京図書,2005年)「トポロジー:柔らかい幾何学」(日本評論社,2003年)「計算のひみつー考え方の練習帳」(さ・え・ら書房,2004年)「数学 想像力の科学」(岩波書店,2014年)などがある。

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