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書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講

第16回 宇宙存在の理由と地球環境の保全~本書「ピタゴラスの定理でわかる相対性理論」の意味は何だったか?

「ピタゴラスの定理でわかる相対性理論」を佐野茂氏と著し,補講をしてまいりました。最初は本書に盛り込めなった公式の証明を取り上げ,いろいろな話題に触れてきました。そして,第10回では E=mc2 論文の全訳からから新しい展開をしてまいりました。さらに,これとE=hv との関係を語った後に日本の素粒子研究や電子工学の発展に入りました。

前回は「ライバルの対話」という発想で,アインシュタインとハーゼンエールおよび湯川と朝永をテーマにしてみました。今回は最終回として,昨年のノーベル物理学賞を引用しながら宇宙存在の理由と,ささやかながら地球環境保全の問題に触れたいと思います。

1.次々と見つかった素粒子と宇宙存在の理由

湯川秀樹の中間子論がきっかけとなって素粒子という言葉ができて,素粒子論という分野が生まれ急速に発展しました。素粒子とは,「物質を細分化していって最後にたどりつく究極の粒子」のことですが,これが複雑な様相を示すようになりました。それは加速器の進歩があって,その成果としてさまざまな粒子が見つかったからです。加速器では電子や陽電子を光の速度に近い速度まで加速して電子核に衝突させて,素粒子を発生させる装置です。素粒子の種類を表1表2にまとめておきます。

表1 素粒子の種類

A:基本粒子

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B:ハドロン(複合粒子)

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表2 クォークの種類

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このあたりのことをやさしく書いた本はいろいろありますが,初めての方には,佐藤勝彦著『図解雑学 量子論』[※1]をお勧めします。さらに詳しくは,Internetで専門家が参照するhttp://pdg.lbl.gov/があります。

1936年にアンダーソンが宇宙線から電子の質量の200倍ほどの粒子を見つけたとき,それは湯川の予言した中間子だと思われたのですが,実は電子の兄弟分のようなミュー粒子でありレプトンに属します。湯川の中間子はハドロン(複合粒子)に属する π 中間子です。

 ハドロンはクォークの複合体と考えられています。1964年にアメリカのゲルマンとツワイクは別々に究極の粒子クォークのモデルを発表しました。

こういうなか,理論物理学の関心はそもそも物質あるいは宇宙が存在する理由― 数学的な説明― ができるかに寄せられたようです。

2008年のノーベル物理学賞は宇宙存在のためのCP対称性の破れに関するもので,南部陽一郎,小林誠,益川俊英の3氏が受賞されたことは周知のことです。受賞理由として正式には次のように言われています。

  • 南部陽一郎:粒子の質量起源に関する自発的対称性の破れ
  • 小林誠・益川俊英:CP対称性の破れの起源の発見
    ここで,Cはcharge conjugate (荷電共役性,正に対する負,電子に対する陽電子のような対称性),Pはparity(波動の山と谷に関連するような対称性)。

前回までに,ディラックが E=mc2 のエネルギー式と運動量を加味して,さらにシュレディンガーの波動方程式を統合して,陽電子の可能性を指摘したことに触れました。陽電子とは正電荷をもった電子 ― つまり反電子です。ビッグバンによって宇宙が発生したときに物質(さまざまな粒子) と反物質(反粒子)ができて,反物質はほとんど消滅して物質が残って現在の宇宙があるとする考えがあります。粒子に対する反粒子の関係は一つの対称性です。この対称性にわずかの乱れが発生することが素粒子の質量の起源だというが南部の理論です。

CP対称性あるいはCP保存則とは,

  • 「粒子と反粒子を入れ替えた世界の物理法則が,ちょうどわれわれの世界を鏡で見たとき(時空反転)と同じになっているばずだ。」という命題です。

ところが1964年に,わずかにCP保存則が破れている現象が発見されました。当時はそれを説明する理論がありませんでした。このときにはクォークとして「アップ」,「ダウン」および「ストレンジ」の3つが発見されていました。そこに,4組(カルテット)で完全になるので残る一つ(チャームクォーク)見つかるだろうという説が出ていました。しかし1972年寄稿・翌年刊行小林・益川の論文[※2]は,カルテットでは対称性が破れないことを指摘し,対称性が破れる可能性として,6種類のクォークモデルを示唆しました。それは複素数の導入に深く関係する理論です。表1,2には第1世代,第2世代,第3世代として6個のクォークが示されています。

小林・益川論文の概要[※2]

In a framework of the renomarizable theory of week interaction, problems of CP-violation are studied. It is concluded that no realistic models of CP-violation exist in the quartet scheme without introducing any other new fields. Some possible models of CP-violation are also discussed.

弱い相互作用の繰り込み理論の枠内でCP-対称性の破れを検討したところ, 4組構造では何か新しい場を導入しないかぎり対称性の破れが起きそうな現実的なモデルがないことがわかった。さらにここでCP対称性の破れの可能性あるモデルをいくつか検討する。

ガウスの複素平面は2次元です。2次元は複素数になじみやすいのですが,3次元空間に複素数を持ち込むと数学ではうまくいかないとされています。小林・益川の理論はこういう意味の3次元空間とは違って,現実のクォークと純粋なクォークの3世代間の混合に関する数学表現を提示したものです。各世代に2個のクォークをあてて,ここに混合比として複素数を持ちこむと,位相回転で吸収しきれない複素位相が残り,これがCP対称性の破れにつながるとするものです。

1974年にチャーム,1977年にボトムクォーク,1995年にトップクォークが発見され現在は6個のクォークが見つかっていることになります。CP対称性の破れの理論の実験による検証は,2001年に筑波の高エネルギー研究所の加速器で成功しました。

これは蛇足かと思うのですが,小林・益川の論文は必要なことだけをさりげなく書き上げて,余計な謝辞もない点でアインシュタインの論文と通じるものがあり,読者の心を癒します。

ちなみに2002年のノーベル物理学賞の一人が小柴昌俊氏で,ニュートリノ天文学を創始し開拓した業績に対するものでした。表1にあるように,ニュートリノの名のつく素粒子は3個あります。

現在の有力な説では:物質のすべては6種類のクォークと6種類のレプトンで構成されているといわれています。3つのクォークで中性子あるいは陽子ができて,電子はレプトンの1種とみなされています。

しかし宇宙の起源についてはまだ謎が多くて,南部先生の理論[※3]ではまだ全宇宙の質量の起源は説明できないと言われています。

アインシュタインの奇跡1905年の論文から100年あまりの今,宇宙と物質と光の根源の追究が最後の一押しのところに来ているのでしょうか?

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