LL Planetsで実現した無線LANインターネットの開放

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ネットワーク構築

LL Planetsのネットワーク構築はいかに素早く構築できるかが勝負でした。というのも,前日に会場でネットワーク構築ができる時間は無く,機材搬入・機器の配置・配線・疎通試験という一連の作業に与えられた時間は当日朝の50分だけだったのです。そのため,ルータ,L3スイッチ,PoEスイッチ,無線APは前日に全ての設定と接続テストを行っておくことで,ネットワーク構築時間をできる限り短縮しました。

また,当日の人員配置も入念に検討し,各機器,各場所ごとに担当を割り振り,設定した機器の設置および導通チェックを行いました。ステージだけは朝から使用するため,ネットワークスタッフ全員の手により最優先で構築を行い,その後にIPv6ハッカソン部屋,控え室の順にネットワークを提供しました。観客用のネットワークのみ,朝の時間帯だけでは無線APや配線を客席に設置する時間が足りなかったため昼からの提供となりましたが,その他のネットワークについては無事構築することができました。

写真1 準備風景

写真1 準備風景

無線ネットワーク

無線APの設置場所は壁際や床下を避け,なるべく人より高い位置に設置するのが理想とされていますが,テンポラリな環境で無線APを壁に設置することはできませんでした。この課題は計画当初は「諦めて座席に設置する」としていましたが,会場設営時に舞台裏で譜面台があるのを発見して「これは使える!」ということで採用しました。譜面台APの誕生です。

当日にすべてのネットワーク構築を行うため,無線APの電波出力をどの程度に設定するかは現地で運用中に調整するしかありません。そこで段階的に無線の電波出力を下げつつ,スタッフがPCを片手に電波出力を測定し,1つの無線APに接続が集中しないよう細かい調整を行いました。最終的には無線APの電波出力を1%にしてもまだ電波が強かったので,アンテナを物理的に寝かせてみたり,譜面台の高さを低くしたり,またレートリミット機能の接続スピードしきい値を54Mbpsのみに限定することで,最適なコンディションを作ることができました。

この電波出力の調整に手間取ってしまい,観客に無線LAN接続を提供できたのは前述した通り,お昼ごろまでずれ込みました。調整中にTwitter経由で「無線LAN接続はまだですか?」といった催促もあり,申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

写真2 運用中の譜面台AP

写真2 運用中の譜面台AP

当日の運用

ネットワーク監視は,コアスイッチのsflowやMACアドレス登録数,DHCPのリース数,トラフィック量などの項目を対象としました。さらに,観客のネットワークに対する要望や状況をモニタする手段としてTwitterを活用しました。

Twitterでのネットワークモニタリングは大変有効であり,DHCPからIPが降ってこないといったトラブルの報告に,ネットワークスタッフは即座に原因究明を行うことができました。Twitterを一方的にモニタするだけでなく,会場無線LANの構築状況やSSID/Key情報などの情報発信も行いました。とくに「ネットワーク安定しています。ありがとう!」というような「お褒めツイート」をもらった時は非常に嬉しかったです。次回はホットステージの状況や,当日の構築状況・運用状況をより細かく,リアルタイムで報告することを検討しています。

無線LANを観客に提供するまでは,会場内ポータブル無線APは100局を超えている状態でしたが,提供開始から次第に減少して最終的に6局にまで減りました。この程度であれば無線帯域が枯渇することは無いと考え,また802.11b/gしか対応していない端末があるという声がTwitterで挙がっていた為,ネットワーク設計当初の予定になかったの802.11a,b/gの両方の無線規格を提供することができました。最終的に全体の接続数は平均170程度となり,十分な余力がある状態が続き,安定した無線ネットワークを提供することができました。

LL Planets閉会時には機材の回収・梱包・発送などを行わなければなりません。そのため閉会時から撤収作業を開始しても,時間が足りなかったので,閉会宣言の30分前から撤収を始めました。撤収作業には,無線APの回収も含まれていますが,セッションの最中にすべての無線APを撤去することは避けたかったので,ネットワークの輻輳覚悟で無線AP2台のみを残し,それ以外の無線APをすべて撤去しました。結果的に特に目立った通信トラブルは無く,たった2台になっても持ちこたえてくれました。改めて無線APの性能の高さを実感しました。

まとめ

無線は難しい

無線LANの回線は,LANケーブルのように目に見えるわけではなく,L1の段階で非常に気を遣いました。とくに下記の事項については慎重に検討する必要があります。

  • 使用する無線規格の選択(802.11a,b/g,n)
  • 観客が持ち込む大量のポータブル無線APによる周波数枯渇対策
  • 802.11aの周波数規格の選択(W52以外は気象レーダ(ISMバンド)干渉を考慮)
  • 複数無線AP設置による負荷分散
  • 無線電波出力を落とす方法もあらかじめ考えておくこと
  • レートリミット機能の活用
  • 会場の無線状態をこまめに監視すること
  • できる限り人の身長よりAPを高く設置すること

準備8割,実行2割

LL Planetsのネットワークは前述した通り,当日の僅かな時間で構築する必要がありました。その場でトラブルシュートや構成変更を行う余裕は皆無であり「誰が,どの機器を,どこに設置し,どのケーブルを用いて,どのポートに接続する」という単純作業のみ注力できるよう,事前計画・準備時間を入念に行いました。

スタッフの1人が「準備8割,実行2割」と,まるでお経のように唱えていましたが,本当にその通りだと思います。

今後の取り組み

LL Planetsでは,初の取り組みとして観客にインターネット接続を提供させていただいた訳ですが,実際にやってみないと判らない事ばかりでNOCチーム一同,貴重な経験をさせていただくことができました。

実は,今回の「観客へ無線LANを提供」という試みは,後にフィードバックを行うため,時系列で観客のトラフィック量や持ち込まれたポータブル無線AP数の観測を行う予定でしたが,データ収集端末のトラブルにより失敗してしまいました。次回はこれらのデータを取得・分析を行いフィードバックに活用していきたいと考えています。

最後に,LL Planetsはボランティアベースのイベントであり,スタッフ有志一同と,LL Planetsの意義に理解を示していただける企業様により支えられています。これらの協力無くしてLL Planetsは成立しませんでした。この場を借りてお礼申し上げます。

著者プロフィール

東松裕道(とうまつひろみち)

国内電機メーカにてネットワーク機器の仕様や機器の評価する毎日。

2010年LL Tigerより,ネットワークスタッフとして初参加。JANOGにもスタッフ参加している。

趣味はパラグライダ・カメラ・車など。公私ともに面白そうなことを見つけて遊んで学ぶ日々。


辻下卓見(つじしたたくみ)

国内電機メーカにてF/W開発エンジニア。コンピュータを正常に動作させるために日々汗を流している。

2011年LL Planets にネットワークスタッフとして参加。


徳永慎一(とくながしんいち)

国内電機メーカにてサーバ設計業務に従事。日々UNIX系OSの障害解析にあけくれている。

2010年LL Tigerよりネットワークスタッフとして参加。

Twitter ID:@deepneko


森久和昭(もりひさ かずあき)

大学院を卒業後,情報セキュリティを専門とするIT企業に就職。現在はIDSやIPS,WAFを構築して顧客ネットワークに導入する業務に携わっている。

2011年LL Planets にネットワークスタッフとして参加し,ネットワーク構築の経験を積む駆け出しの技術者。

Twitter ID:@k_morihisa

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