BSD界隈四方山話

第21回*BSDの情報はどこから得ればよい?

世界中のFreeBSDユーザはどうやってFreeBSDの情報を得ているのでしょうか。ソースはいろいろありますが、特に有益な情報を得やすいメディアを紹介したいと思います。

FreeBSD Handbook

FreeBSDに関する最も良質でまとまったドキュメントはFreeBSD Handbook(FreeBSDハンドブック)だと思います。使用するオペレーティングシステムをLinuxからFreeBSDに変更したユーザやエンジニアからよく聞かれる理由の一つがFreeBSD Handbookの存在だからです。実際、このドキュメントは全方位に渡ってよくまとまっていると思います。ドキュメントチームのクオリティの高さがうかがえます。

図1 FreeBSD Handbook
図1 FreeBSD Handbook
図2 FreeBSD Handbook邦訳
図2 FreeBSD Handbook邦訳

FreeBSD HandbookにはFreeBSDを使用するための情報が一通りまとまっています。ドキュメントの品質は高く、常に最新のリリース状況に合うようにアップデートされています。英語以外に複数の言語版が存在し、日本語版はアップデートが速く品質も高いドキュメントです。英語が苦手な方にとってはとても貴重な情報源だといえます。

FreeBSD Forum

もっとインタラクティブな情報源として有益なのがFreeBSD Forumです。英語ができるのであればこの媒体を使わない手はないでしょう。何か問題が発生したとか、解決したいことができたのでればここで質問を投げましょう。得たい答えは結構すぐに返ってくると思います。メーリングリストよりもカジュアルで質問しやすい雰囲気を感じます。

図3 FreeBSD Forum
図3 FreeBSD Forum

FreeBSD Forumはインタラクティブなメディアとしてもそうですが、問題解決のアーカイブとしても利用できます。なにか問題があればFreeBSD Forumですでに同じ問題が出ていないか調べるのも、なかなかよい方法です。

BSD MAGAZINE

世界中の*BSDユーザやデベロッパを対象とした最初の雑誌がBSD MAGAZINEです(BSD magazineというムックがアスキーから出版されていましたが、これとは別の雑誌です。BSD magazineは休刊しています⁠⁠。当初は紙媒体で出版されていましたが、現在では無償の雑誌として電子版が毎月出版されています。

図4 BSD MAGAZINE
図4 BSD MAGAZINE

FreeBSDの情報が多めではありますが、FreeBSDに限らず*BSDの情報を扱った雑誌です。現在ではPDFやePubのデータを取得できますので、毎月チェックしてはいかがでしょう。

FreeBSD Journal

BSD MAGAZINEよりも後発となりますが、FreeBSD FoundationのGeorge V. Neville-Neil氏およびFreeBSD committerらをボードメンバーに迎えて創刊された電子書籍がFreeBSD Journalです。FreeBSDユーザや開発者向けのプロフェッショナルな情報を提供することを目指しています。

年間サブスクリプションまたは個別購入が可能な電子書で、Kindle、iPad、iPhone、Android、Webブラウザなどさまざまな方法で閲覧できます。

図5 FreeBSD Journal
図5 FreeBSD Journal

先日、FreeBSD Journalはサブスクライバが1万人を突破しました。創刊当初からユーザを増やし、現在もその傾向が続いています。現状をみますと、FreeBSDに関するまとまった情報で、しかも一定以上のクオリティを保った情報源となると、FreeBSD Journalがひとつの有益な候補ではないかと思います。稚拙ながら後藤もFreeBSD Journalのボードメンバーに参加させていただいています。身内ネタになってしまいますが、本心からオススメできるメディアです。

bsdtalk

*BSDの情報をポッドキャストで配信したパイオニアがbsdtalkです。bsdtalkではさまざまな情報を、いろいろな開発者との会話で収録して配信しています。生の声が世界中に定期的に配信されるようになった走りではないかと思います。

図6 bsdtalk
図6 bsdtalk

結局のところ、テキストで配信される情報には「感情」「雰囲気⁠⁠、または「勢い」といった情報が欠落する傾向がみられます。ポッドキャストで生の声が届くようになったことは、開発者がどういった感情や気持ちで取り組んでいるのか、それはどの程度深刻なことなのか、そういったテキストには載りにくい情報を得る上でとても重要なものでした。

bsdtalkは更新も活発で、楽しみなポッドキャストの一つです。ぜひ皆さんも購読してみてください。

BSD Now

bsdtalkよりも後発で、かつ、視覚的なのがBSD Nowです。AllanもKrisもFreeBSD開発者であれば知らない方はいないと思いますが、この2人が動画でインタビューでありイベント情報を発信してくれているのがBSD Nowです。

図7 BSD Now
図7 BSD Now

2人の英語は比較的聞き取りやすいですし、動画もありますし、なかなかいい情報源になります。英語が苦手という場合でも、BSD Nowの場合にはスクリーンにプレゼンテーション的な情報が表示されますので、そこからくみ取ることもできると思います。こちらも購読をオススメしたいコンテンツです。

OpenBSD Journal

OpenBSDの情報源としてオススメできるのはOpenBSD Journalです。たびたびメディアでも取り上げられますが、OpenBSD Journalには注目度の高いトピックがしばしば掲載されます。昨年のHeartbleedセキュリティ脆弱性以来、OpenBSDプロジェクトの取り組みは高い注目を集め続けています。LibreSSLは今後より多くのオペレーティングシステムで高い注目度を集めるでしょうし、押えておきたい情報源です。

図8 OpenBSD Journal
図8 OpenBSD Journal

OpenBSD Journalにはセキュリティ関連の情報が掲載されることが多く、注目しておいてよいメディアだと思います。

FreeBSDワークショップ

これまで主に英語の情報源を取り上げてきましたが(ほとんどの役に立つ情報は英語で出てくるので、これは避けて通れないからです。英語を勉強して理解できるようにすることが、未来への最大の投資になると思います⁠⁠、日本語での情報についても取り上げたいと思います。

FreeBSDに関してなんとしても解決したいことがあるなら、FreeBSDワークショップに参加することには高い価値があると思います。

図9 FreeBSDワークショップ
図9 FreeBSDワークショップ

FreeBSDワークショップはFreeBSD core teamのメンバーでありFreeBSD Foundationのメンバー、そしてAsiaBSDConの主催者である佐藤広生氏がホストしているイベントです。月に1回ほどのペースで開催されています。FreeBSDワークショップに参加して、そこでいろいろな議論をすることには高い有益性があると思います。東京より遠い場所からの参加は難しいところがありますが、時間を作って参加する価値のあるワークショップです。

FreeBSD勉強会

同じような取り組みに、現在は主に後藤が開催しているFreeBSD勉強会があります。この半年ほどはThe Design and Implementation of the FreeBSD Operating System (2nd Edition)を読んでいます。勉強会のあとには酒を飲んでざっくばらんな話をするので、お酒が好きな方にもオススメです。

図10 FreeBSD勉強会
図10 FreeBSD勉強会

FreeBSD勉強会では常に発表したい方も募集しておりますので、その節にはぜひ後藤へご連絡ください。@daichigotoを叩いていただければと思います。

BSD界隈四方山話

最後のこの連載も紹介させてください。BSD magazineやFreeBSD Press、ここ技評さんからはFreeBSD Expressが定期的に発刊されていた時代は過ぎてしまいました。現在、日本語でまとまったFreeBSDの情報をメディア経由で得るのはだいぶ難しいと言えます(今後電子書籍で出る可能性はあるけどね⁠⁠。

図11 BSD界隈四方山話
図11 BSD界隈四方山話

稚拙ながら、週1でアップデートしているこの「BSD界隈四方山話」がその一つになれればと考えています。また、こちらは月1になりますが雑誌Software Designで「チャーリールートからの手紙」という連載を掲載しています。日本語での情報じゃないとダメなんだ、という場合にはこちらもご参考にしていただければと思います。どういったことが知りたい、どういった内容を掘り下げて欲しいという要望も受け付けていますので、随時ご連絡ください。

以上で今回の話題は〆めたいと思います。*BSDを取り巻く状況は時代に合わせてめまぐるしく変わっているように思います。なるべく、フレッシュでトレンドな情報を伝えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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