ニッポンのIaaSを牽引するIDCフロンティア

#3Yahoo! JAPANとIDCフロンティアがタッグを組んで提供する「Yahoo!クラウド ストレージ」とは

Yahoo! JAPANとIDCフロンティアは、新たなクラウド型のストレージサービスとして「Yahoo!クラウド ストレージ」を発表しました。このサービスの内容や特長について、Yahoo! JAPAN、そしてIDCフロンティアの担当者にお話を伺いました。

Yahoo! JAPANのインフラ上でサービスを提供

ここ最近、クラウド型のストレージサービスに注目が集まっています。エンタープライズ領域でのファイル共有用やバックアップ用、あるいは仮想サーバから利用するためのストレージ領域など用途はさまざまですが、クラウドの活用範囲を広げるという観点で考えれば、こうしたストレージサービスが充実し始めたことはユーザーにとっても大きなメリットでしょう。

こうしたクラウド型のストレージサービスとしてYahoo! JAPANが提供を開始したのが「Yahoo!クラウド ストレージ」です。各種ドキュメントや画像、動画などあらゆる形式のオブジェクトデータをクラウド上で管理できるというサービスであり、特長としては「低コスト⁠⁠、⁠冗長性⁠⁠、⁠シンプル⁠⁠、そして「ディレクトリ構造でのデータ管理が可能」であることが挙げられています。

このサービスで注目したいのは日本最大級のアクセスを誇るYahoo! JAPANのインフラ環境で運用されているということ。高速なネットワークインフラが利用できるほか、安定したパフォーマンスを期待できるという点は大きな魅力でしょう。

利用料金は従量課金モデルで、初期費用は無料、ストレージ使用料は10.0円/GBで、これにネットワーク転送料は15.75円/GBが加算されます(ダウンロード転送のみ課金。アップロード転送は無料⁠⁠。国内の同様のストレージサービスと比べると、非常に安価な価格設定であることが分かるでしょう。なお利用できる容量に制限はなく、基本的に無制限で利用領域を拡張することが可能となっています。大規模なデータの保存先としても利用できるというわけです。

ストレージサービスを利用する際に気になるのは信頼性でしょう。Yahoo!クラウド ストレージでは、アップロードしたデータを自動的に多重化するため、安心してデータバックアップに活用いただけます。ストレージの操作はREST形式のWebAPI(Amazon S3互換相当)を利用します。

Yahoo! JAPANで使われているCDNも利用可能

CDNの仕組みが提供されていることも大きな魅力でしょう。もともとYahoo! JAPANでは独自のCDNを有しており、高解像度の画像データなどはCDNを介して配信する形となっています。Yahoo!クラウド ストレージを利用すれば、このYahoo! JAPANのCDNを利用してコンテンツを配信することが可能になるというわけです。

サービスをブラウザ経由で管理するためのコントロールパネルもあり、ファイルマネージャーや使用状況のグラフ表示、利用料金の実績表示、そしてアクセス権限の設定といった機能が用意されています。

Yahoo!クラウド ストレージのコントロールパネル。ストレージ使用量をグラフで確認可能
Yahoo!クラウド ストレージのコントロールパネル。ストレージ使用量をグラフで確認可能

APIリファレンスやスタートアップマニュアル、デベロッパーズガイドといったドキュメントが充実していることに加え、JavaやPHPのSDKおよびそのドキュメントが用意されていることも見逃せないポイントです。

Yahoo! JAPAN自身も自社サービスのストレージとして利用

Yahoo! JAPANにおいてインフラ全体をマネジメントしている平田源鐘氏は、このストレージシステムはもともとYahoo! JAPAN内で利用するためのものとして開発が始まったと話します。

「Yahoo! JAPANには数多くのサービスがありますが、コスト面で考えるとストレージというのは大きな負担になっていました。そこで、たくさんのサービスで使っているストレージを共通化することにより、コストの削減や運用の一元化、サービス提供時のリードタイムの短縮といったことを実現するソリューションとして、このストレージサービスを開発することになりました」⁠平田氏)

ヤフー株式会社
セントラルサービス統括本部 コアPF
ユニットマネージャー
平田源鐘氏(部署、肩書は掲載日時点のもの)
ヤフー株式会社 セントラルサービス統括本部 コアPF ユニットマネージャー 平田源鐘氏

Yahoo! JAPANではサービスごとにストレージを用意するといった形で対応することが多かったそうですが、その場合どうしても無駄が生じてしまうなどといった課題があったそうです。またサービスによっては保存したデータにアクセスすることは滅多にないといったこともあり、そうすると高価なストレージ製品の導入はコスト面からも無駄が多いといった問題もありました。

そこでYahoo! JAPAN全体で使えるストレージシステムを構築することで、ストレージ利用の効率化を実現してコストを削減、さらにストレージ製品の発注から導入までのリードタイムの短縮により、スムースなサービス提供を実現することができるようになったと言います。

このYahoo!クラウド ストレージは、もともと写真やドキュメント、音楽、動画などあらゆるファイルを管理できるパーソナルクラウドサービスである「Yahoo!ボックス」での利用を想定して開発が進められました。その後もこのストレージシステムを利用するサービスは増え続けており、現在では飲食店や小売店向けのホームページ作成サービスである「Yahoo!ロコ プレイス」や動画配信サービスの「GyaO!⁠⁠、電子書籍サービスである「Yahoo!ブックストア」などで利用されているとのこと。また社内的な利用でもバックアップやデータのアーカイブ、アクセスログや監査ログの保存、BCP/DR対策などとしても活用されています。

複数のサーバに分散してファイルを保護

それでは、このYahoo!クラウド ストレージはどのようなシステム構成となっているのでしょうか。これについては、同社セントラルサービス統括本部 プラットフォーム開発本部の城圭佑氏が次のように説明します。

ヤフー株式会社
セントラルサービス統括本部 コアPF クラウドストレージ
サービスマネージャー
城圭佑氏(部署、肩書は掲載日時点のもの)
ヤフー株式会社 セントラルサービス統括本部 コアPF クラウドストレージ サービスマネージャー 城圭佑氏

「ざっくりお話しすると、まずストレージとして動作するサーバが最下層に大量に存在し、その上のレイヤーのサーバでどのサーバにどのデータが入っているのかなどといった情報を管理しています。そして最上位のレイヤーにあるサーバで外部とデータをやり取りするためのインターフェイスを提供しているという形になります。このように、基本的には汎用サーバを束ねてストレージシステムを構成するという考え方ですね。さらにデータを複数のサーバに分散配置して冗長性を確保するなどといった仕組みを盛り込んでいます」⁠城氏)

なおこうしたストレージシステムは、米国Yahoo! Inc.が持つ技術を部分的に流用しつつ、独自で開発を進めたとのこと。単に既存の分散ファイルシステムを使うのではなく、たとえば信頼性やパフォーマンスといった観点で「Yahoo! JAPAN」クオリティを実現するために必要な機能を盛り込んだというわけです。

IDCフロンティアとの連携でサービス展開が実現

このYahoo!クラウド ストレージについては、Yahoo! JAPANグループであるIDCフロンティアも企画・商品開発に携わっています。IDCフロンティアのビジネス推進本部 サービス開発部の部長である大屋誠氏は、このプロジェクトに関わった感想を次のように述べます。

「Yahoo! JAPANには優れた技術やインフラがあり、またエンジニアの方もたくさん在籍しています。IDCフロンティアのクラウドビジネスを進めていくことを考えたとき、親会社であるYahoo! JAPANの技術を活用していきたいというのは私たちも熱望していましたし、Yahoo! JAPANとしても同じ思いがありました。それがストレージという非常に重要でコアな領域でサービスとして実現するということはすごく興奮を覚えましたし、実際にいい仕事ができたと自負しています」⁠大屋氏)

株式会社IDCフロンティア
ビジネス推進本部 サービス開発部 部長
大屋誠氏
株式会社IDCフロンティア ビジネス推進本部 サービス開発部 部長 大屋誠氏

大屋氏が考える、Yahoo!クラウド ストレージのメリットについて伺うと、次のような回答が返ってきました。

「企業が保有するデータは増大し続けており、またデータに応じて必要とするストレージシステムの要件も異なります。その中で、Yahoo!クラウド ストレージは、安価に大量のデータを保存するのに最適なサービスです。また、すでに長い期間Yahoo! JAPANのサービスを支えるインフラとして改良を重ねた、実績のあるインフラをサービス化したことも特長のひとつです。海外ではこのような事例はありますが、国内のインフラサービスとしてこれだけの実績を持ったサービスが開始する例は珍しいのではないでしょうか。そして、コントロールパネルは、IDCフロンティアのお客様に対する事前のヒアリング内容を加味したうえで、開発者以外の方でもブラウザ上で簡単にファイルの管理ができるよう、機能開発が行われています。利用者目線に立った開発は、Yahoo! JAPANならではと言えるでしょう。」⁠大屋氏)

このYahoo!クラウド ストレージの具体的な用途としては既存データのバックアップや、コンテンツ配信などが考えられると言います。たとえば写真の共有サイトを運営している際、データの保存先としてYahoo!クラウド ストレージを利用すれば低コストで写真を保管できる上、CDNと組み合わせることによって必要なデータをすばやくユーザーに届けるといったことも可能になるでしょう。またユーザー側での作り込みは必要になりますが、社内のドキュメントをクラウドに保存するといった用途において、Yahoo!クラウド ストレージを一種のファイルサーバのように使うといったことも考えられるのではないでしょうか。

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今後も両社で連携して価値のあるサービスを展開

最後に大屋氏は、今後のYahoo! JAPANとIDCフロンティアの関係を次のように説明しました。

「Yahoo! JAPANはサービスを提供する企業であると同時に、さまざまなテクノロジーを開発する企業でもあるわけです。そこで開発されたテクノロジーやサービスを私たちが法人のお客さま向けに展開していく。つまり、Yahoo! JAPANが扱っている幅広い技術について、使いやすい形で法人のお客さまにオファーするというのがIDCフロンティアの使命であると考えています。その意味では、今回のプロジェクトは1つのきっかけだと考えていて、これまで以上に両社で連携し、価値のあるサービスを展開していきたいと考えています」⁠大屋氏)

クラウドストレージを利用する際、要件によって注目すべきポイントは変わってくるでしょう。ただ信頼性や可用性は基本となる部分であり、この点に問題があれば当然ながら安心して使うことはできません。

その意味で大量のアクセスに対して安定して対応しているYahoo! JAPANのインフラ上で提供されているという点、そして複数のサーバへデータを分散して書き込む仕組みなどを備えていること、そして多くの企業のインフラを支えてきたIDCフロンティアの実績を考えると、Yahoo!クラウド ストレージは非常に魅力的なサービスの1つであることは間違いないでしょう。

そして、これからYahoo! JAPANとIDCフロンティアが連携してどういったサービスを展開するのか、今後の展開にも注目です。

Yahoo!クラウド ストレージ

URL:http://cloud.yahoo.co.jp/storage/

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