ニッポンのIaaSを牽引するIDCフロンティア

#5 数十万枚~百万枚もの画像配信を行うインフラの秘密とは? アスクルが選んだIDCフロンティアの「分散ストレージサービス」

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数十万~百万枚もの画像ファイルを分散ストレージサービスで配信

――配信している画像の数はどの程度になるのでしょうか。

上村氏:非常に多いですね。1つの商品に対して,サイズの異なる5種類程度の画像を使い分けています。現状で17万アイテム程度の商品を扱っていますが,今後販売する商品も含めると30万アイテム程度になります。さらに写真も商品によっては2~3種類あるため,それらをすべて掛け合わせた程度の写真を使っているということになります。

このように写真を大量に利用しているのは,少しでも写真をきれいに見せてお客さまに訴求したい,印刷されたカタログを見ているようにWebサイトに掲載した写真を見ていただきたいと考えているためです。ただ,場所によって当然画像を表示するスペースの大きさは異なるため,それに合わせた写真を用意する必要があり,どうしても写真の数は膨大になってしまいます。これを自前のサーバで配信していると,どこかで立ち行かなくなっていたでしょうね。

――パフォーマンスというところでは,どのように評価されていますか。

上村氏:具体的に数値で測定したわけではありませんが,自前のWebサーバで配信するよりもはるかに速いと感じています。これだけ重い画像データを入れているWebページにもかかわらず,表示はスムースでストレスを感じることはありません。

LOHACOの通常ページは,今までのアスクルのサイトのページよりも3倍から5倍の数の写真を掲載していますが,それがスムースに表示されていて,お客さまからページ表示が遅いといったご指摘をいただくこともありません。

LOHACOのPC向けWebサイト。クオリティにこだわった写真が多数掲載されている

LOHACOのPC向けWebサイト。クオリティにこだわった写真が多数掲載されている

――パフォーマンス以外の点で,メリットを感じられるところはありますか。

上村氏:まず大量に集客したいといった場合に,トラフィックの増加を意識せずに済むというのは大きかったですね。もし現状のインフラで対応できないということになれば,サーバの追加や回線の増強といった対応を図る必要があります。しかしクラウドサービスであれば,インフラのことを気にすることなく集客に専念できます。

また,お客さまが使われている環境次第ですが,今後はさらに高解像度の画像を使って写真のクオリティを高めていきたいと考えています。そのときに,容量やネットワークの負荷を考えずに済むというのもメリットです。

実績のあるストレージプラットフォームを採用した点を高く評価

――外部のクラウドサービスを使って画像を配信することに躊躇されることはなかったのでしょうか。

上村氏:正直なところ,画像や映像はオンプレミスで持っていても仕方がないのかなと考えています。今回,分散ストレージサービスを利用して改めて実感したのですが,おそらく競合サービスでもCDNや外部のストレージサービスを利用して,ストレスなくWebサイトにアクセスできる環境を整えることが当たり前になると思うんですね。そうすると,オンプレミスで画像や映像を配信していると相対的にとても遅くなるというリスクがあるわけです。

特にLOHACOではクオリティの高い画像にこだわっているため,画像の配信を自前でやっているとサーバやネットワークのことも考えながら進めなければなりません。そういった点を踏まえると,特にセキュリティをそれほど意識する必要がないデータについては,積極的にクラウドを活用していくべきだと思います。

――サービスを選定する際に注意したこととしては,どういったことがありますか。

北岡氏:実は別のストレージサービスを検討していたのですが,そもそも我々のような使い方の実績がなく,また担保される信頼性なども考えると厳しかったんです。一方で分散ストレージサービスは,基盤として使われているのがアメリカで実績のあるBasho Technologiesの「Riak CS Enterprise」ということだったので,それなら大丈夫かなということで選定しました。

上村氏:それとは別に他サービスも検討しました。ただ,他サービスだとは東京リージョンを選択できずネットワークの遅延の懸念があったり,東京リージョンであってもアメリカのパトリオット法※1の対象になったりといくつかリスク要素がありました。そのリスクは大きいと判断し,今回分散ストレージサービスを選択することになりました。

――導入作業でトラブルはなかったのでしょうか。

北岡氏:ほとんどありませんでしたね。実は今回のプロジェクトを担当していただいたベンダーのエンジニアの方が,Amazon S3のAPIに詳しい方だったんですね。分散ストレージサービスで提供されているAPIはAmazon S3互換だったため,作業はすんなり進んだという印象ですね。

上村氏:唯一トラブルらしいトラブルだったのは,最初に画像をアップロードしたときですね。いきなり何十万という画像ファイルをアップロードしたのですが(笑⁠⁠,エラーでアップロードできなかったんです。それでファイルを何回かに分けてアップロードするということがありました※2⁠。

――今後の展開について教えてください。

上村氏:アスクルではLOHACO以外にもいくつかのWebサイトを運営していますが,基本的にフロントのWebサイトで画像を配信しているため,レスポンスが悪いときがあるのではないかという懸念があります。今後はLOHACOだけでなく,アスクル全体で画像のクオリティアップを図っていきたいと考えているので,LOHACOで採用したCDNとクラウドストレージの組み合わせのように,お客さまがストレスを感じることなく高画質の写真を見られる環境を整えていきたいと思います。

――本日はありがとうございました。

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※1)
パトリオット法:米国愛国者法とも呼ばれているアメリカ合衆国の法律。この法律によってクラウドサービスを提供しているサーバが捜査対象となった場合,サービスを継続して利用できなくなる可能性が指摘されている。
※2)
筆者注:3月末から4月にかけて予定されているアップデートにより,この問題が解決されるとのこと。