LinuxCon Japan/ Tokyo 2010の歩き方

第6回 Linuxと出会い,IBMは変わった─Dan Frye

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個人的な成功体験

そんな中,個人的に成功と達成感を感じたことを挙げるとすれば,1つは私のチームのクオートをコミュニティに受け入れてもらったことです。初めてコミュニティに受け入れられた,ちょっとしたクオート・スニペットでしたが,素晴らしい体験でした。そのとき「参加できた」のです。

もう1つは,大手の顧客にLinuxを購入してもらい,本番稼動に成功したことでしょうね。もちろん,うまくいかなかったこともあります。中でも顧客がLinuxのことで初めて非常に動揺して連絡を取ってきたことは,私たちにとって重要な体験でした。顧客が些細なことで動揺することはなく,動揺するのは重要なものが動かないときだからです。

また,長い期間で見た場合は,Linuxを別のチームとしてスタートできたことです。長い時間を経て,今,Linuxは私たちが主流と呼ぶ流れになっており,Linuxはすべての人々に何らかの形で関係しています。これも成功のポイントの1つでした。私たちだけでなく,たとえば営業部門が売上高や顧客数などを見るとき「ああ,自分たちは成功している!」という言葉を発する特定の瞬間というものは実際にはありません。成功というものは時間をかけて蓄積されるものだからです。

現在のLinuxとオープンソースのトレンド

Linux全体の流れとして,Linuxが作業負荷の増加にうまく対応し続けていることは興味深いですね。10年前,私たちは顧客に対してパイロット版のDNSサーバ,LANサーバなど,エンタープライズ・システムの端の部分でのみLinuxを使用するように言っていました。ところが次第に,私たちはLinuxがアプリケーション層や検索を実行する重要なWebサーバにも十分耐えうると言うようになりました。そしてこの数年間,私たちはLinuxがエンタープライズ・システムの中核においても十分耐えうると言ってます。初期の頃,私たちは「驚いてください! Linuxが○○に対応しています」と言っていましたが,現在は小声で言うようになりました。

IBMのハードウェアおよびソフトウェア・ビジネスを指揮するSteve Millsは,Linuxをできる限り早くエンタープライズ・システムの中核にもたらすことが自分の仕事である,と2000年に私に言っています。つまり,そうすることは私たちの戦略に含まれていました。市場規模の面では,もちろん正確な数字は思い出せませんが,私たちはLinuxがエンタープライズ対応になれば,市場にかなり普及するであろうと考えていました。ご存じのように,Linuxは公衆性と業界中立性を約束しており,ベンダに束縛されていません。Linuxは,UNIXに似たアーキテクチャを持っています。したがって,Windowsは使いたくなく,占有権付きのUNIXではなく,産業向けのUNIXに似たアーキテクチャが欲しい顧客はかなりいるでしょうし,それはLinuxということになります。そのトレンドは続いています。

第2のトレンドは,Linuxが至るところで使用されているということです。ご存じのように,携帯電話,DVDプレーヤー,DVR,交通信号灯,GPSシステム,そしてあらゆる種類の無線システムで使用されており,この分野ではあらゆるところで爆発的に普及しています。LinaroプロジェクトやIntelのPushなどを見ても,この傾向は続いています。従来,組み込み型の分野は非常に専門化したUNIX技術者により実質的にコントロールされていました。現在,この業界はLinuxに集約しつつあります。

第3のトレンドは,デスクトップPCにおけるLinux採用の流れが続いていることです。現状はもっと複雑ですが,Linux搭載のデスクトップPCの数は,明らかに一定して増加しており,新興地域においては初めてデスクトップPCを導入する場合,Linuxを選択するケースが増加しています。私はいずれ既存の市場においても人々はWindowsから移行するようになると思いますが,デスクトップとしてのLinuxは進歩を続けています。

第4のトレンドは? と聞かれれば,私はKVMを挙げます。というのは,Linuxの仮想化技術は急速に競争力を付けており,VMwareの仮想化技術に匹敵しつつあるからです。つまり,Linuxの仮想化は成長しています。KVMはおそらくLinuxに関する現在のIBM技術戦略にとっても最も重要な要素です。KVMは私たちのクラウド戦略の根本をなしています。また,Systemaxに関する私たちの仮想化戦略,VMware,そしてHyper-Vの根本もなしています。私たちのサービスチームはその活用方法を研究していますが,Linuxの仮想化に関して業界で競争力を付けることは私たちの計画の重要な役割となっています。

業界におけるベンチマークを管理しているSPECコミュニティをご存じでしょうか? このコミュニティが,初めて仮想化ベンチマークを発表しました。そして,第1回の勝者として最高のベンチマークの結果を出したのが,KVMを用いたIBMのベンチマークでした。私のチームにとっては,それがおそらく最も重要な重点分野です。

LinuxCon Japanでお伝えしたいこと

私はLinuxCon Japanで,LinuxとIBMの過去と未来に関して話す予定です。IBMがLinuxとの関わりで何を学び,Linuxがどのように機能し,いかに成功したかについてお話しします。日本はこのことを話すのに最高の舞台の1つです。それは,IBMのLinux戦略に最初に興味を持ってくれた国の1つが日本だったからです。私たちは1999年,社内で「IBM Linuxサミット」の開催を始めましたが,1回目はオースティンで,第2回は東京で開催されたのです。私たちはこのサミットの開始以来,Linuxを通じて日本,そしてアジアと関わってきました。

私は,自分たちが学んだことに関して話します。IBMはLinuxに対して変わりました。私たちのクライアントも,そしてビジネスも変わりました。それに関して話します。また,将来に向けた道筋についても話す予定です。LinuxはIBMの将来の一端を担っています。私たちは,それなしに成功することはできません。LinuxはIBMのハードウェア・ビジネス,ソフトウェア・ビジネス,そしてサービス・ビジネスに不可欠です。そして,IBMはLinuxに関する強力なビジョンを持っています。現在このビジョンは,私たちのすべてのビジネスの骨格に含まれています。私たちは,もはやLinuxを扱うべきか,あるいはLinuxをどのように扱うべきかなどについて議論することはありません。どれだけ早く,どのクライアントに対して,ということを議論するだけです。

日本の皆さんへ

日本で毎年LinuxConを開くことは極めて重要なことだと思います。日本の顧客は非常に要求が厳しく,高い品質,信頼性,そしてサービスを求めています。Linuxが日本においてもっと競争力をつけて成功すれば,それは世界中のユーザが,そして私たちIBMが利用することができるのです。そのために私は日本に行くことを非常に楽しみにしています。私が日本のある会議で基調講演を行ってから数年が経ちました。今後は毎年来訪するということも十分ありえると期待しています。

Linuxは,私たちのクライアントが信頼できるプラットフォームであり続けます。これはIBMだけではなく,日本企業の多くを含む業界全体の見解です。これらコミュニティがLinuxをミッションクリティカルなエンタープライズ対応のオペレーティング・システムにするために協力して取り組んでいます。

そして,日本で私はLinuxの素晴らしさについて皆さんにお聞きしたい。それを元に,私たちがLinuxをより良いものにするためにやるべきことを知りたいのです。Linuxの素晴らしさ,そしてその成功例について聞きたいのは,その情報が市場の信頼を促し,売り上げを伸ばすために役に立つからです。この点については,プレスの方にも協力していただきたいですね。

また逆に,Linuxに何が足りないかも聞きたいし,知りたいと思っています。私の部下の開発者はもちろん他のLinux開発者も,足りない部分を改善するために取り組んでいるのです。

LinuxCon Japan:Dan Fryeさんのセッション
10+ Years of Linux at IBM
URL:http://events.linuxfoundation.org/2010/linuxcon-japan/frye

著者プロフィール

Dan Frye

IBMオープンシステム開発担当バイスプレジデント。IBMのLinux開発チーム(IBM Linux Technology Center:LTC)で,システム&テクノロジ グループにおけるクラウド コンピューティング技術,およびIBMシステムのサーバやストレージのプラットフォーム管理開発の責任者を務める。