パフォーマンス向上でナニに使える? OpenBlocks Aファミリによるサーバ実力診断

第1回「手のひらサーバ」ARM搭載モデル登場で従来製品のパフォーマンス不足を払拭

12年にわたり6万台を出荷した「手のひらサーバ」

連載1回目の今回は、OpenBlocksとはどういう製品か、また新製品はどういった特徴を持っているのかを、開発・販売元のぷらっとホーム⁠株⁠のお話を交えて紹介します。

OpenBlocksは同社が2000年から販売しているサーバで、最大の特徴はそのコンパクトな本体です。⁠手のひらサイズ」であるため設置場所を選ばず、さらに耐熱性、防塵性、堅牢性が高く低消費電力であることから、配電盤の中ですら設置できるなど、サーバルームやオフィスにとどまらず幅広い用途に対応する柔軟なサーバとなっています。

シリーズ累計で実に6万台を出荷し、いかに幅広く活用されているかは豊富な導入事例からうかがうことができます。過酷な環境下でも安定して動作するため、工場などの現場や机のすきま、電気通信の配線盤、空調の不十分な小規模オフィスや床下への設置も可能です。そして故障の少ない信頼性の高さから、ISPや通信会社への導入実績もあります。

用途の中心となるのは監視や制御ですが、工場の検査環境にあるリモート制御サーバ、VPNサーバ、ネットワークアクセスコントロール(NAC⁠⁠、認証サーバ、時刻配信サーバ、システム監視、シンクライアント端末用のOS配布サーバへの組み込みなどに加え、ほかの機器やセンサーとの連携によってルータ兼各種サーバ、無線LANアクセスポイント、防災用サーバなど多彩な活用が可能です。

企業向けサーバ初となるARM搭載モデル

2012年6月7日、このOpenBlocksに「OpenBlocks Aファミリ」が登場。製品モデルとして「OpenBlocks AX3」「OpenBlocks A6」が加わりました。Aファミリ最大の特徴は、ARMコアを搭載する企業向けサーバであることです。⁠ARMの搭載によって、これまでの『手のひらサイズで高堅牢、低消費電力、でもパワー不足』というイメージを払拭したかった」と製品開発に携わった同社製商品事業本部の木村友則氏が言うように、処理速度が大幅に向上しています。

ぷらっとホーム(株⁠⁠ 製商品事業本部 技術部 マイクロサーバ技術課 課長 木村 友則氏
ぷらっとホーム(株) 製商品事業本部 技術部 マイクロサーバ技術課 課長 木村 友則氏

デュアルコア搭載ハイエンドモデル「OpenBlocks AX3」

ハイエンドモデルのOpenBlocks AX3(写真1)では、CPUをデュアルコアMarvell Armada XP 1.33GHz(ベースアーキテクチャ:ARM Cortex-A9)とし、1GBのメモリをオンボードに搭載することで大幅なパフォーマンス向上を実現。低消費電力のIAサーバとのリプレースも可能になっています。インターフェースでは、SATAポート×1、eSATAポート×1、RS232Cポート×2、USBポート×2、さらにギガビットイーサ(GbE)を4ポート搭載するモデルも用意されており、SO-DIMMやMini PCI Express拡張ソケットも装備しています(写真2、3⁠⁠。FPU機能の搭載や周辺環境温度45度までの動作保証、Oracle Java搭載モデルのラインナップなどによって、従来機種以上に多様な環境へ対応します。価格は59,800円からと低く抑えられていることも特徴です。

写真1 OpenBlocks AX3
写真1 OpenBlocks AX3
写真2 豊富なインターフェースを備える
写真2 豊富なインターフェースを備える
写真3 OpenBlocks AX3の内部
写真3 OpenBlocks AX3の内部

シングルコア搭載エントリーモデル「OpenBlocks A6」

一方、エントリーモデルのOpenBlocks A6(写真4)では、CPUにシングルコアMarvell Armada 310 600MHz(ベースアーキテクチャ:ARM9⁠⁠、512MBのオンボードメモリを搭載し、インターフェースにはSATAポート×1、GPIO(8ビット⁠⁠、RS232Cポート×2、USBポート×1を標準で装備しています。また、周辺環境温度55度まで動作保証されており、Oracle Java搭載モデルを選択することもできます。シンプルな構成にしたことで、低消費電力はもちろん、発熱量も非常に低いことが特徴になっています(写真5⁠⁠。価格は36,800円からと、導入しやすい価格帯です。

写真4 OpenBlocks A6
写真4 OpenBlocks A6
写真5 内部は非常にシンプルで故障が起こりにくい
写真5 内部は非常にシンプルで故障が起こりにくい

コンパクトさと処理速度の速さによる広範な活用性

多彩なニーズに応える2種類の「OpenBlocks」

OpenBlocksの従来モデルでは、ポーリングや情報収集エージェントなどのネットワーク監視、DNS・DHCP・NTPといったインフラ用サービス、そして小規模環境向けの各種アプライアンス製品のベースハードウェアとしての用途が中心でしたが、より高性能となった新製品は、大量のサーバが必要な企業や、高い処理性能を必要としながらもIAサーバの消費電力や発熱の問題、ファンがあることなどにジレンマを抱えている企業などに有効と言えます。

たとえばOpenBlocks AX3では、Webのフロントエンドサーバ、HTTP ProxyやReverse Proxyなどの代理アクセス、IPS・IDSなどのパケット解析を必要とするセキュリティ対策、IP-PBX、NASヘッド、メール中継など、従来以上に広い用途に対応します。

またOpenBlocks A6は、コンピュータは必要だがPCである必要はないという企業、安価で壊れにくく、単純な作業を淡々と処理するマシンを必要としている企業に最適と言えます。具体的には、BEMS(ビルエネルギー管理システム)や、制御機器との接続によるデータロギング、M2Mなどに有効です。もともと多彩な業種・職種で活用されていることもあり、ターゲットとするユーザ層も基本的に従来モデルから変更はなく、そこでさらなる高みを目指すとしています。

アプライアンス製品の開発にも有効、サポートも提供

ぷらっとホームは、今回のARM搭載ラインナップの拡充に伴い、アプライアンス製品「EasyBlocks」ファミリも「EasyBlocks Enterprise」⁠EasyBlocks Webキャッシング向けProxyモデル」⁠EasyBlocks Webフィルタリング向けProxyモデル」の3モデルを発表しています。こういったアプライアンス製品のベースハードウェアとしての用途においても、ソフトウェア開発・販売企業などがこれら新製品を活用することで、より低コストでスムーズに商品開発ができるようになります。

また、ユーザ向けとVAR/SIer向けに「OpenBlocksサポートサービス」の提供を開始したことも大きな特徴です。

ユーザ向けには、OSサポートや導入支援、設定・運用の問い合わせなどをパッケージした「基本サービス」と、オンサイト、プリインストール、設定・運用などをニーズに合わせて提供する「拡張サービス」を用意しています。

VAR/SIer向けには、保証対象範囲の拡張、仕様変更・製品終息情報やファームウェア更新情報の案内などを提供する「パートナーサポートサービス」と、開発およびOS・ソフトウェア導入の支援、キッティングなど、トータルなケアを行う「拡張サービス」を用意し、サポート体制を充実させました。

性能を追求したARM搭載「手のひらサーバ」開発秘話

放熱対策をはじめ、多くの課題を克服

同社が今回のOpenBlocks新製品を企画したのは2年ほど前です。しかし、ARMを搭載するには多くの苦労があったといいます。OpenBlocks AX3では、たとえば放熱対策が挙げられます。ARMアーキテクチャには低消費電力、低発熱のイメージが強くありますが、OpenBlocksはサーバ用であるため、4つのGbEポートやSATA、USBといったさまざまなインターフェースを装備しています。このため、やはり無視できない発熱があったそうです。

安全規格の1つであるUL規格には「人が触れる場所は70度を超えてはならない」という制約があるため、OpenBlocksではパーツの配置などを工夫したのはもちろん、専用設計の大型ヒートシンクでPCB(プリント基板)を上下から挟み込む設計としました。これにより、ファンを内蔵することなく放熱の問題をクリアし、周辺環境温度45度の動作保障を達成しました。

また、インターフェースの配置においても、従来モデルのユーザからの意見を参考にインターフェースをすべて前面に配置し、設置後のアクセスを容易にしました。スペースファクタにおいても、1Uラックに4台収まる幅・高さで筐体サイズを設計しました。ラックマウント用オプションも今後発売する予定だといいます。

OpenBlocks A6では、採用されているCPUのARMアーキテクチャが持つイメージそのままに超低発熱であったため、動作中でも温度の上昇をほとんど感じることがなく、OpenBlocks AX3のような発熱対策は不要だったといいます。またインターフェースは、製品価格を抑えるために必要最小限にとどめています。ただし、HEMS/BEMS系用途や制御機器などと接続しての用途を想定していることからGPIOを8ビット搭載するとともに、これらの用途で要望の多いシリアルを2ポート搭載しました。

パフォーマンスを大きく改善したことでリプレースを推進

新たにARMをCPUに採用したことで、パフォーマンスが大きく向上したOpenBlocks。⁠従来モデルは、コンパクトな筐体で消費電力が低く、防塵性・堅牢性に優れている反面、パフォーマンスが低いという欠点がありました。そうした欠点を改善したOpenBlocks AX3は、低消費電力のIAサーバと遜色のない性能を発揮します。

一方、高いパフォーマンスを必要としないユーザ様からは、1つのEthernetポート、大容量ストレージ、シリアル/GPIOなどの制御用I/Oを備え、しかも低コストな製品を求めるご意見を多く頂戴しました。その意見をすべて反映したのがOpenBlocks A6です。また両製品とも、ストレージを従来のCFからSATA SSD(2.5インチ/Half Slim)としました(写真6⁠⁠。より高いストレージ性能が必要とされる用途にも対応しています」と木村氏は言います。

OpenBlocksには、2003年、2004年に導入したユーザが今でも使い続けているという実例があり、堅牢性や長寿命を示す証となっていますが、その反面、なかなか買い換えが進まないといいます。しかし、マイクロサーバの需要も高まっていることから、熱に強く低消費電力で、しかもよく使われる用途で十分なパフォーマンスが出るOpenBlocksの新製品への意気込みも強いようです。

次回からは、パフォーマンスが向上したOpenBlocks Aファミリの具体的な用途やベンチマークなどを紹介していきます。

写真6 SSDの内蔵が可能
写真6 SSDの内蔵が可能
表1 OpenBlocks Aファミリのおもな仕様
製品名OpenBlocks AX3
名称OpenBlocks AX3 イーサxポート
型番OBSAX3/x/*(⁠⁠x」には1000Base-T 搭載ポート数(2または4⁠⁠、⁠*」にはパッケージ型番が入ります)
参考価格(税込)59,800 円~
CPU ARMADA XP デュアルコア(ベースアーキテクチャ:ARM Cortex-A9⁠⁠ 1.33GHz
メインメモリ1GB(DDR3)
FLASH ROM(NOR)128MB(NOR)
インターフェース
  • 内部SATAポート×1(2.5インチHDD/SSD、Half SlimSSDを内蔵可。ただし、別途マウントキットが必要)
  • 外部eSATA ポート×1
  • 1000Base-T×4(OBSAX3/2/* は×2)
  • USB 2.0×2
  • RS232C×2
  • mini-PCI Express x1スロット×1(OBSAX3/4/*のみ)
  • SO-DIMMスロット×1最大2GB追加可(OBSAX3/4/*のみ)
  • JTAG×1
外形寸法101.0(W)×142.1(D)×41.0(H)mm(ゴム足含まず)
重量(本体のみ)約370g(OBSAX3/2/* は約350g)
電源ACアダプタ12V
消費電力アイドル時10.0W /最大13.0W(OBSAX3/2/*はアイドル時9.0W/最大12.0W)
動作条件温度:0-45℃、湿度:20-80%Rh(結露なきこと)
出荷時標準OSDebian GNU/Linux 6.0
製品名OpenBlocks A6
名称OpenBlocks A6
型番OBSA6/*(⁠⁠*」にはパッケージ型番が入ります)
参考価格(税込)36,800 円~
CPU ARMADA 310(ベースアーキテクチャ:ARM9⁠⁠ 600MHz
メインメモリ512MB(DDR2)
FLASH ROM(NOR)64MB(NAND)
インターフェース
  • 内部SATAポート×1(2.5インチHDD/SSD、Half Slim SSDを内蔵可。ただし、別途マウントキットが必要)
  • 1000Base-T×1
  • USB 2.0×1
  • RS232C×2
  • GPIO×1
  • JTAG×1"
外形寸法81.0(W)×114.5(D)×38.0(H)mm(ゴム足含まず)
重量(本体のみ)約205g
電源ACアダプタ5V
消費電力アイドル時4.5W /最大6.0W
動作条件温度:0-55℃、湿度:20-80%Rh(結露なきこと)
出荷時標準OSDebian GNU/Linux 6.0

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