WebエンジニアにとってのIoT ~Physical Webが拓く未来~

第1回 Physical Webの概要

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PhysicalWebで世界はどのように変わるのか

これまで説明した通り,Bluetooth LEを利用したUriBeaconとコンテンツに直接アクセスする前にメタデータの解決を行うリゾルバがあるだけで,ネットワークのフローに関して言えばそれほど複雑な話ではありません。

これを利用するオーソドックスなブラウザアプリケーションの一つの形態としては,次のように非常にシンプルなものが想像できるのではないでしょうか。

PhysicalWeb Browserのシンプルなユースケース

UriBeaconが普及した世界の中を,スマートフォンを持ったユーザが歩いて行きます。ユーザのスマートフォンの中にはPhysicalWebに対応したブラウザアプリケーションがインストールされているとします。

図8 UriBeaconが普及した世界の中をスマートフォンを持ったユーザが歩いて行く

図8 UriBeaconが普及した世界の中をスマートフォンを持ったユーザが歩いて行く

このアプリがURLを拾いメタデータの解決を行います。ユーザがアプリを開くと,次のように周囲の情報がリストアップされていることになります。

図9 ユーザがアプリを開くと周囲の情報がリストアップされている

図9 ユーザがアプリを開くと周囲の情報がリストアップされている

ユーザは興味のある情報があれば,そのセルをタップしWebブラウザで情報を表示します。

図10 セルをタップしWebブラウザで情報を表示する

図10 セルをタップしWebブラウザで情報を表示する

非常にシンプルなユースケースではありますが,これが結構世界を変える一手になるのでは,と筆者は感じています。

3種類のイノベーション

新しい体験をユーザに提供する際に重要な点を,

  • どのようなネットワークで
  • どのようなデータを
  • どのように表示するか

この3点のそれぞれにどう革新があるかに絞り,PhysicalWebに当てはめて考えて行きましょう。

ネットワークに関しては既に説明した通り,PhysicalWebの場合はUriBeacon, メタデータリゾルバが,これまでのサービスと比べたときに新しいポイントになります。

では,これらのネットワークを使ってやりとりされるデータは,どのようなものになるでしょうか。

UriBeaconによって消費者は,そのロケーションにマッチした情報と言うものを検索せずとも取得することができるようになります。

  • バス停に着いたら,バスが何分後にくるのか時刻表を見たい
  • レストランに入ったらメニューを見たい
  • デパートに入ったら売り場案内を見たい
  • 駅の改札から出たら案内板を見たい

このように「まさにその時間その場所で必要な情報」は,ビッグデータをクラウド上で駆使せずともある程度決まっている,と言うケースは多々あります。

こう言った種類の情報は,今までのインターネットの世界とは相性が良くないデータだったと言えるのではないでしょうか。

インターネット普及期における,いわゆるホームページブームの時期には,⁠インターネットにWebサイトを公開することで,世界中の人に簡単に見てもらうことが出来る」と言う売り文句もよく見かけたことと思います。

普遍的な情報の公開,全国展開してるチェーン店の紹介や通信販売などであれば特に相性が良かったことでしょう。

ですが,その一方で,非常に限定された特定の位置にいる人にしか役に立たないデータなどは,インターネット上に置いても効果は薄く,商業的動機にもつながりにくかったと言えます。それよりも,看板やポスターなどのアナログなメディアで情報を提供したほうが,集客効果や利便性などが高かったわけです。

PhysicalWebのような技術は,このような種類のデータのデジタル化を押し進めることとなり,静的な情報をデジタル化して提供するだけの変更にとどまらず,動的なサービスを差し込むきっかけにも成り得ます。

たとえば,バス停であれば時刻表だけでなく,電車のホームの電光掲示板のように,次にバスがくる時間を表示することも可能になるでしょうし,その際に電光掲示板ほどの大きな設備投資は必要ありません。

このように,時間や場所に最適化されたハイコンテキストな情報を扱うサービスを,いかにうまく提供するかがポイントになってくると思われます。

著者プロフィール

加藤亮(かとうりょう)

ソフトウェアエンジニア。

比較的プロトコルとフロントエンド寄り。

2014年7月よりリクルートテクノロジーズアドバンスドテクノロジーラボ所属。