WebエンジニアにとってのIoT ~Physical Webが拓く未来~

第1回 Physical Webの概要

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バショに限らず様々なモノも-Real-World Wide Webへ

これまではわかりやすさのために,まずは「バショ」に紐づいた情報を例に出して技術の特性を紹介してきましたが,「バショ」に限らない応用も色々と考えられます。

たとえば「ヒト」について考えてみましょう。

スマートフォン,あるいは社員証や入館証のようなネームプレートが,その持ち主のプロフィールページを指し示すURLを発信していたとしたらどうでしょう。

図11 持ち主のプロフィールページを指し示すURLを発信

図11 持ち主のプロフィールページを指し示すURLを発信

図12 Facebookなどのプロフィールページへ

図12 Facebookなどのプロフィールページへ

勿論プライバシーの問題もあるので,イベント会場や会議などプライベートスペースやセミパブリックスペースには限定されるでしょうが,そのような場所でこのような機能が使えたら,名刺交換などいらなくなりますよね。

近くに居る人や近くを通り過ぎた人の情報は既に手元に表示されており,必要ならそこからフレンド申請など出来るわけです。

このような応用例は,ここまで挙げた「バショ」「ヒト」以外でも,様々な「モノ」それぞれについて考えられて行き,「全てのモノがURIを発信する世界」に向かって,業界は進んで行くのかもしれません。

UriBeaconのドキュメントにもReal-World Wide Webと言う言葉が使われていて,そう言う世界を目指していることがわかります。

丁度W3Cにおいても,IoTの世界の中でどのようにWebの技術を利用していくかという議論が始まっており,Web of Thingsというテーマが掲げられています。

情報消費行動の変革-BROADCAST,PULL,PUSH,そしてPICK

インターネット以前の世界での主要なメディアはテレビ,ラジオや雑誌などでした。これらは同じコンテンツを一斉に世界中に発信し,消費者はチャンネルを選ぶという行為によってコンテンツを消費していました。BROADCASTの時代です。

その後インターネットの登場により,⁠見たいものを見たいときにみる」PULLの時代がやってきたと言われています。情報の海から目当てのものを探すために,ポータルサイトや検索エンジンがキラーコンテンツとなって行きました。

そして,いやまスマートフォンというインターネット端末を人々が常に持ち歩く時代になりました。同時に,いわゆる「つぶやき」⁠イイネ」など,マイクロ化され頻繁に更新されるタイプのコンテンツの流行もあり,PULL型の時代のように一日一回ネット巡回というようなスタイルでは新鮮な情報の回収が間に合わなくなり,一部の情報は向こうからやってくるPUSHの時代がやってきました。

そしてPhysicalWebのような技術の普及によってやってくるのが,「今,必要な情報やサービスは,その場に落ちている」という世界です。これはPICKと呼べる,新たな情報の消費行動のモデルになるのではないでしょうか。

近未来映画のような世界へ

では最後に,拾った情報を「どのように表示するか」に注目してみましょう。今回は最も一般的な利用形態として,スマートフォンのアプリとしての例を挙げて説明を行ってきましたが,こう言ったインフラが整った世界においては,ひょっとしたらウェアラブルの有用性が増してくるのかもしれません。

周囲にある情報が欲しいときに,検索する必要がないどころか,わざわざポケットからデバイスを出す必要すらなく,手元を見たら時計型デバイスに情報が表示されている,あるいは手元すら見る必要なく,グラス型のデバイスで表示されていたらどうでしょうか。

現状のウェアラブルデバイスと言うものは,インターネットのない時代のパソコンのようなもので,真価を発揮できていないのかもしれない,と個人的には感じています。今とは違うタイプのネットワークインフラが整ってきた世界では,また違う可能性があるのではないでしょうか。

2015年1月にはMicrosoftによるHoloLensの発表などもあり,これらの分野でのイノベーションは着実に進んでいます。PhysicalWebのような分野とのシナジーによって,どこかで大きなブレイクスルーがくるのではないかと期待が持たれます。

次回以降について

次回以降では,実際に動かすためのコードサンプルなどを交え,今回省略した技術的な詳細の話や,もっと掘り下げたセキュリティをはじめとする課題や応用の可能性などを紹介していければと思います。よろしくお願いします。

著者プロフィール

加藤亮(かとうりょう)

ソフトウェアエンジニア。

比較的プロトコルとフロントエンド寄り。

2014年7月よりリクルートテクノロジーズアドバンスドテクノロジーラボ所属。