Ubuntu Weekly Recipe

第271回 WindowsをPostScriptプリンターにしてUbuntuから快適印刷

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Windowsマシンの用意

今回のRecipeでは,Ubuntuと,ネットワーク共有できるWindowsマシンが1台必要になります。読者の皆さんはそのWindowsマシンに管理者権限を持っていて,なおかつWindows Vista以降の場合は,UAC(ユーザーアカウント制御)を一時的にオフにできる必要があります。具体的に言えば,次のことができなければなりません。

  • アプリケーション(Ghostscript,RedMon)のインストールができる
  • 印刷できるプリンターアイコンを持っている,あるいは作ることができる
  • そのプリンターアイコン以外に,自分でプリンターアイコンを追加できる
  • 追加したプリンターアイコンを「共有」できる

自分のデスクトップのPCについては管理者権限を与えている組織も多いとは思います。しかし,Active Directoryによる集中管理を行なっており,一般ユーザーにはアプリケーションの追加・削除も禁止しているような組織も少なからずあります。そういった場合,組織の中で相談して,ネットワーク上で見えるどこかに,今回のRecipeで紹介するようなプリンターアイコンを追加させてもらうことができるかどうか確認しましょう。

なお,物理的にマシンが足りなくても,WindowsのライセンスとIPアドレスが1つずつあれば,Ubuntuマシン内にWindowsの仮想マシンを1台分立てて,それをBridgedネットワークで直接外に見せることで同じことができます。逆に,組織のポリシー上Windowsを使うことが必須であっても,仮想マシンでUbuntuを使うことが禁止されていなければ,その「親マシン」であるWindowsを今回のRecipeに用いて,Ubuntu側のネットワークをBridgedにすれば,仮想マシン上のUbuntuから親マシンのWindowsを経由して印刷は可能です注4⁠。

以降の手順で最終的に印刷したいプリンターのアイコン名注5が必要になります。ここでは筆者の環境にあわせて⁠Brother DCP-J940N Printer⁠として説明しますが,実際のプリンター設定によって適宜読み替えてください。

注4)
この場合,IPアドレスを1個余分に消費することになるので,組織の管理者に確認しておきましょう。
注5)
実際に印刷したいプリンターをWindowsの「デバイスとプリンター」で見たときに,そのプリンターアイコンの直下に表示されている名称のことです。右クリックしてプリンターの「プロパティ」を表示し,⁠全般」タブの一番上にあるテキストボックスの値からコピー&ペーストすることで確実な名称を得ることができます。

Windows版のGhostscriptのインストール

Ghostscriptは,Artifix社が開発しているPostScript互換インタープリターです。GNU Affero General Public License (AGPL)/Artifix Commercial Licenseのデュアルライセンスですが,今回の利用であればAGPLで困ることはないので,自分のWindowsが32bitか64bitかに合わせて,Ghostscript 9.07 for Windows(32 bit)か同(64 bit)の適切なほうを選んでダウンロードしましょう。

ダウンロードしたファイルは*.exeの実行可能形式になっているので,右クリックで「管理者として実行」を選んで実行しましょう(図3⁠⁠。

図3 Ghostscriptのインストーラー起動

図3 Ghostscriptのインストーラー起動

基本的にはウィザードの通り進んで行けばよいのですが,最後のところの「Generate cidfmap for Windows CJK TrueType fonts」はオンにしておきましょう(図4⁠⁠。

図4 ここの上のチェックボックスをオンに

図4 ここの上のチェックボックスをオンに

インストールが正常に終わったかどうか,コマンドラインを起動して,以下のように確かめてみます(筆者の環境はWindows 7 64bitなので実行ファイル名がgswin64となっています⁠⁠。

C:\Users\naruhiko>cd "\Program Files\gs\gs9.07"

C:\Program Files\gs\gs9.07>dir
 ドライブ C のボリューム ラベルは Windows7_OS です
 ボリューム シリアル番号は XXXX-XXXX です

 C:\Program Files\gs\gs9.07 のディレクトリ

2013/04/06  19:40    <DIR>          .
2013/04/06  19:40    <DIR>          ..
2013/04/06  19:40    <DIR>          bin
2013/04/06  19:40    <DIR>          doc
2013/04/06  19:40    <DIR>          examples
2013/04/06  19:40    <DIR>          gs
2013/04/06  19:41    <DIR>          lib
2013/04/06  19:40            60,398 uninstgs.exe
2013/04/06  19:40    <DIR>          zlib
               1 個のファイル              60,398 バイト
               8 個のディレクトリ  190,994,268,160 バイトの空き領域

C:\Program Files\gs\gs9.07>cd bin

C:\Program Files\gs\gs9.07\bin>gswin64 ..\examples\tiger.eps

GhostscriptのexamplesフォルダーにはPostScriptやEncapsulated PostScript(EPS)のサンプルがいくつかおいてあるので,適当に開いてみましょう。Ghostscriptにファイル名だけを指定すると,レンダリング結果は画面に表示されます。図5はtiger.epsを開いたところです。

図5 tiger.epsを開いてみたところ。正しく表示されている

図5 tiger.epsを開いてみたところ。正しく表示されている

次に,Windows版Ghostscript専用の「ドライバー」であるmswinpr2が正しく動くか確認します。このドライバーは「Windows GDIを叩いてプリンターに出力する」という特別なドライバーです。さきほどに引き続いて,次のようにタイプしてください。

C:\Program Files\gs\gs9.07\bin>gswin64c -sDEVICE=mswinpr2 -dNoCancel -dSAFER -dBATCH -dNOPAUSE -sOutputFile="%printer%Brother DCP-J940N Printer" ..\examples\tiger.eps

-sOutputFileの⁠%printer%⁠に続くプリンター名は皆さんの環境で印刷したいプリンターアイコン名で適宜置き換えてください。もし,印刷したいプリンターがそのWindows環境のデフォルトプリンターならば,-sOutputFileの指定自体を省略できます。これで先ほど表示された虎の絵がプリンターから正しく出力されたらGhostscriptのインストールは成功です。

なおGhostscriptのbinフォルダーの下にはgswinNN.exeとgswinNNc.exeとがありますが(NNは32ビットか64ビットか⁠⁠,基本的にはgswinNNc.exeを使うもの,と思ってください。gswinNN.exeは対話モードやエラー出力を別ウィンドウに出すもので,過去の互換性のために残っています。

RedMonのインストール

RedMonの配布ページに最新版のバージョン1.9のダウンロードリンクがあります。ここからZIPファイルをダウンロードして,適当な方法で解凍しましょう注6⁠。なおバージョン1.7へのリンクもありますが,これはWindows 7や64ビット版に対応していないので古い環境を利用する人向けです。

注6)
筆者が試したところ,ExplorerのZIP解凍機能を用いると一部のファイル(具体的にはヘルプファイル)が正常に解凍できないということがあったので,もしうまくいかないようだったら別の解凍方式を試してみてください。

解凍したフォルダーにあるインストール用ファイルのうち,自分の環境にあったほう(筆者の場合は64ビット版)のインストーラを右クリックで「管理者として実行」します(図6⁠⁠。

図6 RedMonを展開したフォルダーでインストーラを実行

図6 RedMonを展開したフォルダーでインストーラを実行

基本的にはYesで答えていけばOKなはずです。

著者プロフィール

おがさわらなるひこ

流離のプリンター愛好家。(株)ミライト情報システム所属。印刷技術を中心に,フリーでオープンなデスクトップ環境の向上のためにあちこちに顔を出しています。

Twitter@naru0ga