Ubuntu Weekly Recipe

第373回公式フレーバーとなったUbuntu MATE 15.04のポイント

今回は新たに公式フレーバーになったUbuntu MATE 15.04の変更点をおさらいします、と言いたいところですが、基準となるバージョンを何にすれば良いのかよくわからないので、ざっくばらんに解説します。Raspberry Pi 2にインストールする方法も紹介します。

公式フレーバーと非公式フレーバーの違い

Ubuntu MATEはこの15.04から公式フレーバーになりました。最初に登場したのは14.10ベースで、その後14.04ベースが登場してそちらに開発の舞台が移りました。リリース後も継続して開発、というのは公式フレーバーでは困難なため、通常は行いません。ちなみに開発というのは新規のパッケージを追加したりすることです。非公式フレーバーではPPA経由で新しいパッケージのインストールなどが行え、その開発の成果はこの15.04にも取り込まれています[1]⁠。

Ubuntu MATEは当然のことながら今後の開発が進むわけですが、その成果は14.04と15.10に取り込まれていくことになります。つまりは公式フレーバーと非公式フレーバーの違いはそこにあるわけです。

開発面ではなくインフラ面で見ると、公式フレーバーのメリットは絶大です。一番大きいのはisoイメージの配布でしょう。公式フレーバーだと世界各地にミラーがありますが、非公式フレーバーだと自前で用意する必要があり、絶対的に数が少なくなります。サーバーと回線を用意するのは即座にコストに直結します。

MATEのバージョン

MATEのバージョンは1.8であり、Ubuntu MATEの初リリースから変わっていません。

余談ですが次のバージョンは1.10であり、本稿執筆時点で現在開発が進んでいます。このペースだと15.10からは1.10になるものと予想されます。

ダウンロードとインストール

ダウンロードはダウンロードのページから行ってください。14.04、15.04、Raspberry Pi 2のイメージの3つから選択できますが、今回は15.04にします。

インストール方法はUbuntuや他のフレーバーと同じなので省略します。

CloudTop

Ubuntu Minimalからインストールした場合、⁠Ubuntu MATE cloudtop]というタスクがあることに気がつきます図1⁠。これはデフォルトの[Ubuntu MATE desktop]から、CompizやローカルのPCでしか使用しないようなパッケージなどを削除したものであり、その名のとおりクラウド上にインストールするデスクトップ環境を意図しているものと思われます。

図1 Ubuntu Minimalからインストールした際に表示されるタスク(定義済みソフトウェアコレクション)
図1 Ubuntu Minimalからインストールした際に表示されるタスク(定義済みソフトウェアコレクション)

インプットメソッド

Ubuntu MATEにはインプットメソッドはありません。よって、FcitxなりIBusなりお好きなものをインストールすると良いでしょう。Fcitxの場合は、端末を起動して以下を実行し、一度ログアウトして再ログインすると使用できるようになります。設定方法などはwikiも参考にしてください。

$ sudo apt-get install fcitx fcitx-mozc

ATOK X3が眠っている場合、復活させるのも良いかもしれません。が、なにせ古いのでインストールは一筋縄では行きません。簡単にインストールできる方法を同人誌に書いたので、適宜参照いただければと思います[2]⁠。

ついでに筆者は最近libkkcにハマっており[3]⁠、この原稿もfcitx-kkcで書いています[4]⁠。主としてFedoraで採用しているので、ご存じの方もいるでしょう。インストール方法は筆者のブログで紹介しています[5]⁠。Mozcと比較すると若干劣る部分は認めなくてはいけないものの、わりとスムーズに入力できています。

MATE Tweak

[システム][設定][ルック&フィール][MATE Tweak]で起動するMATE Tweakは、その名のとおりMATE設定を簡単にカスタマイズできます。

[デスクトップ]図2ではデスクトップに置けるアイコンを、⁠インターフェイス]図3ではユーザーインターフェースの設定を、⁠ウィンドウ]図4ではボタンレイアウトやウィンドウマネージャーの変更ができます。

図2 デスクトップ
図2 デスクトップ
図3 インターフェイス
図3 インターフェイス
図4 ウィンドウ
図4 ウィンドウ

順番は前後しますが、⁠ウィンドウ]では[Marco][Compiz]の切り替えができ、しかも切り替えたと同時に動作するようになります。すなわちログアウトと再ログインは不要です。これはなかなかに驚くべき機能です。ボタンレイアウトも、Unityと同じ左か、デフォルトの右かを選択できます。

[インターフェイス]で驚くべきは、パネルレイアウトを8種類から選択できることです。では、8種類全て見て行きましょう。

[MATE Desktop]図5は、デフォルトと比較して右上下のアイコン(電源とごみ箱)がありません。

図5 MATE Desktop
図5 MATE Desktop

[Ubuntu MATE]図6はデフォルトです。

図6 デフォルトのUbuntu MATE
図6 デフォルトのUbuntu MATE

[Ubuntu MATE with MATE Menu]図7は、Ubuntu MATEをベースにMATE Menuというメニューに置き換えています。

図7 Ubuntu MATE with MATE Menu
図7 Ubuntu MATE with MATE Menu

[Redmond]図8は、言ってしまえばWindows風です。

図8 Redmond
図8 Redmond

[Redmond with MATE Menu]図9は、RedmondをMATE Menuに置き換えたものです。

図9 Redmond with MATE Menu
図9 Redmond with MATE Menu

[Eleven]図10は、名称の由来はわかりませんが[6]下にドックが表示され、Mac風であることがわかります。

図10 Eleven
図10 Eleven

[Eleven with MATE Menu]図11は、ElevenをMATE Menuに置き換えたものです。

図11 Eleven with MATE Menu
図11 Eleven with MATE Menu

[openSUSE]図12openSUSEのレイアウトです。ライブイメージで確認してみましたが、同じレイアウトでした。

図12 openSUSE
図12 openSUSE

ちなみにElevenで使われているドックはPlankです。特別な権限が必要ではあるものの、翻訳もできます。

Tilda

Tilda図13はドロップダウン式のターミナルです。ログイン時点で起動しており、F12キーで表示と非表示を切り替えることができます。翻訳は不完全なので、挑戦してみるのも良いかもしれません。

図13 Tildaを表示したところ
図13 Tildaを表示したところ

Folder Color

Folder Color図14はその名のとおりフォルダーの色を変更するアプリケーションです。特定のフォルダーの色を変更するだけではなく、エンブレムをつけることや、フォルダー前部の色を変更することもできます。

図14 Folder Colorの設定
図14 Folder Colorの設定

Gufw

Gufw図15はiptablesのフロントエンドであるufwの設定ツールです。本連載第353回も参考にしてください。翻訳も必要ですが、難易度は高いかもしれません。

図15 Gufw
図15 Gufw

LightDM GTK+ Greeter settings

LightDM GTK+ Greeter settings図16は、その名のとおりLightDM GTK+ Greeterの設定を変更できます。

図16 LightDM GTK+ Greeter settings
図16 LightDM GTK+ Greeter settings

Raspberry Pi 2用イメージのインストール

前述のとおりRaspberry Pi 2のイメージも配布されています。わりと簡単にインストールできるので、実際にやってみましょう。最低で8GB、できれば16GB以上のmicroSDHCカードを用意してください。

まずはubuntu-mate-15.04-desktop-armhf-raspberry-pi-2.img.bz2をダウンロードし、解凍します。するとubuntu-mate-15.04-desktop-armhf-raspberry-pi-2.imgが出力されるので、これをダブルクリックします。⁠ディスク]が起動するので、インストールするmicroSDHCカードを選択して[リストアを開始]をクリックします図17⁠。警告が表示されるので[リストア]をクリックします。あとはパスワードを入力してしばらく待つと、インストールが完了します。

図17 ⁠ディスク]はimgファイル(ddイメージ)のリストアができる
図17 [ディスク]はimgファイル(ddイメージ)のリストアができる

続いてパーティションを拡張します。GParted(パッケージ名は⁠gparted⁠⁠)をインストールして起動してください。右上からmicroSDHCカードを選択して図18⁠、2番目のパーティションを右クリックして[リサイズ/移動]をクリックします。パーティションを拡張し、⁠リサイズ/移動]をクリックします図19⁠。チェックボタンをクリックして更に[本当に保留中の操作を適用してもよろしいですか?]のダイアログで[適用]をクリックします。あとは取り出して、Raspberry Pi 2に挿入して起動します。

図18 GPartedでmicroSDHCカードを選択した
図18 GPartedでmicroSDHCカードを選択した
図19 領域を拡大して[リサイズ/移動]をクリック
図19 領域を拡大して[リサイズ/移動]をクリック

起動したら、言語とロケールとキーボードレイアウトとユーザーアカウントの設定を行います。その後ログインすると普通に使用できるようになります。

必須の設定はあまりないのですが、前述を参考にインプットメソッドはインストールしたほうが良いでしょう。ついでにフォントもインストールしたほうが良いです。次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt-get install fonts-takao fcitx fcitx-mozc

パッケージのダウンロードには時間がかかるので、事前に/etc/apt/sources.listを以下のようにすると、普段使用しているサーバーからのダウンロードになり、待ち時間が大幅に少なくなります。

deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ vivid main restricted universe multiverse
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ vivid main restricted universe multiverse

deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ vivid-security main restricted universe multiverse
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ vivid-security main restricted universe multiverse

deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ vivid-updates restricted main multiverse universe
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ vivid-updates restricted main multiverse universe

deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ vivid-backports restricted main multiverse universe
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ vivid-backports restricted main multiverse universe

Raspberry Pi 2はメモリが1GBしかないため、スワップファイルを作ったほうが良いかもしれません。その場合、次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt-get install dphys-swapfile

なお、Raspberry Pi 2用イメージ作成スクリプトは公開されていますので、カスタマイズに挑戦してみるのも面白いでしょう。

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