Ubuntu Weekly Recipe

第375回 OpenStack Roadshow Tokyoレポート

この記事を読むのに必要な時間:およそ 6 分

マーク・シャトルワース氏へのインタビュー

プレゼンテーション後,マーク・シャトルワース氏やCanonicalの中島様にインタビューする機会がありましたので,その内容をかいつまんでお伝えします。

図14 マーク・シャトルワース氏

図14 マーク・シャトルワース氏

―― AndroidやiPhoneのアプリストアがそうであるように,ストアからエンドユーザーが「良いアプリ」を探し出すのは非常に難しい問題です。今後,Charmストアにさまざまなベンダーが数多くのCharmを提供するようになると,同じような問題が発生すると思うのですが,どのようにお考えでしょうか?

現在私たちは,さまざまな観点から品質を上げるプロセスに重点を置いています。

たとえばあるマシンにソフトウェアをインストールするようにCharmを書くことができますし,まずはそのように作るでしょう。しかしながらJujuは「スケール可能である」ことから,そのCharmがどう作られているかに関係なく,ユーザーはスケールさせようとするかもしれません。またそのスケールの適切な記述方法はソフトウェアの種類によって変わります。MySQLをスケールさせる方法はMongoDBとは異なるのです。そこで私たちは,そのCharmが確かにスケールするかを確認します。

セキュリティの観点からもCharmをチェックしますし,アップグレードできるかどうかも確認します。ユーザーがそれぞれ期待するソフトウェアライフサイクルの,すべての観点において「ちゃんと動く」ように留意しています。

―― Charmのレビュープロセスはどれくらいの人数で行っているのでしょうか?

コミュニティチームを形成し,できるだけ素早くレビューするようにしています。

オープンソースソフトウェアと同様に,素早いフィードバックを提供すれば,その改善もより早くなることがわかっているからです。今朝もIBMが,そのソフトウェアの一部のために作成したCharmがありましたので,より良くなるようにレビューしたところです。

―― OpenStackのIronicは,機能的にMAASと被るところもあるかと思いますが,どのように住み分けるのでしょうか?

Ironicはベアメタルにイメージをインストールする機能をOpenStackに追加します。これは便利ではありますが,Ironicを動かすためにはOpenStackのコンポーネントが必要にるということでもあります。

それに対してMAASはOpenStackとは関係なく,もっとシンプルなものです。シンプルであるが故にWindowsやRHEL,SUSE,CentOSなどさまざまOSをインストールできます。ChefのコミュニティもベアメタルへのデプロイにはMAASを利用を推奨していています。Ironicを採用するとNovaのAPIが制約になってしまうことを避けたかったことも理由の一つのようです。

―― CanonicalはもともとオープンソースのOSの企業という印象です。しかしながらJujuは,DevOps向けのモデリングツールという話でした。将来的にCanonicalはDevOps向けを目指していくことになるのでしょうか?

私たちが最も興味を抱いているのは,⁠何か難しいことを簡単にする」ということです。Ubuntuも,Linuxのインストールの難しさから始まりました。人びとは常に「もっと簡単にできないのか?」と言い続けています。

ある特定のOpenStackならインストールはそれほど難しくないかもしれません。しかしそれでも,⁠OpenStackのインストールは難しい」⁠Hadoopのインストールは難しい」⁠機械学習のインストールは難しい」⁠CloudFoundryのインストールは難しい」なんて言葉を見てきました。これらに共通するのは,データベースやメッセージング,APIサービスといった複数のソフトウェア部品を協調させなくてはいけない「新しいクラスのソフトウェア」であるということです。しかもこれらの部品は数多くのマシン上に配置されます。

これはUbuntuだけで解決できることではありません。なぜなら,特定のOSに限った話ではないからです。よって他の多くのOSにも開かれた形で対応しました。

―― 「簡単にする」という明確な哲学についてはわかります。これをどのように収益化していくのでしょうか?

もともとの私たちの焦点は「人びとがクラウドを使うようにするにはどうすれば良いか」ということでした。そのためクラウド上でのUbuntu体験を素晴らしいものにするべく注力してきました。その体験をより良いものにすればするほど,クラウド上で最初に使う人が増えて,結果的にお金を出してくれるユーザーが増えると考えています。

たとえば6週間で何かを成し遂げなければならないスタートアップを考えてみます。Hadoopをapt-getでインストールするとして,何十台ものマシンにインストールするのは大変です。そもそも何十台もの仮想マシンを用意しなくてはいけないかもしれません。Jujuはこういう作業コストをできるだけ小くします。Jujuを操作することで,既存のスクリプトを素早く再利用できるのです。

このとき,その中で動いているOSについて感知することはありません。実際どのOSを選択するかは,Charmを作成するソフトウェアベンダーに任されているのです。あるデータベースソフトウェアであれば,UbuntuではなくOracle Linuxにするかもしれません。Active DirectoryのCharmならWindows上で動かすことになるでしょう。多くのCharmはUbuntuでも動きますが,その選択を制限するようなことはしたくないと考えています。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。