Ubuntu Weekly Recipe

第453回2017年のデスクトップ環境

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

本連載は9年目を迎え、453回を数えるまでになりました。皆様のご愛顧にただただ感謝するばかりです。1年間が何週間かは算出方法によって違いますが[1]⁠、今週は2週目、今年掲載される最終日はおそらく12月27日で52週目です。途中2週ほど休むと思われるので、ギリギリ年内には500回を迎えられる見込みです[2]⁠。

今回も昨年と同じように、Ubuntuで使用できるデスクトップ環境についての情報をまとめて取り上げ、今年の連載を開始することにします。

Unity 7/8

実のところそうなるのではないかと思っていましたが、結局Unity 8がデフォルトになるのは17.04以降に持ち越しとなりました。しかし18.04がLTSであることを鑑みると、待ったなしで今年中にはUnity 8をデフォルトにする必要があります。次のLTSでもUnity 8を見送ることになるのであれば、このプランの完遂は不可能ではないかと思うくらいには引っ張りすぎました。

Unity 8に関しては第447回が参考になります。

Unity 7は粛々と主役から退いていくのかと思いきや、HiDPIサポートの改善など便利そうな変更点があるので、全く先が読めません。

GNOME

GNOMEは昨年3.20と3.22がリリースされ、順調に改良が進んでいます。この2リリースでWaylandサポートが完了し、Fedora 25ではついにWaylandセッションがデフォルトになりました[3]⁠。なかなかに感慨深いものがあります。

GNOMEの次の目標はどのあたりになるのかはわかりませんが、ヒントとしてはGTK+ 4の話が出てきたので、今年からサポートを開始するのではないかと思われます。本題とは逸れるので詳細には記しませんが、GTK+ 4に関しては今までとは異なり、かなりアグレッシブに開発されるモデルに変更するようです。

KDE SC

昨年も述べたようにKDE SCは3つのコンポーネントが頻繁にリリースされます。それはとてもいいことではあるものの、ユーザーにとっては何を使ったらいいのかわかりにくいという面があるのは否めません。そのためなのかどうかはわかりませんが、KDE Plasma 5.8 LTSが昨年リリースされました、LTSはやはりLong Term Supportの略で、スケジュールによると18ヶ月間サポートが継続するようです。これでKDE FrameworksもKDE Applicationsもある程度はバージョンが固定されるため、格段にわかりやすくなったのではないでしょうか。もちろんこれは一般論で、Kubuntuでは関係ありません。

そう考えると、UbuntuベースでKDE SCの最新バージョンを試したい場合は、KDE neonにしておくのが無難と言えそうです。

KDE SC関連で興味深い動きといえば、Plasma Mobileもあります。

KDE Applicaions 16.12のリリースノートを読む限り、アプリケーションのKDE Frameworksへのポーティングをひととおり完了したようです。その中には著名なドキュメントビューアーであるOkularも含まれています。KDEは全く関係ありませんが、あと残りはLibreOfficeくらいのものでしょう。

KDE SCは今年もアグレッシブに開発が続けられるでしょうが、KDE PlasmaもKDE Applicationsも一つの節目を迎えているため、Waylandサポートの強化など今後必要になる改善に力を割いていくことになることでしょう。

Xfce

Xfceは予想どおり4.14のリリースはありませんでした。GTK+ 3へのポーティングを完了した後のリリースになることを考えると、年内のリリースも厳しいと思われます。しかしXfceの将来のためには必要な作業なので、じっくりでも確実にやっていただきたいところです。

実はXfceはDPIを個別に指定できます図1※4⁠。よって、そのようなことは全く意図されていなかったとは思うものの、HiDPIディスプレイでは使いやすかったりします。このあたりから興味を持って開発に参加する人が増えはしないかと願ってやみません。

図1 ⁠カスタムDPI設定]でDPIを指定できる
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LXDE/LXQt

Lubuntuユーザーにとっては、いつLXQtベースに移行するのかが関心事だと思います。筆者も昨年のうちに移行するものだと思いこんでいましたが、現在は若干トーンダウンしているようです。

たしかに、LXDEの開発は終息してLXQtに移行するという当初の予定とは、現状だいぶ異なってきています。LXDEは現在も継続して開発され、LXQtはリリースプロセスの見直し中であることをLXQt 0.11のリリースノートで明らかにしています。すなわちリリースのペースが落ちています。

ということは、今年もLXQtの開発は進むでしょうが、Lubuntuとしてリリースされるかどうかは不透明、というのが現在の見立てです。LXQtベースのインストールイメージは用意されるはずではあるので、それに期待しましょう。

MATE

MATEは昨年1.14と1.16の2つのバージョンがリリースされました。ついにGTK+ 3へのポーティングが完了し、Ubutu MATE 16.10ではGTK+ 3でビルドされています。ロードマップを見る限りではレガシーからの脱却にはまだまだ時間がかかり、Waylandやsystemdといった新しいものへの対応には時間がかかりそうです。とはいえ開発のアグレッシブさは素晴らしく、よくぞここまでできるものだと感心します。

Ubuntu的にはMATE開発者のMartin WimpressさんがCanonicalに就職し、Ubuntu MATEだけをやるわけではないものの心強いです。

Cinnamon

CinnamonはLinux Mintのデスクトップ環境として開発されているため、リリースのタイミングも年2回です。昨年は3.03.2がリリースされました。Ubuntu 16.04 LTSのリリースに伴いLinux Mintがメジャーバージョンアップし、さらにCinnamonもメジャーバージョンが上がっています。ちなみにUbuntu 16.10では3.0が使用でき、17.04では3.2を使用できるようになるはずです図2⁠。

図2 筆者の手元でDebian sidのCinnamon 3.2関連パッケージをビルドし、16.04にインストールした
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ロードマップもLinux Mintと共通で、次のバージョンである3.4では小規模の変更を予定しているようです。

Budgie

Budgieはデスクトップ環境ではありません。GNOMEのGNOME Shellの代わりに使うデスクトップシェルがBudgieであると理解すると簡単でしょう。かつてはUnityもGNOMEのGNOME Shellの代わりに使うデスクトップシェルだったのと同じです[5]⁠。

17.04から新しいフレーバーであるUbuntu Budgieとしてリリースすることが決定したため、ここで簡単に紹介することにしました。

年明け早々にデイリーイメージがリリースされ、いち早く試せるようになりました。図3図4がスクリーンショットです。詳しくは17.04のリリース後に解説する予定です。

図3 Ubuntu Budgieを起動すると、Budgie Welcomeというプログラムが自動起動する
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図4 Budgieの特徴であるRavenメニューを表示したところ。Unity 8に似ている。⁠アンリダイレクトの無効」とはいかなる機能であろうか
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