Ubuntu Weekly Recipe

第624回 Raspberry Pi 4にデスクトップ版Ubuntuをインストール

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デスクトップ版のUbuntuがRaspberry Piをサポートするかも?

Ubuntu Weekly Topicsの2020年6月12日号にある,⁠デスクトップ版のUbuntuが将来的にRaspberry Piをサポートする可能性」に言及したのは,実はこのDesktopifyを開発したMartin Wimpressです。MartinはRaspberry Pi 4の8GBモデルをいち早く入手し,自身のYouTubeチャンネルでUbuntu 20.04 LTSを動かす様子を配信していました。おそらくそこから,デスクトップ版のサポートの可能性を感じ取ったのでしょう。

これまで本連載では何度となくRaspberry PiにUbuntuのデスクトップ環境をインストールする記事を紹介していましたが,今回のように「Ubuntu Desktop」を使う例は存在しませんでした。

第376回と第450回・第451回は「Ubuntu」とタイトルにあるものの,実際に動いているのは3Dアクセラレーションを必要としないGNOME Flashbackです。それ以外はXubuntuだったり,公式にRaspberry Pi向けイメージを提供しているUbuntu MATEだったりします※4⁠。これはUnityやGNOME Shellをまともに使うためには3Dアクセラレーションが必要なものの,当時はRaspberry Piで動くまともなGPUドライバーがなかったことが主な理由です。

4
2020年6月20日時点ではRaspberry Pi向けのUbuntu MATE 20.04 LTSがリリースされていませんが,先週あたりから「イメージを作った」という話が聞こえているので,間もなくリリースされるものと思われます。

Raspberry Piシリーズで採用しているBroadcomのSoCには,VideoCoreと呼ばれるGPUが組み込まれています。Raspberry Pi 4がVideoCore VIで,それ以外がVideoCore IVです。少しわかりにくいですが,⁠6(VI⁠⁠」と「4(IV⁠⁠」です。⁠5(V⁠⁠」も存在するようですが,Raspberry Piでは採用されていません。

Raspberry Pi 3以前で採用されていたVideoCore IVについては,Eric Anholt※5がFLOSSなドライバーを開発していました。これはVC4ドライバーと呼ばれるもので,最新のRaspberry Pi 4向けのUbuntuイメージであればカーネルモジュールとして有効化されています。しかしながら,Eric自身がブログで言及しているように,たとえ3Dアクセラレーションが有効化されたとしても,Raspberry Pi 3の性能でGNOME Shellをストレスなく動くかというと微妙でした。これはGPUの性能よりはGNOME Shellのアーキテクチャーの問題ではあるようですが。

※5
VC4ドライバー開発当時はBroadcom所属で,現在はGoogle所属のようです。

それに対して,Raspberry Pi 4で採用されているVideoCore VIは大幅に性能が強化されています。ドライバーもErich Anholtから作業を引き継いだ,Igalia社のIago ToralらがV3Dドライバーとして開発しています。もともVideoCore V向けだったのでVC5という名前だったようですが,VideoCore VI以降もサポートするようになったために名前が変わったようです。

V3Dドライバーの現状とゴールは最近Raspberry Pi Blogに掲載されたレポートによくまとまっています。VideoCore VIの性能を引き出すための多数の施策が行われており,Vulkanのサポートだけでなく将来的にはGPGPU向けにコンピュートシェーダーをサポートすることも目指しているようです。

さて,残念なことにUbuntu 20.04 LTS向けのUbuntuカーネルではV3Dドライバーは有効化されていません。一度19.10の開発段階で有効化されたものの,5.3カーネルのそれはあまりにも不安定だったために無効化されたという経緯が存在します。その後,5.4カーネルだとそれなりに安定化しているということで,UbuntuカーネルでもV3Dドライバーを有効化する流れになりつつあります。

よってUbuntuデスクトップに対応するためには,まずはV3Dドライバーの有効化と動作確認から行う必要があります。Ubuntu 20.04 LTSのポイントリリースで対応するかどうかは不明ですが,ひょっとすると20.10あたりにはRaspberry Pi向けのデスクトップ版イメージが公式に提供されることになるかもしれません。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。