空想メモ

スイッチ

トイレで用を足していたら、
壁にスイッチがあることに気づいた。

なんとなく気になって、そのスイッチを押してみた。

何も起こらない。

なんだ?と思いつつ、すべてを終えて外に出た。

ちょうどそのスイッチが押された瞬間、
チベットの山奥で、お母さんの病気が治っていた。

今日もトイレのスイッチを押した。

何も起こらない。

その直後、スイスの銀行で、
忘れていた暗証番号を思い出したおじいさんがいた。

また今日もスイッチを押した。

例によって、オレには何も起こらない。

花山椒

麻婆豆腐を食べている。

どうしようもなく辛くてたまらないが、 彼女は、
麻婆豆腐の上から更に花山椒を振り掛けまわす。
何度も、何度も、振り掛けまわす。

すでに舌の感覚はなく、頭もボーっとしてきているが、
かまわず、麻婆豆腐を食べ続ける。

目の前のポップには、“中華料理の基本の味は6つ。酸味、甘味、塩味、苦味、香味、そして、しびれる味”と書いてある。

「しびれるのが味って、どういうことよ。これは味じゃなくて状態よ、状態」
と、心の中で文句を言う彼女。

汗と鼻水と涙が自然と流れ出てくる。
止めどなく流れ出てくる。

今日から彼女は、一人ぼっち。

だから、麻婆豆腐を口に運び続けている。