フリードリヒ・ニーチェさん


形而上学的原理なんてありはしない

では本題に入りましょう。基本的にニーチェさんは、「オレはOOが大嫌いだ~!」と言い続けた方です。では何が大嫌いだったかというと、プラトンさん以来19世紀後半までのずっと長い間、西洋に住む人々の思想の根本にあった考え方です。それを西洋形而上学と呼びます。形而上学っていうのは、僕らの生きている現実世界は超自然的な真理(プラトンさんのいうイデアだったり、キリスト教の神様だったり)によって構成されていると考えることからスタートする学問ですね。ニーチェさんは、

「現実の世界とは別に、真理の世界なんてあるわけないじゃあねえか。この世には真理なんてありはしないんだぜ」

と言い、

「頭で考えた理想なんかに頼る生き方はやめようぜ!」と叫ぶのでした。
かの有名な「神は死んだ!」は、こんな彼の考え方を象徴する言葉なのです。

徹底的にニヒルになれ!

ちょうど19世紀後半は、科学が進歩して、それまでの精神的な支柱であった「神」の存在が信じられなくなっていた時代でした。今まで信じていた絶対的な真理=神が「無」であると告げられた民衆の間には、「どうしたらいいかわかんないよ~」という迷い悩んだ重苦しいムードが漂っていたんですね。そんな西洋の精神状況を、ニーチェさんは「ニヒリズム(虚無主義)に陥ってる」と診断します。

更には、

「そもそもありもしない真理なんかを設定しちゃったのが、今の落ち込みようにつながってるんだ!」

と切り捨ててしまうのです。そして、その落ち込みから脱出するには、真理を失ったという喪失感をはっきりと自覚し、「ありもしない真理」を積極的に否定するしかないんだと叫びます(これがニーチェさんの「積極的ニヒリズム」です)。古臭い価値観なんて捨てちゃって、考え方を大きく変えちゃいなよ!という提案ですね。