生物ミステリー(生物ミステリー プロ)シリーズ桜の樹木学

[表紙]桜の樹木学

紙版発売
電子版発売

A5判/208ページ

定価2,508円(本体2,280円+税10%)

ISBN 978-4-7741-7991-9

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書籍の概要

この本の概要

私たち日本人は桜が好きです。
他の樹木とは比べようがないほど鮮やかに咲き誇る桜の花は,爆発的な春の喜びを感じさせてくれます。
同時に,花の盛りが短く,散り急ぐ花びらに,人の世の無情を感じとらせてくれます。
歓喜と無情・・・・・・日本人の心を強く揺さぶる桜を,桜の側から,いわば桜の本音として語らせたらどうなるのでしょう。

本書は,植物学的知識を用いて,桜とはいったいどういう存在なのかに迫ってみます。
植物としての桜,人間の文化的側面と桜の生き様,世界の桜と日本の桜の系統などなど,さまざまな角度描かれる桜の本音とは?
生物としての桜の本音を察してみると,人間が桜を観賞して感じる世界とは違ったものが見えてきます。
貴重で美しい桜の写真と繊細なイラストをふんだんに用い,資料としての価値も併せ持つ価値ある1冊。
存分にお楽しみ下さい。

こんな方におすすめ

  • 桜が大好きな方
  • “生物”としての桜に興味のある方
  • 桜を植物学的に見つめ直す1冊。今までにない価値ある1冊です

目次

第一章 サクラの分類学

(1)種の定義〜野生種と園芸品種

  • ①野生種とは
    • 野生種は分類学上の「種」
    • 学名と和名
    • 亜種・変種・品種
    • 「品種」と「園芸品種」
  • ②園芸品種とは 
    • 人が育て,作る植物の種類
    • 園芸品種の学名と和名

(2)分類体系と分類群

  • ①人為的で古典的な分類体系
    • リンネの分類体系
    • 会社の組織に似ている?
    • 種内分類群

(3)サクラの分類学的位置

  • ① 新しいバラ科の分類
    • 最新の分類体系
    • バラ科を14連とする分類へ
  • ②サクラの花のつくり
  • ③サクラ属の二つの分類
    • 広義の分類
    • 広義のサクラ属の特徴
    • 狭義の分類の出現
  • ④中国への伝播
  • ⑤日本に於ける狭義の分類
    • 大場教授の狭義の分類
    • 大場教授のサクラ属の特徴
    • 筆者の見解
  • (コラム 中国の分類は政治的?)
  • ⑥広義のサクラ属の分類学的位置と亜属

(4)日本の野生種・15種

  • ①オオシマザクラ
    • 海岸型とフォッサマグナ要素と
  • ②ヤマザクラ
    • 白い花と多毛の葉
  • ③カスミザクラ
    • 粘り気のある薄い葉
    • カスミザクラとヤマザクラ〜観察による検討
  • ④エドヒガン
    • フラスコ型の花托筒,流線型の葉
    • 巨木になるサクラ
  • ⑤オオヤマザクラ
    • うす紅色の大きな花
    • 本当に遅咲きか?
  • ⑥マメザクラ
    • 小型のサクラ
    • 「フジザクラ」の定義
    • 系統進化の新説
  • ⑦タカネザクラ
    • 高山帯に咲くサクラ
  • ⑧チョウジザクラ
    • 丁の字形に咲くサクラ
  • ⑨ミヤマザクラ
    • 若葉の中に開く花
  • ⑩エゾノウワミズザクラ
    • 北国のサクラ
    • 文献から学ぶ分布の問題点
  • ⑪イヌザクラ
    • サクラに見えないサクラ
    • 巨木百選のイヌザクラ
  • ⑫ウワミズザクラ
    • ブラシのように咲くサクラ
  • ⑬シウリザクラ
    • 奥日光の名花
  • ⑭バクチノキ
    • まだらにはげ落ちる樹皮
  • ⑮リンボク
    • 若木の葉はヒイラギに似る

(5)海外のサクラの仲間

  • ①多彩な姿・ヒマラヤザクラ
  • ②ヒマラヤヒザクラの直系・カンヒザクラ
  • ③古く日本に渡来したニワウメ
  • ④中国横断山脈の原産・ウメ
  • ⑤中国黄河上流の原産・モモ
  • ⑥故郷は中央アジア・アーモンド
  • ⑦中国から伝わったスモモ
  • ⑧アジア西部~ヨーロッパの原産・オウトウ
  • ⑨中国のオウトウ・シナミザクラ

(6)サクラの園芸品種

  • ①日本の代表的な園芸品種・ソメイヨシノ
    • 生い立ち
    • 両親の花と比べる
    • DNA解析
    • 本当に実ができない?
    • 枝変わり
  • ②日本とヒマラヤの桜を繋ぐカワヅザクラ
    • 春告げ桜
    • カンヒザクラとオオシマザクラの自然雑種
    • ヒマラヤのサクラと日本のサクラの比較
    • 二つのサクラを繋ぐカワヅザクラ
  • ③消え行くか? アタミザクラ
  • ④最新の園芸品種・カケガワザクラ

第二章 サクラの生物学

(1)花

  • ①花序
    • サクラ属の花序
    • 花柄・小花柄・花梗
  • ②花の作りで重要な専門用語「花托筒」について
    • 花托筒の意味
    • 歴史的な背景
    • 現在の欧米の「花托筒」
    • 結論
  • ③雄蕊・雌蕊・胚珠
  • ④受粉と受精
  • ⑤花色変化と花吹雪
  • ⑥花芽と葉芽,冬の眠り
  • ⑦開花
  • ⑧狂い咲き,四季咲き
  • ⑨八重咲きへの変化

(2)果実

  • ①色を変える果実
  • ②双胚果,双子果
  • ③染色体数と雑種
  • (コラム コシノヒガンザクラの謎)
  • ④自家不和合性と他家不和合性

(3)種子

  • ①種子を守る核
  • ②核の中の種子  
  • ③サクラは無胚乳種子 

(4)葉

  • ①葉の外形
    • 葉身と鋸歯
    • 托葉
    • 蜜腺
    • 葉身の作り
    • トウオウカの若葉の作り
  • ②葉の毛と葉裏のダニ室
  • ③ヤマザクラの葉裏の粉白色への仮説
    • 葉裏の粉白色
    • 実体顕微鏡による観察
    • 平行型気孔複合体の仮説
  • ④光合成と呼吸
    • 生長のための光合成
    • 蓄えるための光合成
    • 水を巡らせる蒸散
  • ⑤落葉
    • 紅葉と黄葉
    • 落葉のしくみと意味
  • (コラム 冬も葉をつける落葉樹)

(5)幹と枝

  • ①骨格を作る長枝
    • 頂芽と側芽
    • 頂芽優勢と頂芽抑制
    • 頂芽型と仮頂芽型
  • ②肉を作る短枝
  • ③桜の樹形
  • ④モモとオウトウの園芸技術
  • ⑤接ぎ木と挿し木
  • ⑥サクラ属のクローンを作る
  • ⑦萌芽,枝変わり
    • 萌芽
    • 狩宿の下馬桜の復活
  • ⑧枝垂桜
    • 枝垂れるサクラ
    • 枝垂の原因 メンデル遺伝説
    • 枝垂の原因 遺伝子突然変異説
    • 枝垂の原因 突然変異・ジベレリン不足複合説
    • 立ち性の枝と枝垂れる小枝の二要素が原因?
    • 枝垂の小枝から立つ枝へ

(6)樹皮

  • ①木を守る皮膚
    • 一般的な樹皮
    • サクラやシラカバの樹皮
  • ② 光合成をする樹皮と甘皮

(7)材

  • ①樹体を支える構造
    • 木口,柾目,板目
    • 散孔材と環孔材
  • ② 生きる辺材と死せる心材
  • ③腐る材
    • 「桜切る馬鹿」の意味
    • サクラの枝は切り口から腐る
    • 「桜の枝は切るべし」

(8)根

  • ①直根と水平根と細根
    • サクラの根は中間型
    • 細根
  • ②根萌芽
    • シウリザクラの根萌芽
    • 根萌芽の林
    • ペストと呼ばれたサクラ
  • ③気根
  • ④幹を食べる不定根
    • 枝から根を出す伏状
    • オオシマザクラの不定根
    • 自らの身体を食べて生きる

(9)サクラの生き様と人

  • ①熱帯樹の面影の陽樹
    • 熱帯樹の面影
    • 成長が早い陽樹
  • ②変幻自在の生き方
  • ③サクラとの共存の道
    • もっとサクラを知ろう
    • 「弘前公園方式」の技術
    • リンゴ栽培の核心を生かす
    • 弘前方式の現在
  • 関東以西のソメイヨシノの管理を考える

第三章 人と桜

(1)桜の花を愛でる

  • ①その歴史の始まり
  • ②農と桜
  • ③歴史を語る桜
  • ④花より団子:八代将軍吉宗の政策
  • ⑤サクラは日本特産か?
  • (コラム 皇居東御苑の桜)
  • ⑥ 桜に劣らない林檎の花見

(2)風景としての桜

  • ①古くて新しい吉野の山桜
    • 驚かされた街と森の二つの要素
    • 吉野は歴史に彩られる
    • 吉野林業の発展
    • 吉野の人文風景(人文景観)
  • (コラム 吉野山の桜と奈良春日山の原始林を救った土倉庄三郎)
  • ②団子ばかりでない城跡の桜

(3)花の詩歌と樹木学

  • ①春を告げる桜〜春への期待
    • 小唄や歌の世界
    • 樹木学
  • ②爛漫と咲く桜〜人桜を観る
    • 桜に憧れ,桜に酔う
    • 樹木学
  • ③散る桜―人桜に感ずる
    • 潔さの裏返しの無常観
    • 樹木学

(4)桜の諺と樹木学

  • ①桜伐る馬鹿,梅伐らぬ馬鹿
    • 諺の意味
    • 樹木学
  • ②桜を庭に植えると,家が傾く
    • 諺の意味
    • 樹木学

(5)桜の利用と樹木学

  • ①食用としての利用
    • 桜餅
    • 桜湯
    • 樹木学
  • ②サクラ属の果物
    • オウトウ
    • ウメ
    • アンズ
    • スモモ
    • アーモンド
    • 樹木学
  • (コラム 農業としての果樹栽培)
  • ③建築材としての利用
    • 建築材・器具材と版木
    • 樹木学
  • ④工芸品としての利用
    • 樺細工の歴史
    • 現在の樺細工
    • 樹木学

著者プロフィール

近田文弘(こんたふみひろ)

1940年生まれ。国立科学博物館名誉研究員。国内外の調査や自然教育の指導に従事し,最近は皇居吹上御苑の植物調査と自然観察会の指導を担当 。『ずかんたね』(技術評論社),『葉実木のかたちで調べる 樹木の名前大事典』(くもん出版),『皇居吹上御苑,東御苑の四季』(NHK出版)など多くの著書・監修書がある。