南天の星座6

6きょしちょう座

巨嘴鳥座

学 名
Tucana(略号 Tuc)
英語名
The Toucan
設 置
ペーテル・ケイセル,フレデリック・デ・ハウトマン
面 積
295平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

NGC292銀河 小マゼラン銀河(Small Magellanic Cloud=SMC)

  • 位置(分点2000.0)赤経00h52.6m,赤緯-72°48’視直径350’x350’,等級2.2,型Im
小マゼラン銀河と球状星団NGC104(撮影 隈元俊一(鹿児島県天体写真協会))

小マゼラン銀河と大マゼラン銀河は、私たちの天の川銀河の伴銀河です。このため本書では「銀河」と表記していますが、英語の表記「Cloud」を引き継いで「マゼラン雲」「マゼラン星雲」と表記される場合もあります。

肉眼で濃い天の川の一部が浮かんでいるように見えます。満月の100倍の広さがあり肉眼で明瞭ですから、南半球では有史以前から存在が知られていました。「マゼラン銀河」の名称は、世界一周の航海を目指したポルトガルのフェルディナンド・マゼランが1519年の航海日誌に記録しており、ヨーロッパにこの天体の知識が広まったことからマゼランの名が冠されるようになったものです。リチャード・アレンによると、マゼラン以前からポルトガルやオランダの航海者達は数世紀にわたって「ケープの雲(Cape Clouds)」と呼んでいました。

小マゼラン銀河の実体は、前述の通り私たちの天の川銀河の伴銀河のひとつです。天の川銀河から約19万光年の距離があり、実直径は1.5万光年と測定されています。天の川銀河は、実直径が約10万光年ですから、小マゼラン銀河のその距離の近さと、銀河としての実態がとても小さいことが分かることでしょう。

小マゼラン銀河は、米国の天文学者ヘンリエッタ・リービット(Henrietta Leavitt 1868-1921)が、セファイド型変光星の光度と周期の関係を導き出した天体でもあります。この業績については、ケフェウス座の章に記しましたのでそちらをご覧ください。

NGC104球状星団(=47Tuc)

  • 位置(分点2000.0)赤経00h24.1m,赤緯-72°05’視直径30.9’,等級3.8,集中度(高1-低12)3

小マゼラン銀河の西にまるで恒星のように見えています。全天第2位の明るさを持つ素晴らしい球状星団です。密集度の高いこの星団は肉眼で容易にみることができ、恒星としてのフラムスティード番号「47Tuc」がつけられています。これほど小マゼラン銀河に近い位置だと小マゼラン銀河との関連を想像してしまいますが、たまたま同じ方向に見えているだけにすぎません。NGC104星団の距離は1.3万光年で、小マゼラン銀河は14倍もの遠方にあります。

2重星の観察

β1-β2星

  • 位置(分点2000.0)赤経00h31.5m,赤緯-62°57’
  • 主星4.3等,伴星4.5等,位置角168°,離角27.1”(2021年),スペクトルB9V

β1星とβ2星のクリーム色で等光度の2星が大きく間を開けて並んだ、見て楽しくなる重星です。この2星と離れて南東9’には、β3星(5.1等)があり、双眼鏡でも容易に観察できます。β1星には、離角2.6”に13.5等星を伴っていますが、これは小口径の対象になりません。

δ星

  • 位置(分点2000.0)赤経22h27.3m,赤緯-64°58’
  • 主星4.5等,伴星8.7等,位置角279°,離角6.8”(2016年),スペクトルB9.5V

美しくみごとな重星です。明るい主星は黄白色で、これに小さなやや暗めの黄色い伴星があります。光度差があり、離角は適度で楽しめます。

κ星

  • 位置(分点2000.0)赤経01h15.8m,赤緯-68°53’
  • 主星5.0等,伴星7.7等,位置角315°,離角4.6”(2017年),スペクトルF6IV

小マゼラン銀河に近い、きょしちょう座の東端にあります。黄色の主星とやや暗いオレンジ色の伴星がくっつくように見え、とても美しい重星です。このペアは、公転周期857年の実視連星系です。