冬の星座14

14旧アルゴ座

とも座,りゅうこつ座,らしんばん座,ほ座

学 名
Argo Navis
英語名
The Ship Argo

とも座、りゅうこつ座、らしんばん座,ほ座の4つの星座は、元はアルゴ座という大きなひとつの星座でした。現代では4分割されていますが、星座の解説には一体と捉えた方が適当です。

とも座

学 名
Puppis(略号 Pup)
英語名
The Stern
設 置
古代ギリシア,ニコラ・ルイ・ド・ラカーユ,国際天文学連合(1922)
面 積
673平方度

りゅうこつ座

学 名
Carina(略号 Car)
英語名
The Keel
設 置
古代ギリシア,ニコラ・ルイ・ド・ラカーユ,国際天文学連合(1922)
面 積
494平方度

らしんばん座

学 名
Pyxis(略号 Pyx)
英語名
The Compass
設 置
ニコラ・ルイ・ド・ラカーユ
面 積
221平方度

ほ座

学 名
Vela(略号 Vel)
英語名
The Sails
設 置
古代ギリシア,ニコラ・ルイ・ド・ラカーユ,国際天文学連合(1922)
面 積
500平方度

天体観測の見どころ

アルゴ座は、非常に広い面積を持つだけでなく、冬から南天に続く銀河が星座内を通過しています。とも座からりゅうこつ座にはたくさんの散開星団,散光星雲が溢れています。ここでは、主に日本からも観察可能な星雲星団と重星について紹介しました。

1星雲星団の観察

1-1.とも座

M46散開星団(=NGC2437)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h41.8m,赤緯-14°49’視直径27’,等級6.1,星数100

M47散開星団(=NGC2422)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h36.6m,赤緯-14°30’視直径29’,等級4.4,星数30

M46とM47散開星団は、いずれも大型の散開星団で暗夜にはボーッとした姿を肉眼で認められます。わずか1.3°の間隔を空けて東西並んでおり、双眼鏡では同じ視野に収まります。両星団の特徴は大きく異なって、東側のM46は微光星が密集した美しい星団です。まるで星雲を交えているように見えます。M47は、明るい星々がまばらに集まっています。両星団は隣接していますが、たまたま視線方向が同じだけで、偶然近くに見えています。冬の銀河の中にあり、周囲もたくさんの星に囲まれており、とても美しい星域です。天体写真の被写体としても人気があります。
M46星団の中,北東部には惑星状星雲NGC2438があり、これは口径10cm以上で観察できるでしょう。

M93散開星団(=NGC2447)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h44.6m,赤緯-23°52’視直径22’,等級6.2,星数80

微光星の集まりが、小さな三角形を作っている特徴的な姿をしています。その1辺は特に微光星が集まっていて印象深いものがあります。

NGC2421散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h36.3m,赤緯-20°37’視直径10’,等級8.3,星数70

M46、M47散開星団とM93散開星団の間にあります。冬の天の川の中にあり、うっかりすると見逃してしまいそうです。微光星が方形に集まっている特徴的な形をしています。星雲のようなベール状の中にザラザラした感覚があります。

NGC2451散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h45.4m,赤緯-37°58’視直径45’,等級2.8,星数40

NGC2477散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h52.3m,赤緯-38°33’視直径27’,等級5.8,星数160

NGC2477とNGC2451は、東西に1.5°並んだ散開星団ですが、性情が両極端の星団です。東のNGC2477は、非常に密集した星団で、ヌカ星の集まりが光のシミのように見え、星雲を交えているようなとても美しい星団です。星団から北東方向に星の列がつながっていて、星団に尻尾があるようなイメージを与えています。西のNGC2451は大きく広がった星粒の大きな星団です。中央にある赤い星が目立っています。M46、M47散開星団のコンビをもっと極端にしたようです。
南天に低い位置にありますので、南の地平線までよく晴れた夜に観察して下さい。

NGC2539散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経08h10.7m,赤緯-12°50’視直径21’,等級6.5,星数50

とも座の北天付近にある大型の散開星団です。星団の西端にある19番星が視野にインパクトを与えています。明るい星から微光星まで東西に延びた歪な形状に集まっています。星雲を交えているように見えます。

1-2.りゅうこつ座

NGC3372散光星雲 愛称:エータ・カリーナ星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経10h43.8m,赤緯-59°52’長径85’×短径80’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:佐伯和久/鹿児島県天体写真協会)

りゅうこつ座の東端付近にあります。カノープスよりも赤緯が低く、日本から観察することはできません。南半球に旅行した時に、天文ファンが好んで観察するとても人気のある散光星雲です。ηCar星から放出されたガスが星雲の正体です。散光星雲としてはとても明るく、肉眼で容易に認められます。広がりもオリオンの大星雲(M42)の4倍もの面積を持っています。

1-3.らしんばん座

NGC2627散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経08h37.3m,赤緯-29°57’視直径11’,等級8.4,星数60

小さな円形に集まった特徴の少ない星団です。冬の天の川付近で星が周囲にも多く、星団はその中に埋もれたピークのように見えます。

1-4.ほ座

NGC3132惑星状星雲 愛称:8の字星雲,南のリング星雲(Eight Burst Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経10h07.1m,赤緯-41°26’視直径30”
  • 写真等級8.2,視等級9.7,中心星等級10.07

ほ座とポンプ座の境界付近にある惑星状星雲で、南天に低いため、日本からの観察は時間帯が限られてしまいます。大きさも明るさも、こと座のM57惑星状星雲とよく似ていることから「南のリング星雲」とか、写真でのイメージから「8の字星雲」の愛称があります。M57とは異なって、中心星が8等と明るく、その周囲を淡い雲が取り囲むように見えます。

Gum12散光星雲 愛称:ガム星雲(Gum Nebula),ほ座の超新星残骸

  • 位置(分点2000.0)赤経08h30m,赤緯-45°長径1200’×短径720’
  • タイプ超新星残骸+HⅡ発光
ガム星雲の全景。画面右下の輝星はカノープス。
(NASA John Gleason)
ガム星雲の中心部。
(撮影:冨満和広/鹿児島県天体写真協会)

ほ座γ星付近を中心に、差し渡し20°もの広い範囲にまたがる超新星残骸です。超新星爆発は約100万年前に起こったと考えられています。この星雲を研究した、オーストラリアの天文学者コリン・スタンリー・ガム(Colin Stanley Gum)の名から「ガム星雲」の愛称で知られています。広がりは、りゅうこつ座,とも座にも広がっており、冬の銀河をまたぐほどです。非常に淡く、写真でも写しにくい天体です。日本では南天に低く、撮影の難しい対象です。

2重星の観察

1-1.とも座

Δ31星(=HIP 31765)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h38.6m,赤緯-48°13’
  • 主星5.1等,伴星7.4等,位置角321°,離角12.9” (2015年),スペクトルG8III

小望遠鏡で観察しやすい重星です。明るい黄色の主星と青白の伴星との美しいペアです。

Δ38星(=HIP 34065)

  • 位置(分点2000.0) 赤経07h04.0m, 赤緯 -43°37’
  • 主星A 5.6等,伴星B 6.7等,位置角125°,離角21.3” (2016年),スペクトル G1.5V+K1V
  • 主星A 5.6等,伴星C 8.8等,位置角335°,離角185.0” (2015年),スペクトル G3V

これも小望遠鏡で観察しやすい重星です。金色に輝く主星と十分な間隔を空けてオレンジ色の伴星Bがあります。よく観察すると、さらに北に185”と大きく離れたところに暗いオレンジの伴星Cが見つかります。

σ星

  • 位置(分点2000.0)赤経07h29.2m,赤緯-43°18’
  • 主星3.3等,伴星8.8等,位置角74°,離角22.1” (2016年),スペクトルK5III

大きな光度差のコントラストの面白い重星です。十分な離角がありますから分離は容易です。明るいオレンジ色の主星に赤い伴星があります。

κ星

  • 位置(分点2000.0)赤経07h38.8m,赤緯-26°48’
  • 主星4.4等,伴星4.6等,位置角318°,離角9.9”(2016年),スペクトルB6V+B6V

ほぼ等光度で、透き通った青白い双子のような重星です。とても美しい観察対象です。

2番星

  • 位置(分点2000.0)赤経07h45.5m,赤緯-14°41’
  • 主星6.0等,伴星6.7等,位置角340°,離角16.7”(2019年),スペクトルA2V+A8V

若干の光度差ですが、ほぼ等光度です。離角が大きく楽に観察できます。明るい白色の主星に黄桃色の伴星が隣にあります。M46散開星団がすぐ近くにあります。

1-2.りゅうこつ座

Rmk8星(=HIP 40429)

  • 位置(分点2000.0)赤経08h15.3m,赤緯-62°55’
  • 主星5.3等,伴星7.6等,位置角70°,離角4.1” (2016年),スペクトルA2V

南天に低く日本からは観察困難です。白色の主星と濃い黄色の伴星のペアです。

υ星

  • 位置(分点2000.0)赤経09h47.1m,赤緯-65°04’
  • 主星3.0等,伴星6.0等,位置角128°,離角5.1” (2015年),スペクトルA8Ib

南天に低く日本からは観察困難です。

Δ94星(=HIP 52102)

  • 位置(分点2000.0)赤経10h38.7m,赤緯-59°11’
  • 主星4.9等,伴星7.5等,位置角21°,離角14.6” (2015年),スペクトルK4-5III

南天に低く日本からは観察困難です。エータ・カリーナ星雲の西端にあります。

1-3.らしんばん座

ε星

  • 位置(分点2000.0)赤経09h09.9m,赤緯-30°22’
  • 主星5.6等,伴星9.5等,位置角148°,離角17.6” (2015年),スペクトルA4IV-V

大きな光度差がありますが、離角が十分ありますので観察は容易です。明るい黄白色の主星です。

1-4.ほ座

γ星

  • 位置(分点2000.0)赤経08h09.5m,赤緯-47°20’
  • 主星A 1.8等,伴星B 4.1等,位置角221°,離角41.2” (2017年),スペクトルWC8+O7.5
  • 主星A 1.8等,伴星C 7.3等,位置角152°,離角62.4” (2015年),スペクトルWC8+O9I
  • 主星A 1.8等,伴星D 9.3等,位置角142°,離角93.9”(2000年),スペクトルWC8+O9I

南天に低く、観察できる時間帯が少なくなります。離角と光度差の大きな四重星です。主星は1.8等で非常に明るく、暗い伴星Cと伴星Dはよく探さないと分かりません。離角は十分ですので観察は難しくありません。

Δ70星(=HIP 41639)

  • 位置(分点2000.0)赤経08h29.5m,赤緯-44°43’
  • 主星5.2等,伴星7.0等,位置角351°,離角4.7” (2015年),スペクトルB2IV

南天に低く、観察できる時間帯が少なくなります。光度差・離角とも適度な美しい重星です。主星は乳白色で伴星は濃い黄色です。

h4126星(=HIP 42504)

  • 位置(分点2000.0)赤経08h40.0m,赤緯-53°03’
  • 主星5.2等,伴星8.7等,位置角30°,離角16.8”(2010年),スペクトルB5

ο星の南にあります。南天に低く日本からは観察困難です。

J星(=HIP 50676)

  • 位置(分点2000.0)赤経10h20.9m,赤緯-56°03’
  • 主星A 4.5等,伴星B 7.2等,位置角102°,離角7.2”(2015年),スペクトルB3III
  • 主星A 4.5等,伴星C 9.2等,位置角191°,離角36.2”(2015年),スペクトルB3III

南天に低く日本からは観察困難です。三重星となっています。