大和ハウス工業株式会社+TeamSite CMS導入によるサイト運用の改善

大和ハウス工業株式会社(以降大和ハウス)は、1955年に創業した住宅総合メーカです。

戦後復興時におけるパイプハウスの建築からスタートし、日本初となる横断歩道やミゼットハウスの開発を行ってきました。

現在は、⁠人・街・暮らしの価値共創グループ」のリーダとして、戸建住宅や分譲マンション、賃貸住宅建築を核とした「Housing(ハウジング⁠⁠」領域、商業建築、医療介護施設や物流施設などの建築、不動産開発を核とした「Business(ビジネス⁠⁠」領域の事業を展開しています。

2007年5月、コーポレートサイトおよびプロモーションサイトとしてのWebを強化すべく、CMSの導入を実施しました。

今回、同社総合宣伝部デジタルメディアグループグループ長 大島茂氏、同グループ主任 古庄健氏、同グループ 小泉英里氏、情報システム部 中野研氏に、CMS導入の経緯から効果までを伺いました。

(写真:蝦名 悟)
(写真:蝦名 悟)

大和ハウスとしてのWebサイト

早くからインターネットに取り組む

大和ハウスは、'95年からWebサイトを立ち上げています。大島氏は当時を振り返り、次のように述べました。

「私たちのサイトは'95年から開設しています。当時は、広報室、販促室(現総合宣伝部⁠⁠、情報システム部の有志が集まり、社内でサーバを立ち上げていました。当時から神戸大学工学部へ研究員として社員を派遣するなど、インターネットおよびネットワークへの取り組みを積極的に行っていたこともあり、社内的にWebに対して前向きだったと思います⁠⁠。

Webサイトを開設する前からインターネットへの取り組みがスタートしており、社内システムのネットワーク化も図っていたとのことで、役員を含めてWebに対する意識・リテラシーが高かったことが伺えます。

ユーザに対するアプローチ

「私たちがWebサイトを立ち上げた目的の1つが、セールスプロモーションの場として展開することです。現在のサイトでは、資料請求の獲得、または現場来場を促すための情報発信を行い、ユーザに対するアプローチを行っています」⁠大島氏⁠⁠。

一般的に、Webでセールスプロモーションを行う場合、ゴールの定義が難しい場合が多くありますが、住宅事業という視点で見た場合、⁠ユーザのプロフィールを獲得すること」⁠自社の商材を的確に伝えること」というように、ゴールを明確に設定できるという強みがあります。さらに、住宅展示場に代わる探客ルートとしてWebサイトを活用することを目指しています。

「実のところ、Webサイトに求める目的はまだ完全に整理しきれていないところもあります。たとえば、コーポレートサイトとプロモーションサイトの切り分けなどです。この点を含め、今後見直しながら最適なゴールに近づけていきたいです」⁠大島氏⁠⁠。

CMS導入の経緯

なぜCMSが必要だったのか?―運用体制の見直しとリスク管理

Webサイトでセールスプロモーションをするにあたり、とくに重要だったのが各地域ごとの情報を最適なタイミングで的確に発信することでした。

同社のサイトは、CMSを導入する前まで、現在の総合宣伝部のようなWebに関する主管部署がありませんでした。各部署からの委員による委員会を構成し、そこで扱う情報などの検討が行われ、Webサイトのコンテンツは情報システム部に集約してからFTPを使って手作業で更新する体制を取っていました。そのため、

  • 情報更新作業とフローの複雑化
  • 履歴管理を含めたファイル管理ができていなかった
  • データのバックアップが取れず、過去のページに戻せない

といった管理面の課題がありました。

また、全国区の事業所展開を行っており、各事業所間における情報の共有および運用体制の効率化が必要だったそうです。

「弊社の場合、本社の情報と各事業所の情報を比較した場合、分譲住宅や分譲マンションなどの情報は各事業所が有しており、現場本社よりも多くの情報を有しているという特徴があります。さらに販売に関するイベントやキャンペーンなどは、本社から指示を出すのではなく、現場で決めて実施するものがほとんどです。こうした情報をユーザに対して的確に発信するためには、情報を本社に吸い上げるだけではなく、現場から直接発信できるような方法が必要だったのです」⁠大島氏⁠⁠。

これらを解決するための手段として、CMSによるWebサイトの運用が検討されました。

大島 茂氏

大和ハウス工業株式会社 総合宣伝部
デジタルメディアグループ グループ長

「CMS導入がきっかけとなって、ワークフローやコンテンツオーナーの権限の明確化など、サイトの運営が近代化されてきたように感じます」

TeamSiteを選んだ理由

CMS導入が決まってから、今度はどの製品を使うかが検討されました。検討に際し、各製品のユーザの声を聞いたうえで製品を比較しました。

  • 短期間の導入で早期運用を実現する
    • 国内導入実績
    • 国内のサポート体制

    などの項目を総合的に判断し、TeamSiteを選んだとのことです。

    「さまざまな製品を比較して、既存システムからの移行期間、柔軟なカスタマイズ、ユーザ会の活発さなどを判断したうえでTeamSiteを選びました。

    また、CMSの選択も重要なポイントですが、それに加えて、実際にシステムを構築する企業選びも重要でした。TeamSiteでほぼ決まったとき、実はまだ関西でTeamSiteを扱えるSIerがありませんでした。そこで、実際に開発できる実力を持った方に担当してもらうことも、需要な選択肢の1つでした」⁠大島氏⁠⁠。

    これはCMS導入にあたって非常に重要なポイントです。製品の選択はもちろん重要ですが、それとともにどの企業がどうやってシステムを構築するかも大切なのです。

    プロジェクトの開始

    目的にマッチしたTeamSite

    以上の経緯で、製品の選択および構築企業が決定し、プロジェクトがスタートしました。当初のTeamSiteおよびプロジェクトの印象について開発・実装担当者はこのように述べています。

    「先ほどのお話にもありましたが、当時関西で公開されているTeamSite事例があまりありませんでした。そのため、契約面も含めてどのようにプロジェクトを進めていくかインターウォーブン・ジャパンさんにもいろいろと問い合わせていました。正直なところ、最初TeamSiteを見たとき、実現できる機能が多く、製品自体の理解や導入が難しいのでは、と感じていたのです。

    ただ、今回の目的にあった現場情報を的確に発信していくこと、すなわち各事業所のイベントやキャンペーン情報のページ生成に関していえば、TeamSiteの機能にマッチするのではと思っていました。最初は、コンテンツの効率的な管理ではなく、効率的な生成にポイントを絞って見ていましたね⁠⁠。

    中野 研氏

    大和ハウス工業株式会社 情報システム部

    「サーバ上のファイル管理が容易になり、コンテンツ管理の作業を複数のスタッフで分担できるようになり、属人的なコンテンツ管理を脱することができました」

    古庄 健氏

    大和ハウス工業株式会社 総合宣伝部
    デジタルメディアグループ 主任

    「無闇にテンプレートを構築するのではなく、既存のWebシステムとTeamSiteを連携させることで開発費用を抑えることができました」

    要件定義・仕様書決定

    実際のプロジェクトは、リスクを分散するために、大きく

    • ワークフローの構築
    • テンプレートの開発

    の2つのフェーズに分けて、段階的に遂行しました。

    ワークフロー構築の要件定義・仕様書策定には2ヵ月程度、テンプレート開発の要件定義・仕様書策定には1ヵ月半程度の期間を要しています。それぞれについて詳しく伺いました。

    人事データベースと同期を取ったシステム

    ワークフローの開発にあたって、大和ハウス側から「既存の人事データベースと自動的に同期を取ってほしい」という要件があったそうです。これについては「まず、大和ハウス側の人事データベースで定義されているユーザ情報属性をActive Directoryで扱えるように変換しています。それをインターフェースファイルとして受信し、TeamSiteと連携させる形で同期を取りました」と開発・実装担当者はコメントしています。

    こうすることで、コンテンツへのアクセス制限や生成から承認、バージョン管理までのワークフローを、人事情報に紐付いて行えるようになったのです。

    テンプレートの開発

    続いて、テンプレート開発の裏側について解説します。実は、大和ハウスの初期の要件ではテンプレートを量産する予定だったのですが、最終的には3種類のテンプレートとなっています。

    「実は、プロジェクトがスタートした時点では、事前にルールを定めてデザインやナビゲーションを制御できるようにするために、テンプレートの量産を予定していました。しかし、それでは大変手間がかかることに加えて、テンプレートの作成そのものが目的化してしまうことになってしまいます。そこで、1回の入力で複数のコンテンツに2次利用できることを目指し、現在の3種類のテンプレートになったのです」と、大和ハウス 古庄氏はコメントしています。

    ニュースリリース用テンプレートに関しては、図1のようなシステム構成で実現しています。このように、1回の入力に対して複数のページ生成が実現でき、さらにOpenDeployを利用して、複数サーバへの配信を実現しています。

    もう1つのイベント情報ページのテンプレートは、図2のようなシステム構成となっています。こちらは、現場の担当者の情報が関わるため、さまざまな工夫・カスタマイズが行われています。

    具体的には、現在のシステムは、現場担当者がExcelで作ったイベント情報をそのまま登録し、人事データベースとの連携を利用してExcelにユーザ情報を追加できるようにしています。そのデータをXMLに変換し、定型化されたHTMLとしてWebサーバへ配信しているシステムです。このように、自動化を図れたことで、大量のイベント情報ページを一括生成する際の手間が大幅に削減できました。

    また、このテンプレートは一括生成だけでなく、個別にイベント情報ページを生成できるような構成にもなっています。

    図1 システム構成図:ニュースリリーステンプレート
    図1 システム構成図:ニュースリリーステンプレート
    図2 システム構成図:イベント情報ページ一括生成
    図2 システム構成図:イベント情報ページ一括生成

    イベント情報のテンプレートに関しては、大和ハウス側としても大きな手応えを感じているそうです。

    「従来、イベント情報に関しては情報システム部が手作業で扱い、エリアごとなどバラバラに対応していました。しかし、今回のテンプレートにより、全国一斉キャンペーンをはじめ、一元的に管理できるようになっています。まだ、すべての情報がテンプレート化されていないため、将来的にはすべて吸収し、CMS化したいですね」⁠大島氏⁠⁠。

    CMS導入後の効果

    社内体制が整備された

    続いて、導入後の運用効果について伺いました。

    「CMSに移行して、まず痛感したのが、従来のワークフローがいかにイレギュラーだったか、ということですね。従来扱っていた紙のカタログと比べて、Webには印鑑がありません。すなわち、承認フローはまったく異なるはずだったんです。しかし、導入前はまだそれに気付かず、有志の運用という意識がぬぐい切れていませんでした。

    しかし、今回のプロジェクトにより、主管部署が設立され、体制的にも運用的にも効率的になったと感じています。全社的に見て、組織の改善にもつながったと思います」⁠古庄氏⁠⁠。

    今コメントされたことは、成功事例と呼ばれるCMS導入事例で、異口同音で述べられる点で、CMSというツールを介して、Webの承認フローが整うことにより、社内体制の整備にもつながっているのです。

    大島氏曰く「補足として、各種IR情報など、従来広報部から直接発信しなければならない情報も、情報システム部などを経由せず、CMS上で直接行えるようになっています。この点も含め、ようやくシステム化されてきたな、と感じています」とのことです。

    小泉 英里氏

    大和ハウス工業株式会社 総合宣伝部
    デジタルメディアグループ

    「配信ごとのバージョン管理ができるようになったことで、過去との比較ができるようになり、確認や検証の作業が行いやすくなりました」

    オペレーションの効率化

    また、煩雑だった作業が単純化したため、作業が軽減したとも感じているそうです。

    「私は、このメンバーの中で最もオペレーションを行う機会が多くあります。従来は、HTMLのチェックやFTPへのアップなど、細かな作業すべてが手作業でした。しかし、TeamSiteになってからは、HTMLのチェック(大和ハウスWebガイドラインとの整合性)が楽になったことに加えて、人事情報と紐付いているため、担当者への連絡が大幅にスムースになっています。

    また、今までは手動で修正していたインデックスページなどにあるリストや更新情報などについては、更新するたびに1つ1つページを探し修正していたのですが、現在のシステムでは、テンプレートを使うことで一括更新が可能になっています。

    オペレーションを行う立場として、非常に大きな効果が出ていると思います」⁠小泉氏⁠⁠。

    今後の狙い

    最後に、大和ハウスとして今後どのような展開をしていきたいか、また、SCSから見てどのようなサイトにしていきたいか、について伺いました。

    より現場レベルでの運用を強化

    「現在のシステムでは、各エリア情報に関しては、まだ完全に現場担当者から直接上長を経由して公開というフローにはなっていません。その理由の1つが、画面のインターフェースだと思っています。今後、今まで以上にビジネスユーザが使いやすいシンプルなインターフェースを作り、CMSを使えるユーザの裾野を広げて全社展開を目指しています」⁠大島氏⁠⁠。

    フェーズ1プロジェクトスタート、社内稟議決裁2006年6月
    フェーズ2CMS選択およびシステム構築業者選択2006年7月
    フェーズ3要件定義、仕様書作成2006年9月
    フェーズ4企業情報系テンプレート開発2006年11月
    フェーズ5イベント情報テンプレート開発2007年2月
    フェーズ6βオープン2007年4月
    フェーズ7正式リリース2007年5月

    ターゲティングを意識したWebサイト

    また、一口に住宅と言っても、独身向けや夫婦2人向けのものもあれば、子どもを含めた4人向けのもの、二世帯家族向けのものなど、その内容はさまざまです。これまで行っていた住宅展示場による展開は、こうしたセグメント分けしたアプローチがしやすいというメリットがありました。一方で、従来のWebでは限定したユーザへのアプローチが難しい部分がありました。

    しかし、最近は「ターゲティング」と呼ばれる概念が取り入れられ、アクセスしてくるユーザごとに配信するコンテンツを切り替え、ユーザのニーズにマッチしたコンテンツを展開していく仕組みが開発されています。この点について、開発側も、⁠これからはターゲティングをしっかりしたシステムを提案し、戦略的なWebサイトを構築・運用できるようにしていきたいです。また、今までに蓄積されたXMLを有効活用し、ワンソースマルチユースの実現、モバイル対応などについても積極的に検討します」と述べています。

    大和ハウス以外にも豊富な事例を紹介!
    インターウォーブンの事例ダウンロードサイト
    https://www.iwj-event.com/download/

    サイト紹介

    大和ハウスのコーポレートサイトには、さまざまな住宅情報の他、各種建築に関する情報、地域ごとのイベントやキャンペーン情報などが掲載されている。
    大和ハウスのコーポレートサイトには、さまざまな住宅情報の他、各種建築に関する情報、地域ごとのイベントやキャンペーン情報などが掲載されている。
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