Webディレクター,かくあるべき「第二部 対クライアントへのマインド,Webディレクターの存在」

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ビジネススキル・マインドの重要性

阿部淳也さん

阿部淳也さん

阿部:

ようするに,ビジネスの話ができないとダメっていうことでしょうね。Webの部分だけではダメと。

長谷川:

そうですね。

阿部:

クライアントと話していると,ビジネスロジックのところまで行き着いてしまうじゃないですか。そこの話ができないと,最終的にはWebを使うにしても,根本的なビジネス戦略のところから作っていくみたいな話になるので。

森田:

スケジュールやコストのギャップはあって当然だと思うので,あまりこだわらない。あと,代理店を経由するとコスト感は合う,でもスケジュール感では非常なギャップがあるという(笑⁠⁠。まあスケジュールにギャップがあると結果的にコスト感も合わないということになってきますけどね。

一方,クライアントと直でやると,スケジュールは確保できても,でも,コストが合わないってはありますよね。おそらく,このギャップはそれに対するコンペとかでは埋まらないですね。

長谷川:

ええ,そうですね。

信頼関係を築く

森田:

それで,何が埋めるかというと,やはり信頼関係が重要になってくるのかなぁと。通常,僕たちが接する人たちは,クライアント担当者の位置付けとか立ち位置にも寄りますが,いわゆるWeb担当者といった場合は,たいがいはそれほど権限がないというか,たとえば予算決定に関する裁量権がないとか,そういうポジションの人が多いのではないかと思います。とすると,僕たちがクライアント担当者の味方になるっていうことが大事だと思うんです。

たとえば,プロジェクトによっては,担当者,担当部署が断行しちゃうことがあります。第三者が入るというのは効果的でもあるので,その結果,bAさんと取り組みましょう,根本からコミュニケーションを作り直しましょう,ということになったとします。

こうなったときに,予算取りなど,決裁権のあるクライアントの上層部に通すのは大変だったりしますよね。味方になるというのは,その説得材料を作ったりすることも含むわけです。

ただ,クライアントが一番やりたいことは社内調整ではなくて,当然僕らも違います。それでも,プロジェクトを進めるにあたってはクリアにする必要があります。だからこそ,クライアントの社内調整というのは非常に重要なんですよね。

この,クライアントの社内調整というのは,かなり高度なスキルが求めらると思います。新卒はもちろん,Webの制作管理,ディレクションを2,3年やってきても,いろいろ困る局面が多いのではないでしょうか。bAでは,こうした業務を担当する人間をアカウントエグゼクティブと呼んでいますが,Web制作とはまた違う能力が必要で,いわゆるクライアントサービスの経験が必要になっているのでしょうね。いわゆるディレクター,責任者になって,しかもそれは影の責任者ではなくて,表に出ていちばんのコンタクトポイントになる人なので,それができる人に担ってもらわないと困るんです。

そういう風になるのはどうすれば良いのかというと,単にコミュニケーションがあれば良いわけではなく,クライアント側の社内調整をやるという前提で,自分たちもかなり腹をくくって,全力を傾ける姿勢はすごく理解してもらうことが求められる。それを裏付ける実績やさまざまなドキュメントを作って,しかも,それを週に2時間実施する定例の中で実感してもらえるようにしていく……,といったように,本当に高度なスキルが必要だなと感じています。

長谷川:

ええ,⁠こういう動きをするとこういうリスクがありますよ」⁠再検討がいりますよ」といったある意味コンサルティングみたいなことまで必要ですね。少なくともWebとかWebマーケティングに伴う社内リソースがどうなるか,といったところまでこちらは見通す必要が出てきます。

本来にそれはプロジェクトを作る仕事だから,アカウントエグゼクティブとかプロデューサーが仕切る話ですが,Webの場合,まだまだ世の中全体としてクライアント担当者の知識やクライアント企業内のWebの認識は低いです。

なので,ディレクターという,本来的には既にプロジェクトのお膳立てされていてそれを遂行する職能である人にも,まだはっきりと案件化できていないもの,つまり不定形なリスクへの対処とかが要求されているのかな,と思うんですよ。

プロジェクトレベルでのリスク管理

森田:

プロジェクトレベルでのリスク管理,リスクの把握から,どこにプライオリティを置くかっていうのはある程度のディレクターであれば誰でもできるかもしれません。でも,それをクライアント側におけるリスクまで含めて社内調整してあげられるのか,とか。

自分の会社においては,そういう状況下においてもまだ更に人をコミットさせていくのか,とか。そういうところまで含めたリスクの管理とか,そういったものが必要なのかな,と思います。

ただ,僕が言うディレクターって,すごい高レベルのディレクターしか認めてないじゃないか,なんて人に言われちゃうこともありますけど。

それでも,1つのプロジェクトをディレクションするなんて,ビジネスを経験してきている人間であればわりと誰でもできるんじゃないかと思っています。

阿部:

すると,何本もまわしてはじめてディレクター,と?

森田:

ええ。でも,そこまでできるためには純粋ディレクターである必要がありますよね。僕自身,純粋ディレクターだから10個ぐらい同時にできているのかなという感じです。

けど,もしAD(アートディレクター)とD(デザイナー)の兼任をしていたらそれはできないと思います。デザインやりながらで,10本なんてできるわけないし,やってはだめですよね。

それでも,プロジェクトで遂行すべきことやその時間調整に専念し,クライアントの体制作りまで意識する,というのを何個もやったほうが,⁠その人が在籍している)会社としても良い結果が生まれると思います。僕自身,そのほうが社会的にもっと良くなると思っています。

そのためには,やっぱり純粋ディレクター(※Web Site Expert #14を参照)を作らなければ,と。またそこに話は戻るんですけどね。

著者プロフィール

阿部淳也(あべじゅんや)

(株)コスモ・インタラクティブ執行役員,クリエイティブチーム1 マネージャー/プロデューサー。

株式会社コスモ・インタラクティブ
「パンチの効いたアイディア」と「必然性のあるデザイン」,「妥協しない技術」によるインタラクティブコンテンツを主軸としたプロダクション。顧客企業のさまざまなシーンでのコミュニケーションを支援するために日々,熱い思いで奮闘中。Flashを主体とした映像連動のリッチコンテンツ制作やサーバサイドと連携したRIA(Rich Internet Application)開発では国内TOPレベルの実力を持つ。

長谷川敦士(はせがわあつし)

(株)コンセント代表取締役,インフォメーションアーキテクト。

株式会社コンセント
ビジュアルデザイン,システム,情報アーキテクチャを融合して企業のコミュニケーションデザインを行う,Web時代の設計事務所。コーポレートサイトから,コンテンツサイトまで幅広く手がけている。ユーザ調査から,設計/制作,そして運用までWebプロジェクトをトータルに支援する。

森田雄(もりたゆう)

(株)ビジネス・アーキテクツ取締役,Quality Improvement Director。

株式会社ビジネス・アーキテクツ
顧客企業の事業を支援するコミュニケーション戦略を提案・実施する国内最大規模のWebデザイン企業.顧客企業の経営課題を的確に捉え最新の情報技術を活用し,デザインという切り口から多面的なサービスを提供することにより,大企業の新事業立ち上げや事業の再編・再構築を支援.制作したWebサイトを通じて国内外のアワードを多数受賞している。