Webディレクター,かくあるべき「第二部 対クライアントへのマインド,Webディレクターの存在」

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状況に合わせたセンスを磨く

阿部:

たしかに,クライアントの中にも目的と手段を取り違えている人はいて,さっきの「ブログ」とか,あるいは「CSSでレイアウトしたい」とか,それが先に来てしまう人がいる。でも,それってビジネス上,どうなんですか,と問いかけたくなる。

結局,クライアントのビジネスが何か,我々が手助けすることでそれがどう発展するのか,とか,そういうのをきちんと考えられないと。ブログでもCSSでも,CMSでもそうですよね。あくまで手段です。

森田:

ええ。何をするにしても,それぞれが必要なレイヤーで使いましょう,という話ですよね。ようはさっきも出ていたように,クライアントに対して,対外的にはアカウントエグゼグティブ的な能力が必要だし,さらに,プランニング的な能力が必要だと思います。

さっきの役職の話ではないですが,ディレクターって,いわゆる偉い人なんですよね。つまり,かなりの経験を積んできているはずだっていうことで,えらいことになってる人ともいいますが(笑⁠⁠。

で,今言った能力を身に付けるにはどうしてきたかというのを,たとえば自分で振り返ってみると,僕自身そのための勉強をしてきたわけじゃなくて,結局,経験値に行き着く,というのがあって。これが結論になってしまうのは,なんというか難しいですね。

長谷川:

そうですね。それと,さっき阿部さんが言っていたように,手段と目的を取り違えない,というのは,大事な着目点ですね。ブログとかCMSとか要素技術はいっぱいあるんだけど,それはあくまで手段です。

それぞれにメリット・デメリットがあり,それを組み合わせたときにどういうことが達成できるか,というのがある。クライアントがトータルなWebのコミュニケーションをやりたい,Webを使った何らかの表現をしたい,とかそういう目的があったときに,要素技術の組み合わせがどのように機能するのか,と。

提案書をうんうんうなって作るだけではなくて,直接話を聞いてみて「それはブログでやることじゃないですよ」と即答できるセンスを持つ必要がある。さらに,そういう問題が出たら持ち帰らずにその場で解決できるはずです。

森田:

こういうセンスみたいなものは,いきなり習得するのが難しくても,磨けるものだと思います。だから,ただ本を読んだりしているだけではなくて,僕たちと一緒に仕事をすることで,感覚的に身に付くところがある。それから徐々に磨かれていく,と。

阿部:

それから,経験値であればどのぐらい修羅場をどれだけ乗り越えたかというのもあるでしょうね。

対談の様子(2⁠

対談の様子(2)

見えてきたディレクター像

手本となれるように

森田:

そのあたりをまとめて,みんなのお手本になれる人であったほうが良いですね。クライアントに行く場合には,責任者としていくわけで,イコール会社なわけですよね。代表者として会社を背負っていくわけですから,そうしたらそう簡単には崩されない自信もほしいし,それを裏付ける能力もほしいし,単純にビジネスマナーも持っていてほしいし。

阿部:

それができて初めてディレクターと名乗れますね。

長谷川:

うちもその人がプロジェクトを進行して物を作り終わったときに,そのものがコンセントのものとして言えるかどうかというのが大きな基準で。Webの黎明期のころって,デザイナーとディレクターがペアでいっぱいサイトを作るというやり方で,会社としての質の担保が明示できていなかった。

森田:

ええ,ディレクターは,コストに合致した中で,いちばん高いクオリティを作り出すために重要なポジションでしょう。

ディレクターが会社を変える

阿部:

そういう意味で突き詰めていくと,ディレクターは会社を変えるのかもしれない。

森田:

もちろんそのくらいのものですよ。実際にお金を生み出す業務をしているわけですから。優れたディレクターであれば,高品質のものを出して,きちんとした利益が得られる。さらにクライアントの満足が高くて,もう1回クライアントが「お願いしたい,これからはずっとおたくで」とも言ってくれるかもしれない。

ということは年間に企業が売り上げていくお金の何パーセントはそいつによって生み出されるといっても過言ではないわけで。そのために,会社の体制を変えたり,ディレクターが育ちやすい環境を作ったりしていくことも必要ですね。

長谷川:

そこのポジションになると会社としては,きちんとプロジェクトを完了できる頭数というカウントができるので,給与も上げていけるように取り組んでいけるし。

森田:

ええ,それに会社が抱えられるプロジェクトの数は,いってしまえばディレクターの数に依存しますから。1人で抱えられるのは3,4個だとして,そういう人間が10人いればほとんどを担っているといってもいい。極端な話,スタッフは直接社内いなくても,内容に応じて集めることは可能だからね。

阿部:

そこも大きなポイントですね。計算できて,しかも質が高い,⁠仕事を集めた後に実現できる)そういう敏腕ディレクターはなかなかいない。

長谷川:

ええ,そこを押さえられる人材がいないというのは,結果としてボトルネックになります。

森田:

たしかに,外部取引先をうまくディレクションできる人間って本当に少ないと思います。外注先が1つならまだしも,複数と関係した場合,とても難しくなる。でも,ディレクターである以上,それができてほしい。

だから育てるという意味では,無理矢理キャパシティ以上の仕事与えて経験させてみる,というのも手かもしれない。はじめは1社でやってみて,次からは別途スポットで,ディレクションの範囲がはっきりしている外部のパートナー,たとえばカメラマンだけ入れてみるとか,さらにその次は2社にしてみるとか。

長谷川:

うちでも若手には,外部のデザイナーと一緒に仕事をしてもらったりしています。内部の人間同士では,ある程度理解が深まっていて,状況が読めると思います。そのやりとりではわからないこととか,外部とコミュニケーションして初めてわかりますから。そういうコミュニケーションをとって,その中で品質をどうやって担保するのか,とか。そのためにどのように説明するか,というのを考えるようになります。

阿部:

そうなってくれば,まず,ディレクターが方針を作り込んで,それをみんなに理解してもらえるように伝えなければいけない,というのがわかってきますしね。

長谷川:

僕たちは問題解決をすることをミッションにしているわけですから。ディレクターは,なかでも最も問題解決を実現できる人であるべきなんですよね。

まとめ

以上,⁠Web Site Expert』およびgihyo.jpにて,2回に分けてWebディレクターについてお話しいただきました。

ディレクター,とくに,Webディレクターという仕事がどういったものであるのか,現時点での一般的な認識,というところから,お三方の経験をふまえたWebディレクターとして持っているべきスキル,マインド,さらに,これからWebディレクターを目指す人に向けたメッセージ,その育成方法などについて,興味深い内容をお話しいただきました。

この座談会が,これからのWebディレクターのレベルアップ,さらにはWeb制作業界の全体の発展につながればと思います。

取材・文・構成=Web Site Expert編集部
写真=武田 康宏

著者プロフィール

阿部淳也(あべじゅんや)

(株)コスモ・インタラクティブ執行役員,クリエイティブチーム1 マネージャー/プロデューサー。

株式会社コスモ・インタラクティブ
「パンチの効いたアイディア」と「必然性のあるデザイン」,「妥協しない技術」によるインタラクティブコンテンツを主軸としたプロダクション。顧客企業のさまざまなシーンでのコミュニケーションを支援するために日々,熱い思いで奮闘中。Flashを主体とした映像連動のリッチコンテンツ制作やサーバサイドと連携したRIA(Rich Internet Application)開発では国内TOPレベルの実力を持つ。

長谷川敦士(はせがわあつし)

(株)コンセント代表取締役,インフォメーションアーキテクト。

株式会社コンセント
ビジュアルデザイン,システム,情報アーキテクチャを融合して企業のコミュニケーションデザインを行う,Web時代の設計事務所。コーポレートサイトから,コンテンツサイトまで幅広く手がけている。ユーザ調査から,設計/制作,そして運用までWebプロジェクトをトータルに支援する。

森田雄(もりたゆう)

(株)ビジネス・アーキテクツ取締役,Quality Improvement Director。

株式会社ビジネス・アーキテクツ
顧客企業の事業を支援するコミュニケーション戦略を提案・実施する国内最大規模のWebデザイン企業.顧客企業の経営課題を的確に捉え最新の情報技術を活用し,デザインという切り口から多面的なサービスを提供することにより,大企業の新事業立ち上げや事業の再編・再構築を支援.制作したWebサイトを通じて国内外のアワードを多数受賞している。