新春特別企画

2010年をふりかえり,2011年のキャンペーンサイトを展望する

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「伝えること」「伝え広がること」を考える。

これまでいくつかの事例を追って,その特質すべき点をあげてきました。私が「良い」と思える仕事は「ユーザーに伝える」ことをしっかりと考えているサイトです。クライアントのニーズを理解し,ユーザーの気持ちを考え,どう伝えるかが考え尽くされた仕事。プランナーという職種である以上,それが判断の基準となっています。どんなに凄い技術でも伝わらなければ意味がない。WEBを知らない人も感動できるか,ただそれだけです。

Twitterがトレンドとして先行しすぎた2010年は,⁠仕組みだけ」でTwitterやソーシャルネットワークをベースとした「キモチの導線設計」がなされていないキャンペーンサイトも多かったですね。ほとんど記憶に残っていません。技術や仕組みが先行する仕事では「キモチ」が忘れ去られがちです。冷静にソーシャルネットワークという生態系を観察したチームが素晴らしい仕事に結びつけているのではないでしょうか。⁠伝える」ということから,それが「伝え広がっていく」までの言葉のバトンを想像し,そこに追随するキモチを繋いでいく。そこまで考えることができて,はじめてキャンペーンサイトの真意がユーザーに届くはずです。

そのような意味で2010年を総括し,さらには2011年の良き指標となったのが,川村真司さんが監督したSOURのインタラクティブ・ミュージックビデオ映し鏡でしょう。

SOUR「映し鏡」

SOUR「映し鏡」

ソーシャル上の自分を取り巻く人々を「映し鏡」としたソーシャル上のもう一人の自分,というアイデアは,楽曲の世界観を見事に表現しており,その世界を表現するために技術が裏側で支えています。技術を見せたい表現ではなく,表現を支える技術。それが見事に相乗効果となった事例だと思います。広告ではなくMVですが「伝える」という観点でいくと今年最も打ちのめされた事例でした。

ブレークスルー

SOURの「映し鏡」はWEB業界にとって1つの大きなブレークスルーだったと思います。UNQLO LUCKY LINEを含め,WEBに無関心な友人たちが,これらのサイトが面白い,といいだしたのです。今まではそんなことありませんでした。業界内で盛り上がってる,とはよく言われたものです。しかし,その壁が倒壊しようとしている。そんな気配を感じる2010年でした。人々がWEBに近づいたこともあると思います。Twitterという日常に強くコミットしたツールが普及したこともあるでしょう。

しかし何より,上記で紹介したキャンペーンサイトのメッセージが強く真っすぐなものだったことが,壁を壊し始めた要因でしょう。日清カップヌードル「hungry?」のようなTVCMの王道レベルのものをWEBでも作り上げることができるのではないでしょうか。むしろ,過去の素晴らしい広告を越えるのは,WEBなくして作り上げれないとさえ思います。

最後に

先日,Facebookのユーザー数が5億人を越えたというニュースがありました。仮に国として考えた場合,中国,インドについで3番目にFacebookのユーザー数が多いといえます。WEBは軽々と国境を越え,私たちはYoutubeで海外の面白動画を眺め,海外の友人とFacebookでチャットし,Twitterで好きなアーティストにエールを送ります。

技術も社会も流行りも好みも,人の気持ちも,常に変化し流れていきます。世界の対話方法や文化を理解した上で,私たちはそこに流れる人々の気持ちをしっかりと見つめる必要があります。簡単に繋がれる時代だからこそ,⁠広告」が示す未来は「理想」であってほしい。私はそう思います。誰もが憧れたり,感動したり,微笑んだりできることは,受け手より先に作り手が前に前に突き進んで物事を捉えているからです。⁠映画は夢を魅せるため」といわれます。ディズニーランドなどのエンターテイメントすべてが「夢を魅せる」ために努力しています。今年,WEB広告はこの領域に足を踏み込む必要があるでしょう。私たちはその一撃をたたき出す必要があると思います。

すでにWEBではないのですが,私が好きな広告を最後に紹介して本稿を結ばせていただきます。

この動画は,2010年の頭に公開されたCoca-Cola の「Happiness Machine」というプロジェクトです。こんなベンダーあったらワクワクしますよね。新しい技術なんて何もありません。裏側に人がいるだけ。何をしたら皆よろこぶか。驚くのか。笑ってくれるのか。人の気持ちをしっかりと考えて作られた仕事は,古くなってもきちんと伝わるものです。

Twitterがキャンペーンで使い古され,今年はソーシャルグラフを用いた機能的なキャンペーンサイトが量産されるでしょう。それ以上にクリエイティブの第一線では,アイデア先行型の戦国時代に突入する予感がします。どちらの領域でも奮闘できればと思いますので2011年も是非,1→10designにご注目ください。

著者プロフィール

松倉早星(まつくらすばる)

1983年北海道出身。1→10designにてプランナーとして在籍。2009年より宣伝会議WEBディレクション講座講師を担当。国内外のアワード受賞多数。

プライベートワークとして,クリエイター向けポータルサイト “HITSPAPER”,クリエイティブカンファレンス “HIGH5″,クリエイターのためのワークショップイベント “NIT west”,ミュージックポータルサイト “your unknown music”などを手がける。

URLhttp://www.1-10.com/
Twitterhttp://twitter.com/sbr_m