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コンテンツの数と発売タイミングが大切になる1年――電子書籍と電子出版ビジネスの2013年→2014年

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読書端末の普及と進化

続いて,コンテンツと読者をつなぐ,読書端末の動きについて見てみます。

読書端末にはいくつかありますが,大きく,

  • 専用端末
  • スマートフォン
  • スマートタブレット
の3つに分けられます。

まず,Googleが2013年7月に発表したスマートフォンの利用に関する大規模調査Our Mobile Planetによれば,日本全体でのスマートフォン利用者数が25%(2年前は6%)と伸びているとのこと。これは非常に大きな動きだと感じていて,専用端末やスマートタブレットを購入しなくても,すでに電子書籍読者になりうる潜在読者が増えていると見られるからです。すでに,Amazon Kindleや楽天Kobo,Google Playブックスをはじめとした電子書店は,スマートフォン向けの電子書籍リーダーアプリを展開しており,今後の電子書籍普及の礎になると予想できます。

持ち運びしやすい6~7インチ端末が増えてきた

スマートフォンの普及は電子出版業界にとっては大変嬉しいことの1つと言えますが,それ以上に筆者が期待したいのが,スマートタブレット,とくに6~7インチサイズのデバイスです。

2010年に発表されたiPadは10インチで,登場当初は非常に注目を集めました。しかし,そのサイズと重さから持ち運びするには少々大きすぎるという声がありました。それから,一昨年のNexus7,そして,iPad miniが出て,2013年はそれらのブラッシュアップが行われ,6インチ,7インチの個人向けタブレットが数多く登場してきています。

このサイズの強みは読者にとっては持ち運びしやすい点ですし,コンテンツを提供する出版社側から見れば,コンテンツの表現力を高められるといった利点があります。2014年以降,このサイズのデバイスがどこまで普及するかというのは,電子出版業界にとってカギを握ると思います。

同じく持ち運びしやすい電子書籍専用端末については,筆者はここ数年の⁠つなぎ⁠の位置付けが強いと感じています。今現在は,電子書籍に特化した端末かつ入手しやすい価格帯で提供されていることが,読者にとってのメリットとなっていますが,この先デバイス,とくにスマートタブレットの進化,コモディティ化が進むことで,⁠専用端末の)価格メリットは小さくなるわけで,自然に専用端末→スマートタブレットにシフトしていくのではないかと思います。この動きは,日本におけるワープロ専用機→パソコンの動きに近い状況になると予想します。

コンテンツをインターネットの向こう側における強み

最後に,上記3種類の読書端末に共通している強みが,コンテンツ(電子書籍)をインターネットの向こう側に保存できるようになってきたことです。Amazon Kindleストアを始め,購入したデータは,電子書店側で管理され,同じIDを利用すれば,異なるデバイスから継続的に読書ができるようになってきました。これは,電子出版業界にかぎらず,インターネット上でデータを扱う分野すべてに言えることですが,ユーザ自身のデータ保持の概念が変わりつつあり,電子出版・電子書籍に関しては,その変化のタイミングにちょうど良く普及し始めているという印象です。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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