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電子出版の世界を“アップデート”していこう~2019年の先の電子出版ビジネスを考える

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これからの電子出版ビジネスのカギは「好奇心を持つこと⁠⁠~新時代の電子出版ビジネスに向けてのアップデート

以上,2018年の動き,2019年以降の電子出版ビジネスおよびインターネットにおける出版ビジネスの展望についてまとめました。

最後に,2019年,そして,これからの電子出版ビジネスに関わる立場としての心構えをまとめてみます。

著作権の観点から考えてみる

まず,2019年以降の話題として意識しておきたいのが著作権法の一部を改正する法律(改正著作権法)です。平成30年5月18日に成立し,同年5月25日に平成30年法律第30号として公布されました。本法律は,一部の規定を除いて,平成31年1月1日に施行されています。

著作物等の権利保護期間の延長や著作権等親告罪の一部非親告罪化が行われています。主な改正のポイントは次の4点です。

  1. デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定(※)の整備
  2. 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備
  3. 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
  4. アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等

※権利制限規定:著作権者の権利を制限し,著作権者の許諾なく著作物を利用することができる例外的な場面を定めた規定。

2018年は漫画村騒動をはじめ,⁠電子)出版業界は海賊版のトラブルに巻き込まれました。インターネットを活用する以上,避けては通れない問題です。

ですから,トラブルに合ったときの対処として,著作権を理解しておくことは重要ですし,そのために今回の「改正著作権法」を理解しておくことをおすすめします。

鷹野凌氏がHON.jp News Blogに投稿した著作権の保護と制限の規定がもうすぐ変わる ~ 保護期間延長,非親告罪化,柔軟な権利制限,教育の情報化対応など,まとめて解説に要点がまとまっていますので,ぜひ一度目を通しておくと良いでしょう。

新しい技術を積極的に知る・触れる・取り入れる

まず,著作権の改正とその理解の大切さについて触れましたが,これは権利の話だけではありません。電子出版を取り巻く環境では,技術は進化し続けており,それに伴う環境が変化していくと予想されます。

1つ例を紹介すると,2017年に注目されたEPUBリーディング機能搭載のWebブラウザ「Microsoft Edge」に関して,2018年12月,新たなレンダリングエンジンとしてChromiumを採用し,大幅にリニューアルすることが発表されました。このようなことが起こり得るのが技術の世界です。

その後についてはまだ発表されていませんが,筆者個人としては,Microsoft EdgeのEPUBリーディング機能や読み上げ機能には期待していたので,良い形でリニューアルされることを願っています。

他にも,今回詳細は取り上げられませんが,改正著作権法で触れられている「教育の情報化」「障害者のアクセス機会の充実」に関しても,教育のICT化に伴うデジタル教科書であったり,技術進化に合わせたアクセシビリティの確保など,権利的側面だけではなく,技術的側面から見て変化の最中にあると考えられます。

これらの変化や転換は,いわゆる技術的な外的要因が多く含まれています。この変化に対応するためには,技術動向,とくにインターネットを中心としたさまざまな技術に対して,アンテナを高くして積極的に情報を収集し,どの技術が活用できるかを判断するための知識を増やすことで,次の一歩に進むための判断や選択肢の幅が広がるでしょう。

ですから,従来積み上げてきた仕組みやノウハウ,経験だけに頼るのではなく,まだ見えない技術,新しい体験を意識しながら,自発的に習得していくことが大事だと,筆者は考えています。端的に言えば「24時間好奇心を持ち続ける意識」です。

とは言え,たとえば出版社の立場で,関係者全員が最先端のインターネット技術を追求していくことは非常にハードルが高いです。ですから,自分自身ですべての知識を身に付けるだけではなく,パートナーを増やし,綿密にコミュニケーションを取りながら,協力して補完しあう意識も大切だと考えます。

筆者は今の会社で電子出版に関わって今年で9年目を迎えます。今後も売上数字や煽情的な記事にのみ踊らされるのではなく,新しい技術や体験に向き合いながら電子出版ビジネスの健全な成長に取り組みたいです。少し気が早いですが(笑⁠⁠,来年のコラムでは,新しい技術と体験の振り返りと,それに基づく,より明るい展望をまとめたコラムをお届けできるよう,取り組んでまいります。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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