The Analytics──誰のためのWebアクセス解析か?

第2回 解析ツールを選ぶ前に

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ツールを導入するメリット

さて,最後に予算である。実はこれが一番面倒なものである。とりあえず部長に確認をとってみた。

⁠Web解析ツールの予算なんてとってないよ。そんなの考えてなかったし。ただ,事業部での予算にまだ余裕があったみたいだから,各部署の承認がとれれば確保はできると思うよ。」

なんと,社内調整が必要だとのことだ。これを行うためにはWeb解析ツールの重要性を各部署の部長に理解してもらわなければならないということだ。なんとも面倒な話である。

矢島に相談のメールを送ったところ,ちょうど資料があるということで送ってくれた。簡単に整理をすると以下の3点であった。

  • Webサイトの数字を可視化することによる適切なサイト評価を行える
  • ツールを利用してサイトを最適化することにるROIの向上
  • サイトの行動データを利用したマーケティングアプローチの確立

矢島にもらった資料を手直しし,資料をもって各部署を回ったところ,ある部長から質問が1つ出た。

無料と有料の差

「最近は無料のツールがあると聞いたけど,有料を導入するのは何故だい?」

これをクリアできれば承認をくれるとのことだ。しかし難題である。矢島にもらった資料を再度見直したが,さすがにこれについては資料にもなかった。矢島に連絡すると,今日の夜にいつもの飲み屋で会おうとの連絡だった。結局,ビールなのである。

少し送れて到着した矢島だが,この整理で送れたとビールを飲み干しながら言い訳をしていた。

⁠あんまり考えたこと無かったんだよね。でも,整理すると1つかな。データの再利用について。いろいろ考えたけどこれがすべてだと思う。」

なんでも現在,無料で提供されている解析ツールは有料に引けを取らず,非常に優秀なツールが提供されているとのこと。しかし,それらは集計した解析データは見ることができるものの,そのデータの所有権はツールベンダにあることが多いそうだ。

有料のツールの場合,そのデータの所有権は利用している企業側にあるのが普通なのだそうだ。そこでの違いは,Web解析ツールを利用した評価という部分はどちらでもできるものの,アクセス情報をもとにマーケティングに応用していくことが無料の場合はできないとのことだ。

たとえば会員がアクセスしてきている際に,その情報を解析ツール側で取得できるようにしておき,後でメールを送信するといったことも,有料ツールならできるとのことだ。確かにこれは大きな違いかもしれない。

また矢島によると,Web解析データは今後,企業の資産として非常に重要なデータとなってくるだろうとのことだった。企業側にこの権利がないとなると,社内的にも確かに後でやっかいなことになるかもしれない。

次の日,矢島の話を整理して疑問を投げかけた部長に確認をしに行った。この内容で納得していただけたようで,承認を得ることができ,予算も確保できるとの約束がとれた。

これで,ほぼほぼ事前に整理しておくことは大丈夫だろう。後はどの方式を利用するかが問題である。これは矢島の資料(表1)にも載っていたのでこれを参考にし,いくつかのベンダと話をしながら決定することにした。

表1

  ログ型 パケットキャプチャ型 タグ型
提供形態 ソフトウェア
(自社でサーバを用意)
ソフトウェア
(自社でサーバを用意)
ソフトウェア
(自社でサーバを用意)
ASP
ログ保存期間 サーバ容量による サーバ容量による サーバ容量による サービスによる
(通常2年程度)
料金 ライセンス料+サーバ費 ライセンス料+サーバ費 ライセンス料+サーバ費 PVカウント
備考 大規模なサイトの場合,解析するログ容量が多かったり,サーバが分割されてしまっていることで解析に時間がかかってしまうことがある。 Webサーバへのアクセスを集計するため,外部のコンテンツキャッシュサービスを利用している場合,その部分の計測ができない。 JavaScriptを利用したデータの送信となるため,携帯やPDAなどJavaScriptが利用できない端末では解析できない。最近ではRIAや動画の計測もできるものが出てきている。

取得する項目についてはよくわからなかったので,各ベンダに相談をしながら進めていこう。あとは明日からベンダと話をして選定をしていくだけである。

つづく

著者プロフィール

安西敬介(あんざいけいすけ)

大手Eコマースサイトにおいて、システムエンジニア、コンテンツディレクターを経て、マーケティング戦略の支援や、Webサイトの分析を行う。

URLhttp://an-k.jp/blog/


松田恵利子(まつだえりこ)

ダブルクリック株式会社 アナリティクス事業部

WEBサイト制作・開発,Webディレクター,モバイル向けマーケティングツール事業の立ち上げを経て,2005年ダブルクリックに入社。さまざまな企業へのアクセス解析ツールの導入を担当する。現在は,アクセス解析チームを取りまとめる一方,Webマーケティングサービスの事業開発を行う。

URLhttp://www.doubleclick.ne.jp/