ネットだから気をつけたい! 著作権の基礎知識

第2回 ありがちな「思い込み」~中途半端な"知識"はトラブルの元

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「個人で楽しむだけですから!」

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「自分のホームページに,マイナーな企業キャラクターを集めた『珍キャラ名鑑』というコーナーがあるのですが,そこに御社のキャラクターを乗っけてもいいでしょうか。友人・知人しか見に来ないようなサイトですし,もちろん広告も載せてません。自分の趣味で楽しむだけだからいいですよね?」

ここまで露骨ではないにしても,これに近い問い合わせがたまに来たりすることがあります。正直…困ってしまいます(苦笑⁠⁠。

著作権法の中に「私的な著作物の複製は違法ではない」というルールがあることは良く知られていますし,それゆえ,⁠個人で楽しむのであれば何でもOK」という発想につながってくるのかもしれません。

でも,著作権法の条文をよく読んでみましょう。

著作権の目的となっている著作物(略)は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,次に掲げる場合を除き,その使用する者が複製することができる。⁠第1項本文)

著作権法第30条(私的使用のための複製)

ここで著作権が及ばない,とされているのはあくまで「複製」行為(及びこの規定が準用される「翻案」行為)だけです。

そして注意しなければならないのは,インターネット上に開設された自分のホームページに他人の著作物を掲載する行為は,単なる「複製」にとどまる行為ではない,ということです。

冷静に考えればわかるとおり,ひとたびホームページ上に著作物を掲載すれば,⁠理論上は)ネットワークにつながっている人なら誰でもそれにアクセスすることが可能になるわけです。そうなると,これは立派な「公衆」への「送信」行為といわざるを得ません。

したがって,著作権法30条の文言上カバーされないのはもちろん(著作権法上,⁠複製」「公衆送信」は異なる概念です⁠⁠,そもそもこのような場合に著作物の利用を"私的"という範疇にとどめて考えること自体もはや不可能,ということになってきます(実際に閲覧している人が多いか少ないか,というのは,少なくとも侵害にあたるかどうかを判断する場面では大きな意味を持ちません⁠⁠。

ちなみに,⁠公衆送信」の定義は,以下のとおりです。

公衆送信 公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で,その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が2以上の者の占有に属している場合には,同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

著作権法第2条1項7号の2

「公衆」「特定かつ多数の者を含む」⁠第2条5項)もの,と定義されていますから,閲覧できる人が物理的に限定されるSNSのようなツールを使った場合は,著作権法上セーフとなる余地がないわけではありません。

しかし,⁠多数」「少数」か,の境界線すら明確になっていない現状では,ホームページに著作物を掲載する行為のリスクが極めて高いというのは間違いないところです。

なお,これに似た「思い込み」として,

「社内で使うだけですから・・」

というのもあります。

しかし,会社の中で使う,といっても,社内LAN上の情報掲示板に乗っけたりしようものなら,もはや単なる「複製」の域を超えてしまいますし,仮に特定の社員向けに少部数のコピーをとるだけだとしても,⁠私的」の要件を満たすかどうかは微妙なところです。

したがって,リスクヘッジの観点からは,⁠社団法人日本複写権センター」のような著作権管理団体と契約するなどして,憂いを減らしておくのが得策というものでしょう。

なお,⁠個人で(社内で)使うだけなら大丈夫」という"思い込み"がこれまで通用してきた背景には,権利者側がそんな瑣末なものにまでいちいち権利行使してこなかった,という歴史的事実(笑)もあったものと思われます。
しかし,インターネット上の著作権侵害コンテンツへの監視の眼は年々厳しくなっているようですし,昨今では「社内LANへの雑誌記事掲載」ですら訴訟になって,無断掲載したユーザーが損害賠償を命じられてしまう状況ですから(注:東京地裁平成20年2月26日判決参照⁠⁠,注意を払うにこしたことはありません。そんな状況が果たしていいことなのかどうか,ということは別として。

著者プロフィール

企業法務戦士F-JEY(きぎょうほうむせんし・えふじぇい)

199×年,都内某企業入社。以来,法務部署で禄を食む日々を送る。ここ数年はもっぱら知的財産絡みの仕事に従事。最近,周りから「そろそろ飽きただろう」と言われることも多いが,技術もビジネススキームも日々進化するこの世界,当分お腹いっぱいにはなりそうもない。

2005年以降,ブログ「企業法務戦士の雑感」をささやかに更新中。