見えない起算点 (1) ~名もなきコンテンツの行方
- (1)
X社の総務部で創立記念誌の編纂を担当しているAさんが,
会社の歴史を象徴するような過去の写真を探していたところ, ある自治体関係者B氏から, 1950年代後半の活気あふれるX社工場の様子を映した写真が残っていることを知らされ, 記念誌発行のために寄贈しても良い, との申し出を受けました。 Aさんは,
「その時代の写真はちょうど足りなかったところで, まさに渡りに船だ」 と, 喜んだのですが, よくよく聞いてみると, その写真は庁舎の倉庫の中に眠っていたものをB氏がたまたま見つけ出したもので, 誰が撮影したものか, 過去に公表されたものなのかどうか, といったことを知っているものは誰もいない, ということが分かりました。 Aさんは,
果たしてこの写真を記念誌の中で使ってよいものかどうか, 仮に使うことにするとして, どういった手続きを踏めば良いのかと, 悩んでいます。
先ほども少し触れたように,
整理すると,
①一般の著作物…著作者の死後50年を経過するまでの間
②無名又は変名の著作物…著作物の公表後50年を経過するまでの間
(ただし,存続期間満了前に著作者の死後50年を経過していると認められる場合には, 死後50年を経過していると認められる時に消滅する) ③団体名義の著作物…著作物の公表後50年を経過するまでの間
(創作後50年以内に公表されなかったときは,創作後50年を経過するまでの間) ④映画の著作物…著作物の公表後70年を経過するまでの間
(創作後70年以内に公表されなかったときは,創作後70年を経過するまでの間)
原則はあくまで
問題は,
たとえば,
しかし,
この事例ではそもそも
ちなみに,
しかし,
かくして,
- ※
- なお,
著作者不明の場合に著作物を利用するための方法として, 「文化庁長官の裁定」 を受ける, という制度があります (著作権法67条)。しかし, 元々使い勝手が良いとは言い難い制度である上に, 対象が 「公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され, 若しくは提示されている事実が明らかである著作物」 に限られているため, (1) の事例のような場合にBさんが用いるのは厳しい面もあるのではないかと思います。
作品を見ただけで,
原則的な基準を