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第5回 VOYAGE GROUP執行役員CTO小賀昌法氏に訊く(前編)―成長をサポートする仕組みと文化をつくる

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目の前で問題を解いてもらうことも

さて,VOYAGE GROUPの面接では,その場で問題を出して目の前で解いてもらうことも重視しているそう。これは,やり方次第でいろんな能力が明らかになりそうですね。

小賀さん「簡単な問題を出して,ホワイトボードにプログラムを書いてもらったり,設計図を書いてもらったり。そこも単純に答えを知っているかどうかということではなく,どういうふうに考えて組み立てていくかとか,こちらが何か指摘したときにどんな回答をするかをみます。問題は,けっこう曖昧な仕様で渡すんですね。なので,確認しなければ本当はアウトプットが出せないはず。なのに,確認しないで自分の考えだけで進めちゃう人もいる。きちんと『ここってこういうことでいいんですよね?』って確認がとれる人かどうかとか,そういったところを重視してみています」

こうしたスタイルを取り入れたい企業は,問題を解ける解けないだけで判断せず,簡単で少し曖昧な問題を用意しておき,アウトプットに至るまでのやりとりも含めた評価をするのがポイントですね。

教えるのではなく,成長をサポートする仕組みと文化をつくる

では,こうして採用した人たちの入社後の育成に関しては,どのような考えをおもちなのでしょう。

小賀さん「育てるってことは,すごく大事なことだと思っています。ただ私個人としては,教育というか,教えるということはできるだけしたくない。いわゆる内発的動機付けというんですかね。本人に成長したいとか,これを成し遂げたいという思いがあって,その思いをサポートする仕組みづくりとか,そういう文化がある環境づくりを基本に考えています。

なので,本人の学びたい意欲に対して,それをサポートする勉強会であったり,会社のほうで費用負担して外部の有償のものに出られるようにしています。本人の成し遂げたいことと,会社の事業の方向性をできるだけすり合わせていって,⁠自分の成し遂げたいものをやる,それが事業貢献につながる⁠というふうにしたいと思っています」

勉強会は「勝手にやる」のを「いいね!」と褒める

勉強会は社内でも活発に行われているようですが,こうした動きはどのようにして育まれていったのでしょうか。

小賀さん「組織には,少なからずそういうのが好きな人間ているんですよ。弊社でいうと,そういうのが好きな人間が勝手に始めて,それを会社として『いいね!』と褒める。それが段々浸透していって今に至るという感じですね。

あと,エンジニアがエンジニア以外の人にPHPやJavaScriptの勉強会を開いたり,デザイナーがデザイナー以外の人向けに話をしたり,ビジネスの人間が勉強会やるよって言ったらエンジニアもデザイナーも集まるっていう,そういうところがより特徴的じゃないかと思います」

職種の垣根を越えて,社員が率先して教えあう文化があるって,結構すごいことですよね。こういう文化を育むときに大事なのは,⁠少なからずそういうのが好きな人間」を組織の側がスポイルしないことかもしれません。上のほうの人たちがあまり力みすぎて,⁠いいね!」を超えた介入をしてくると,本人たちの内発的動機づけは逆にそがれてしまったりする。このあたりのバランス感覚をもって,現場をサポートするという立ち位置を大事にしてこられた配慮が奏功しているように思いました。

「そういうのが好きな人間」じゃない人には?

しかし,全員が全員「そういうのが好きな人間」でもないわけですよね。特別,勉強会を主催したり登壇することを志向しない人たちに何か働きかけていることはあるのでしょうか。

小賀さん「全員が勉強会を主催したり登壇することがいいことかっていうと,別にそういうことでもないし,そういうのは得意じゃないんだけど事業に貢献している人間もいます。それでいいと思っています。

ただ社内では,たとえば『ライトニングトークの時間に5分しゃべってよ』って声をかけたりはします。そうすると,⁠まぁ,じゃあ,やります』って言ってくれる。ぐだぐだでも,まぁいいじゃないですか。また,お昼時間にみんなで弁当持ち寄って,自分たちが仕事でどんな技術を使っているか発表する『S1グランプリ』というのがあって,そこで話してもらったり。それも別にきれいな資料を作る必要もないし,相手は同じクルー(社員)だし。レビューの場もそうですね。⁠ちょっとそれレビューするから,いつまでに資料作っておいて!』って言って,その人が作ったものをプレゼンしてもらってレビューする時間を設けたりもしています」

「小さな成功体験を積み重ねる」場を用意する

小賀さん「そういったことで,ちょこちょこ自分の考えをアウトプットする機会は,増やしています。やっぱり,本人がやりやすい環境を作って,小さな成功を積み重ねるっていうのは大事だと思います。

一旦がーっと何かやった後に,振り返って体系的に学ぶとか,自分がやったものを整理することは成長する上ですごく大事なことだと思っています。アウトプットする場ができれば,5分とはいえ整理しないといけないですからね。なので,そこは私の強権を発動して『やれー』って言って。で,やったら『良かったよ』って褒めるのも大事にしています」

こうして,小さな強制をもって小さな挑戦をしてもらい,小さな成功体験を積み重ねていく道筋を作っているんですね。その細やかで継続的なサポートが,社員の方それぞれのいろんな可能性に通じていくように思いました。

著者プロフィール

林真理子(はやしまりこ)

株式会社イマジカデジタルスケープ トレーニングディレクター。1996年より一貫してクリエイティブ職のキャリア支援事業に従事。デジタルハリウッドやエン・ジャパンを経て,2005年より現職。Webに関わる実務者を対象に,クライアントの社員研修や個人向け講座の企画コーディネート,カリキュラム設計,教材開発,講座運営,評価などのインストラクショナルデザインを手がける。日本キャリア開発協会認定CDA,日本MBTI 協会認定MBTI 認定 ユーザー。

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