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第11回 若手社員の単能工化を食い止める~株式会社アイ・エム・ジェイ川畑隆幸氏が赤裸々に語る!IMJ人材育成への挑戦①

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4ヵ月で24講座,ユニークで240名弱が参加

今年度上期(実質6~9月)の実施状況を伺ってみると,さすがに規模が大きい×気合いが入っているだけあって,最初からかなりのエネルギー投下。

川畑さん「講座づくりは,外部のパートナーに協力していただきながら進めています。社内講師を想定し,講師手当制度も作りました。現在は,外部から購入したプログラムを多少カスタマイズして,いろいろな方法を試しながらトライアンドエラーしている感じです」

講座数24講座
申込件数1400件
ユニーク申込者数240名弱
講座テーマプロジェクトマネジメント,ソーシャル,ファシリテーション,フロントエンド用の専門研修,コピーライティング,ディレクション,ビジネス研修,英会話のプライベートレッスンなど
講座時間基本2時間
開催ペース週2~3講座

川畑さん「教室となる会議室の都合上,定員は35名ですが,24講座中19講座は30名以上の申し込みがある状態です。年間で40講座を予定,同じ講座を再度開催することもあるので,実際には,年間70~80講座くらい開催する見込みです」

参加を強制しないポリシー

申込件数があるということは,希望者が自由に参加できるスタイルってことですよね?

川畑さん「はい。今回,研修の参加には一切強制力は持たせないことを教育推進室のポリシーとして始めました。⁠みんながスキルアップしたいとか,機会を提供してほしいって言ってるんだから,もちろん参加するんだよね!⁠というスタンスです。私の中では,これでメンバーが参加しなかったら,⁠口だけじゃないか!⁠って言って止めてしまおうかというくらいの乱暴なスタンスだったんです。

さらに言うと,自分なら,強制されたら参加しにくいなと(笑⁠⁠。ですから,イントラサイトで告知して,⁠今月こういうプログラムがありますので,ぜひ参加してください⁠というメールを流すだけです。そして,会議室のキャパシティを超えたら抽選となります」

しかし結果的に,社員からはかなり好反響を得られた様子。社内でも,この取り組みが認められるようになってきたとのこと。

「やって良かった!」と実感できる効果

では,この上期を終えてどのような効果を実感されているのか。6つのポイントでまとめてみました。

【効果1】「会社が自分たちに投資してくれている」という意識変化

川畑さん「3ヵ月に1回,中間層・若手層を25名くらい集めて合宿を行っています。ここでは役員と一緒に,今後のIMJをどうしていくべきかという議論をします。これまでは,度々⁠教育研修制度がない⁠という問題がでていましたが,研修を提供し続けることにより,⁠会社が自分たちのスキルに投資してくれている⁠と,好意的な声が聞かれるようになったのは大きいですね」

【効果2】おぼろげな概念知識を「実践知」に転換する機会に

川畑さん「ソーシャル系,マーケティング系などは,概念的知識しかない人も多く,たとえばソーシャル系ではトライバルメディアハウスの池田紀行さんを講師に迎えて,導入事例や,提案するときのポイントをダイレクトにお話しいただいたことで,自分たちの提案に活かそうという動きが確実に出てきています。

他のテーマでも,今までわかったつもりでいた知識を再整理する機会として大いに活用されています。当初は,競合から講師を招聘することに心配もされたのですが,IMJの中にはない考えや視点が得られたのは,大きな成果になったと思っています」

【効果3】普段からまないメンバーとのコミュニケーションの場に

川畑さん「研修のときは,普段業務で,からまない人たちをできるだけ同じグループにしました。事務局側でこれを地道にやり続けた結果,他部署メンバーと交流できる点に参加者から好意的な声が多く寄せられました。⁠あなたのプロジェクトではそんな進め方してるんだ!⁠というプロジェクト事例の共有が一部ではあるようです。インナーコミュニケーションの部分は直接的にねらった効果ではなかったのですが,副次的に大きく寄与しました」

【効果4】となりの人の仕事を知り,自分の仕事とつなぐ

川畑さん「これまで専門知識は,その職種の人しか持っていませんでした。例えば,マーケティングリサーチ研修の内容は,リサーチユニットの人間しか知らず,調査の種類や調査設計,パネル設計も,みんなおぼろげな知識でした。それが研修を終えて,⁠今度からリサーチ部門に何か頼むときには,こういう情報をそろえて頼もうと思います⁠など,本当に小さなことですが,それだけでも理解することができたのは,非常に大きかったですね」

【効果5】「学びたい」「学ぶべき」という気づきを与える

川畑さん「アンケートの結果を見て,やはり一番大事なのは,⁠学ぼうと思った⁠というきっかけを提供すること以外にないと思いました。⁠そういうことを考えながら仕事しなきゃいけないんだ⁠と,気づいてもらえたらいいですね。私は,そんな結論をなんとなく感じながら,スタートしています」

【効果6】事務局が社員のスキルを把握できる

川畑さん「私は,プログラムを自分で作っていながらも,そもそも社員がどれくらいのスキルを持っているかを把握していませんでした。何を提供すれば簡単すぎず,難しすぎず適切なのか。ですので,まず上期は⁠知る⁠をゴールに提供し,簡単すぎるという声が多ければレベルを上げ,難しすぎるという声が多ければ,もっと基礎からみっちりやろうと。この上期は,そんなスクリーニングをするのにも有用でした。

ただ,この⁠スキルを把握する⁠という意味では,道半ばどころかまだ全然できていません。加えて,求められるスキルが急速に変化する業界で,今このタイミングのスキルを可視化することにどれだけの意味があるのか。という矛盾した思いもあり,下期から来期へと続く課題だと思っています」

「知る」という上期ゴールから,下期の課題に向けて

「知って,理解して,実践して」っていうステップの「知る」に上期はフォーカスしたという川畑さん。その背景をこのように語ります。

川畑さん「これは私見ですけれど,IMJの人たちは,どちらかというと右脳で考える人たちが多いですね。すごく豊かな発想を持っています。逆に,フレームワークによって様々なものを整理することは,ちょっと苦手かもしれません。そこで,まずは,世の中にはフレームワークというものがあり,それに沿って物事をそろえていく基礎知識を押さえておく必要があります。フレームワークというと,SWOTや3Cとかの話に聞こえてしまいがちですが,どちらかというと⁠考える上での土台⁠みたいな意味ですね」

さて,第一歩踏み出した効果は確認できたものの,やればやったで新しい課題は続々と出てくるもの。⁠知る」の後の「できる」はどう身につけるの?研修の実施効果はどう測るの?次回は,研修導入後に直面するさまざまな課題と,IMJのさらなる挑戦に迫ります。すでに研修プログラムは展開しているけど,その仕組みをいかに育てていくか試行錯誤中という方は,ぜひ次回もお見逃しなく!

著者プロフィール

林真理子(はやしまりこ)

株式会社イマジカデジタルスケープ トレーニングディレクター。1996年より一貫してクリエイティブ職のキャリア支援事業に従事。デジタルハリウッドやエン・ジャパンを経て,2005年より現職。Webに関わる実務者を対象に,クライアントの社員研修や個人向け講座の企画コーディネート,カリキュラム設計,教材開発,講座運営,評価などのインストラクショナルデザインを手がける。日本キャリア開発協会認定CDA,日本MBTI 協会認定MBTI 認定 ユーザー。

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