読むウェブ ~本とインタラクション

第9回 デジタル・ブックストア

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デジタル雑誌のDRM

オンラインマガジンには「Webだけで公開されるマガジン⁠⁠,⁠紙媒体の雑誌と連動したオンラインマガジン⁠⁠,そして今回ご紹介した「紙媒体のデジタル化」の3つに大別できる。出版社として動きやすいのは,コスト負担の少ない雑誌のデジタル化だ。たしかにAmazonなどのネット書店を利用する人は増えているが,米国でも小売り全体では10%程度だといわれている。多くの人はまだ書店で買っているのだ。つまり,部数が多い大手ほどネットに集中しにくいのが現実。ただし,デジタル化の流れは確実に進行しているため,ノウハウを蓄積していくにはネットで扱いやすい雑誌などから順次,動かしていくことが重要となる。

その取っ掛かりとして,出版社がクリアしたいのはコピーの問題。富士山マガジンサービスでは,米国のZinio社と提携してビュワーソフトの技術を取得。デジタル雑誌を読むために必要な「Fujsan Reader」は,⁠Zinio Reader」を日本語仕様にローカライズしたものだ。Zinio社は,400誌をデジタル化しており,この分野では90%のシェアを獲得。同社の技術は,DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)機能に優れており,世界中の多くの企業が採用している。

Zinioのサイト

Zinioのサイト

雑誌の「検索読み」という新しいスタイル

Zinio社のサイトにアクセスして右上のSEARCH欄に「Adobe CS3」と入力してみてほしい。Adobe CS3に関する情報が,どの雑誌の何ページに掲載されているか一覧される。そして,実際に掲載ページを見ることができるのだ(対象ページは画像で表示される⁠⁠。注目すべき点はこの「検索」機能である。ネットのコンテンツとしてはもはや当たり前の機能で,サービスとしての新規性はないが「紙媒体の雑誌+キーワード検索機能」として見れば,大きな進歩である。検索しながら読む行為,いわゆる「検索読み」が可能になる。これは紙媒体の雑誌を丸ごとデジタルした場合のメリットといえる。

日本で先行している富士山マガジンサービスの「Fujisan.co.jp」でも同様の仕組みは可能だ(各雑誌内でのキーワード検索には対応している⁠⁠。ポータルサイト上での記事検索など,これからのオンラインマガジンの可能性を感じさせる新しいサービスに期待したい。

また,Googleなどの検索対象に紙媒体の雑誌を含むことで新たな課金システムも成り立つ。検索を利用した人に「雑誌の中に情報があることを知らせ⁠⁠,その情報取得に対して「課金」する方法などが可能になる。ただし,無料公開でユーザー数を確保した後,収益につなげていくマネタイズより,ユーザー・アレルギーは強いだろう。バックナンバーを古いものから無料公開して有料情報との差別化を明確にするなど,検索サービス経由の課金には何らかの吸収剤が必要になるかもしれない。さらに,価格設定では(店頭でもバックナンバーが置かれているため)書店との関わりも無視できない。

いずれにしても,既存の雑誌をデジタル化した「デジタル雑誌」を取り扱うオンライン書店の動向には注視していきたい。

参考URL:
株式会社富士山マガジンサービス
http://www.fujisan.co.jp
ダカーポ
http://dacapo.magazine.co.jp/
ニューズウィーク日本語版
http://nwj-web.jp/
FQ JAPAN
http://www.fqmagazine.jp/index.php
毎日ウィークリー
http://weekly.mainichi.co.jp/
Zinio
http://www.zinio.com/

著者プロフィール

境祐司(さかいゆうじ)

インストラクショナル・デザイナー[Instructional Designer]として学校,企業の講座プラン,教育マネジメント,講演,書籍執筆などの活動をおこなう。2000年より情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始める。現在,教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中。著書に「速習Webデザイン Flash CS4」(技術評論社),「Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック」(ソシム)などがある。

URLhttp://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/

著書