キーパーソンが見るWeb業界

第3回 プロモーションにおけるWeb(前編)

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

代理店というポジション

――Webがブランド構築メディアやコミュニケーションツールとして認知されてきている今,Web制作の流れはどのようになっているのでしょうか。そして,そのときの広告代理店の位置付けはどこにあるのでしょうか。Webの可能性から,今度は制作者視点で話が展開していきました。

螺澤:実際,Web媒体の有効な使い方というのは,多くのクライアントに認知されてきていると思います。自分たちが仕事がやりやすくなる一方で,広告代理店という立場で危機感を感じることがあるんです。それは,Webを含めたトータルコミュニケーションを作ることになった場合,広告代理店のレイヤーが必要なのかどうかということです。

クライアントが直接優秀なクリエイターやクリエイティブエージェンシーに声をかけて,すべての媒体の施策設計を任せ,ブランドコミュニケーションを作るほうが,今の世の中のスピード感にあっているのでは?とクライアントが考え出すのではという懸念です。

森田:日本の広告代理店の形態は問題ないというか,日本のマーケットでブランド構築やプロモーション制作を考える場合,広告代理店がメディアを押さえているという特殊性があると思います。海外ではメディアとクリエイティブのエージェンシーが分かれていますが,日本では広告代理店が両方のエージェンシーとしての役割を担っています。

一方で,僕たちを含めたWeb制作・デザインを行う企業はメディアを押さえられていませんから,広告代理店の機能は必要だと思います。ただ,その特殊性があるからこそだと思いますが,Web制作会社はある種の末端プロダクションとして扱われてしまう傾向にありますね。たとえば制作費が使われる順番として,Webが最後に来るといったようなことです。

螺澤:最近は少しずつ変わってきていると思いますよ。ただ,森田さんがおっしゃるとおり,たとえば1,000円という予算があったとして,CMを作るのに500円,ポスターに300円,……となっていって,最後に販促に10円,Webに10円で良いよね,という状況が多いのも事実です。

本当ならば,1,000円あったとしてこれだけメディアに使いましょう,ではなくて,1,000円をどう使えば最も効果的かを考えることが最初にあることが理想的ではあります。

長谷川:最近では,メディアを伴わず,アカウントエグゼクティブ(AE)機能に特化した独立系の広告会社もあらわれてきています。この場合,メディアにこだわらない,TV,ラジオ,ネット広告,Webサイト,販促物などを効果的に使ったプラニングが可能となります。

とはいえ,やはりTV広告を主体とする広告については大手広告代理店扱いになることが多いわけですが。

阿部:でも,実際にそういった変化が生まれてきていると思います。1990年代後半~2000年にかけて僕らが最初にWebに携わったころに比べて,僕らのプロダクションとしての立ち位置は変わってきていると感じています。たとえば,プロダクションでもWeb制作プロダクションというWebオンリーのスタンスではなく,インタラクティブプロダクションや,クリエイティブエージェンシー的な,他のメディアとの連携を視野に入れた立ち位置を担おうとしてる方々が出てきていますから。

長谷川:ひとことにWebプロジェクトと言っても,大きく2つの異なったプロジェクト形態があります。Webを用いたプロモーション型のプロジェクトと,コーポレートサイト,サービスサイトなどのサイト自体が何らかのソリューションとなっているタイプのプロジェクトです。

Webを用いたプロモーション,マスメディア連動のWebの使い方はまっとうに進化していると思います。Web黎明期にはWeb制作会社にいたようなWebについての専門性が高い人々が,広告代理店や企業側にも在籍しているようになっており,横断的にメディアを見る人が増えてきています。これによってマーケット自体は大きくなっている実感があります。いろいろな白書でマス広告の費用がWebに流れてきている,ということが言われていますが,これはまっとうな変化だと感じられます。全体費用で考えるべき話であるので。

これに対して,コーポレートサイトプロジェクトやサービスサイトのリニューアルプロジェクトなどはWeb固有のプロジェクトといえます。これらは長期的に考えていく必要があることもあり,傾向として企業がパートナーとなるデザイン会社と二人三脚でプロジェクトを実施していくケースが増えています。この場合は,WebとはいってもプロモーションとWeb自体でのコミュニケーションの両方の役割が考えられます。

森田:おそらく,現在はまだWebのプロダクションが真の意味でメディアプランニングできる状況が少ないのだと思います。たとえばbAが「できます」といっても,クライアントからすると, bAは良くも悪くもWebデザインファームなのでしょうしね。ただ,そうはいっても自分たちはものづくりに専念する,つまり,デザインファームでありたいというのも事実です。そういう観点からいえば,プロモーションの仕事は広告代理店経由のほうがやりやすいのかなと思っています。

先ほどのAEの話にもなりますが,クライアントからプロモーションの依頼を受ける場合,極端な話,そのクライアント専属の営業担当が必要になるはずです。とくにゼロからプロモーションを作るのであれば,実は本当にベタな仕事が多いわけで,そこに割けるリソースが求められ,かつ個別の案件それぞれは短期で終わってしまうことが多いですね。こういうのは,ちょっと自分たちのような形態の会社にはつらいのかなという感触です。こういったケースでは広告代理店に入ってもらえたほうがやりやすい。

一方でコーポレートサイトのような,長期的な展開を必要とするプロジェクトであればWebのデザインを専業とする企業が直接クライアントとやりとりして進めていったほうがいいですね。

長谷川:コーポレートサイトなどのプロジェクトでは,プロジェクトのリーダーが,スケジュールから設計,デザイン,ブランディングやマーケティングの相談も受け,またコーディングといった細かいタスクの工数までも把握しています。こういった人がクライアントとの折衝に入らないとプロジェクトが進みません。AE兼プロジェクトリーダーという形だと思います。この場合,間に広告代理店が入るより,直接クライアントとプロジェクトリーダーがやりとりをするほうが,業務的にも費用的にも効率が良いです。

螺澤:そうですね。

森田:僕自身も,たいていの案件ではプロジェクトリーダーを担当していて,長谷川くんのいうようなAE兼プロジェクトリーダーという役割が多いですね。

長谷川:コーポレートコミュニケーションに関して,Web制作は「これを作ってくれ」というような決まった形ではなく,業務が不定型であり,また制作量もプロジェクト開始時には定まっていないことが多く,相談を受けながら作業が発生していきます。プロジェクトとしても要件定義,設計,制作,と大きく3フェーズに分かれ,本来的には各フェーズが終わらないと次フェーズの費用は算出できません。プロジェクト開始時に「これだけの金額が必要です」というような見積を持って行くのも現実的ではありません。

画像

(後編に続く,2008年8月上旬公開予定)

(最新のWeb Site Expert #19では前編・後編を読むことができます)