キーパーソンが見るWeb業界

第10回 2010年がやってきた

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フリーランスや独立系としての働き方

阿部:自分たちの働き方という点で,2009年で意外だったのが,フリーランスになる方が増えた点です。僕は減ると思っていました。

森田:何かを目指してフリーランスになったという人だけではなく,結果としてなってしまったという人も多いでしょうね。

長谷川:日本では2005年ぐらいから企業のWebの取り組みは一般化しています。この時期はまだWebサイト構築に関わる仕事はほぼアウトソーシングされていたため,多くのWeb制作会社が立ち上がったり,また独立してフリーランスになる流れもあったと思います。

2009年の今,この流れは一旦収束し,だんだんとそういった立ち上げのプロジェクトは減ってきていると思います。

阿部:我々を含めてまたあらたにチャレンジしていかなければいけない時代になってきているわけですね。

長谷川:フリーランスとして個人で仕事を請け負っている場合に比べ,会社として仕事を請け負っている場合には,納品物の品質は仕組みで担保できる面があると思います。今のように予算の絶対額が低い状況では,何かしらの成果物が出てくることでよしとされてしまっていることが往々にしてあります。しかし,問題なのは,これから景気が回復したり予算の組み方が変わり,成果物に対する評価基準が高まったとき,そういった人たちがそのレベルに対応できるものを作れるかどうかということです。

森田:代理店もそうですし,フリーランスや独立系企業でも広告関係の受注額は今後もしばらくは厳しいでしょう。そういう状態が通常だとすると,品質の低下にならないように,必要な基準とか落としどころにすべき評価の指標みたいなものを,今後ますます考えていかなければなりませんね。

不景気下において求められるもの

森田: 繰り返しになりますが,2009年はとても厳しい経済状況だったわけですが,この先もすぐに回復するとは思いません。その中で,固定費削減に加えて,変動費の削減も増えているのが顕著に現れています。運用費であったり,単純な制作におけるフリーランスへの仕事の発注は減っているように思います。

長谷川:たしかにその点はある程度予想ができていました。ただ,不思議なのは,いまだに企業が案件を発注する際にコンペを行うことです。私の経験上,コンペに上がる企業(の特徴や質)にとてもバラツキが多く,ここにはまだ無駄が多いように感じています。中長期のパートナーを選ぶ方法としてはあまり適切ではないと思いますね。

森田:それはHTMLを書くこと(手を動かす部分)はコストが高いからです。つまり,発注側としては,制作側に期待する部分の中に1社にまるまるお願いして予算を抑えられないかという意識があると思います。ただ,本来であれば,いろいろなデザインを掛け合せたときに生まれる可能性というのがあるはずです。だから,企業側としてもどこまで横の領域にまで手を出せる(複数に発注できる)かが大事だと思います。

長谷川:それは(HTMLやCSSを書く)デザイナーではなく,異なる特徴の制作プロダクションを増やすということ?

森田:いえ,僕たちが言っている広義のデザイナー(設計まで考えられる人材・企業)が必要ということです。

阿部:今の話を聞いていると,今後はますます僕たちが持っている知見が活かせる時代が来るのではないかと期待します。たとえば,Web を知っていながらも,広告領域を知っていたり,ユーザインターフェースデザインを知っているという強みがあることで,掛け合わせるデザインの幅が広がるからです。

長谷川:私たちコンセントの場合では,プロセスコンサルティングに対してのニーズが増えました。おそらくWebと組み込み系といったWeb以外のインターフェースの両方を知っていることが強みとなって,ニーズが増えているのだと思います。

ただ,これは単純なテクニック論の話ではありません。デザインという知識に対してインタラクションデザインを知っているかどうかということです。それがわからなければ(Webを)他の領域へ応用できるわけがありません。

これは,ぜひ雑誌や書籍といった情報を提供する方たちにも,もっと意識してコンテンツを提供してもらいたいです。

森田:Webに関わってきた人たちが全員そういう強みを蓄えてきたわけではないかもしれませんが,これから益々そういう方向性が求められていくのだなということを意識的に捉えていきたいですね。

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著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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