キーパーソンが見るWeb業界

第12回 ライフスタイルの中でのクリエイティブとプロセスにおけるツールの役割

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Flashが持つ表現力と技術の関係

森田:Flashの分野が活性化したのは,ユーザのつながり以外に,案件が多数あったことも大きな要因でしょうね。何かインタラクティブなものを作るときに⁠Flashっていいよね⁠ということが多く見られましたから。

西村:実際にはどのような案件が多かったのですか?

森田:広告案件ですね。Flashを取り入れることが良い,というよりも,Flashを取り入れたいというクライアントの要望がありました。

西村:それはカンヌ国際広告祭の影響などもあったのかもしれないですね。

阿部:僕は皆さんよりも比較的遅いかもしれませんが,Flash 3から使い始めているのですが,使い始めたきっかけはアニメーションGIFの世界からつくれるもの,表現の幅が大きく変わったと感じたときです。スプラッシュアニメーションとか流行ってた時代ですね(笑⁠⁠。

森田:僕もFlash好きですよ。bA参画当時にこんなFlash作って,これから毎日作るぞとかいって,まあそれから10年経ちましたが(笑⁠⁠。

阿部:当時Flashで本当に驚いたのがモーショントゥイーンやシェイプトゥーンなど自動でアニメーションの中間を生成してくれる機能です。多くのクリエイターが皆,感じたのではないでしょうか。アニメーションの開始点と終了点のキーフレームを作成するだけで,間の処理がすべてFlashで作成できるようになったのは,アニメーションGIFからすると本当に衝撃的でした。

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森田:そうですね。アニメーションで衝撃を受けた作品もたくさんありました。それからのFlashの発展と普及は素晴らしいと思うのですが,危惧しなければいけないこともあります。それは,何をするにしてもFlashという⁠技術⁠に特化してしまっていて,とくに⁠インタラクティブデザイン=Flash⁠という認識で仕事をしてきた人たちにとっては,今,仕事の土俵的な面で問題に直面しているようにも思います。

阿部:たしかにそれを感じるケースはありますね。いわゆる,手段が目的になってしまっている状況です。

今現在,製品,仕事,技術,それぞれがFlashが出始めたころに比べて整備されてきたわけで,その結果としてAdobeが提供する製品と技術に依存してしまうことが職域を狭めたりすることがあるのかもしれません。

西村:Flashに関して言えば,表現領域に対して大きく貢献できたこと,また,今おっしゃったようなことがあるとしても,私たちとしては⁠ものを作るためにはどうするか⁠という検討をした結果として,製品や技術を提供していきたいと考えています。これはベンダ側だけではなく,ユーザ側の皆さんとも話して,もっといろいろとフィードバックを頂けると嬉しいです。

阿部:それから,Adobe製品のユーザ,つまり作り手としては技術を見るのはもちろんのこと,一番大事なのは作り出したものを使ってくれるユーザを見なければいけません。

森田:最近,Flashなどの技術に関する議論が起きているのは,成果物の品質を高めるために技術をどう扱うのかという点ですよね。傾向としては,FlashデベロッパーであればFlashに依存していて,iPhoneデベロッパーはiPhoneに依存していて,というように特定のものに対する依存度が高くなってしまい,作り手のリスクだけが大きくなっているという状況です。

継続性を考えるならば,作ることそれ自体に対するリスクを軽減することを考えるのが大事だと思うのですが,そのために必要なのがオープンなプラットフォームでしょう。

囲い込み戦略を否定はしませんが,質を高めるためにベンダ主導になるのはあまり歓迎できないですね。ユーザにも作り手にも自由な選択肢があると良いのだろうなと思います。

西村:おっしゃるとおりで,私たちとしてはもの作りをする人たちに最適な製品や技術を提供することが最大の目的です。作っている人たちが,作ったものをマルチユースできる環境というのは,私たちが目指していく世界です。それが,今取り組んでいる⁠Open Screen Project⁠のコンセプトでもあります。

阿部:話を戻すと,Flashが良い点としては,Flashを使うことで表現が高まったこと,また,プラットフォームとしてFlashPlayerが提供されたことがあります。職域を狭められていると感じている人にとっても,これからまた可能性が広がるのではないでしょうか。

森田:たしかにそういう見方もできますが,それは阿部さんがFlashを⁠1つのツール⁠として捉えてデザインできているからだと思います。⁠技術としての⁠Flashのデザインしかできなくなっているのだとしたら,もの作りをする人間としては危機感を持つべき状況です。

また,Adobeに対するコメントとして,Flashが持つ表現力について,技術的側面からアピールするだけではなく,もっと生活に密着したもの,たとえば先ほどの自動販売機の例もそうだとは思いますが,ライフスタイルの中でFlashがどう便利になるのかを,さらに見せてもらえると嬉しいですね。

西村:⁠コンテクスチュアルアプリケーション⁠の考え方ですね。それはまさにAdobeが目指しているものであり,先ほどのOpen Screen Projectの取り組みとして進められています。

コンテクスチュアル,文脈(状況)に応じて適したコンテンツを提供できるアプリケーションを提供していくことが目的です。将来的には,Flashライフスタイルセミナーというようなものも考えられますね。

阿部: そういえば, 昨年のMashup Award 5の作品に「CastOven」という,電子レンジの窓の部分にFlashを実装して,できあがるまでの時間でYouTubeを映し出すものが優秀賞を獲得されていました。これはまさにライフスタイルにFlashがとけ込んだ例と言えます。

Adobe Creative Suite 5の登場

阿部:Flashの話だけに偏ってしまいました。 ちょうど,この座談会の少し前に,新し

い製品「Adobe CreativeSuite 5」シリーズが発表されました。この製品について教えていただけますか。

西村:私の担当としては,Flash Builder 4とFlash Catalyst CS5が含まれることが大きいですね。

Flash Builder 4はこれまでFlex Builderと呼ばれていたツールで,Flexフレームワークを使用してクロスプラットフォームのRIAやコンテンツを開発できます。一方の,Flash Catalyst CS5は,Webインターフェースとコンテンツを,コードを書かずに作成するためのツールです。元々は,デザインと開発をつなぐ副産物として生まれたツールなのですが,今回のリリースにより,Flash Professional CS5とFlash Builder 4との連携が強化され,開発の生産性を向上できます。

また,Flash Catalyst CS5はワイヤーフレームの作成やプロトタイプ作りといった用途でも使えるため,このツールの登場により,CS5で制作フローのすべてを網羅できるようになりました。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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