Webデザイナーなら知っておくべき サーバ知識相談室

第4回ドメインってなに? Whoisで個人情報が丸見え? ドメインの仕組みを学んでトラブルを回避しよう

「ドメイン」という言葉は知っていますか? Web制作の仕事をしていると、ドメインはちょくちょく出てくる身近な存在です。でもドメインについてきちんと理解している!と胸を張って言える人は、なかなかいませんよね。

今日は皆さんと同じように、ドメインに対して、はっきりとしない分からなさを抱えたWebデザイナーが、サーバ知識相談室を訪れているようです。

プロローグ:独自ドメインでポートフォリオサイトを始めたいけど、何をすればいい?

ここは企業のWebサイトの構築を専門としているA社の一室。納品も済んで、今日は個人的な質問をしにきたWebデザイナーと、その話を聞くインフラエンジニアがいました。

Webデザイナー「この間はSSL証明書の件、どうもありがとう」

エンジニア「いいのよ、納品は無事に済んだ?」

Webデザイナー「うん! でさ、ちょっと仕事が落ち着いたのもあって、前々から考えてたんだけど、個人的なポートフォリオサイトを開こうと思うんだよね」

エンジニア「ポートフォリオサイト? ええと、過去に作った作品とか、やった仕事とかを紹介するサイトのこと?」

Webデザイナー「そうそう。やっぱり個人としての名前を売っていくには、ポートフォリオが必要だなと思って」

エンジニア「おおー、上昇志向ー!」

Webデザイナー「やっぱり指名で仕事が来たらいいなと思うしね。でさ、最初はTumblrとかでやろうかなと思ったんだけど、有名なクリエイターのサイトを見ると、みんな独自ドメインでやってるんだよ」

エンジニア「あー、○○.tumblr.comみたいなのとか、d.hatena.ne.jp/○○とかじゃなくて、自分専用のドメイン取ってるってこと?」

Webデザイナー「そう!例えば有名どころだとWebクリエイターボックスのManaさんのポートフォリオサイトはja.webcreatormana.comだし、FireworksマニアのYUKI YAMAGUCHIさんのポートフォリオサイトはyuki930.v-colors.comってドメインだし」

エンジニア「確かにどこかに間借りしてるより、独自ドメインの方が本格的な感じするよね」

Webデザイナー「そうなんだよ。それにさ、○○.comってドメインにしたとしてさ、ポートフォリオはportfolio.○○.comにして、ブログはblog.○○.comにして、素材配布サイトはsozai.○○.comにしたりしてさー!」

エンジニア「夢が広がってるねー」

Webデザイナー「うん、でさ、どうしたらいいの?」

エンジニア「は?」

Webデザイナー「ドメインを、えー、あー、どうしたらいいの?」

エンジニア「ええー、……そこ分からないで夢語ってたのか!」

Webデザイナー「頼む! 独自ドメインでサイト始めたかったら、まず何したらいいのか教えて! できるだけ簡単に!」

エンジニア「しょうがないなぁ、じゃあドメイン買うところから説明するわね」

というわけで、今回はドメインの仕組みやルールを学んだ上で、自分だけの独自ドメインを取得してみましょう。

ドメインはどこで買う? お店によって値段は違う?

ドメインとDNS全体の仕組みを理解するため、ドメインを購入してから、サイトが見られるようになるまでを、順を追って紹介します。ストーリーになっていたほうが分かりやすいと思うので、次の設定で説明していきます。

皆さんはまもなくスタートする株式会社IMJ銀行の広報担当者です。IMJ銀行の「imjbank.co.jp」というドメインを取得し、Webサイトを開設するのが直近のミッションです。

それでは、まずドメインを購入するところから始めましょう。「ドメイン」で検索すると、お名前.comYahoo!ドメインムームードメインFC2ドメインなどが出てきました。いっぱいありますね。どこで購入すればいいのか迷ってしまいます。

できれば安いところで購入したいですよね。取りあえず「imjbank.co.jp」の値段(執筆当時)を、一つひとつ見ていってみることにしましょう。

お名前.comで「imjbank」と入力して検索してみます。⁠imjbank.co.jp」は、お名前.comでは1年で3,780円でした。

お名前.comでは、imjbank.co.jpは3,780円だった
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次にYahoo!ドメインで「imjbank.co.jp」を購入しようとすると……、あれ? プルダウンメニューにco.jpがありません。取得できるドメインの種類を見てみると、どうやらco.jpで終わるドメインは取り扱っていないようです。Yahoo!ドメインでは「imjbank.co.jp」は購入できません。

Yahoo!ドメインでは、imjbank.co.jpは取り扱っていない
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ムームードメインはお名前.comと同じ価格で、1年で3,780円でした。

ムームードメインでも、imjbank.co.jpは3,780円だった
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最後にFC2ドメインで「imjbank.co.jp」を調べてみると、お名前.comやムームードメインより140円高い、3,920円でした。

FC2ドメインでは、imjbank.co.jpは3,920円だった
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まとめると次のようになります。たった140円の違いですが、値段だけで判断するなら、お名前.comかムームードメインを選ぶのが良さそうです。

  • お名前.com:3,780円
  • Yahoo!ドメイン:取り扱いなし
  • ムームードメイン:3,780円
  • FC2ドメイン:3,920円

でもここでちょっと疑問があります。Yahoo!ドメインはなぜ「imjbank.co.jp」を販売していないのでしょうか。それにたった140円ですが、値段によってドメインの何かが違うのでしょうか

値段やお店によってドメインの「品質」は違う?

第3回でSSL証明書について説明したときに、同じ「SSL証明書」という名前でも、RapidSSLの安い証明書と、シマンテックの高い証明書は全然違うという話を取り上げました。SSL証明書にはEV証明書、OV証明書、DV証明書の3種類があって、それぞれやってくれることが違うという話でしたね。

もしかしてSSL証明書のようにドメインの場合も、同じ「ドメイン」という名前でも、どこで購入するかによって役割や品質に差があったりするのでしょうか?

いいえ、ドメインはどこで購入しても品質に差はありません。ダイソンの同じ型の掃除機はどこで購入しても同じものですが、ヤマダ電機とヨドバシカメラで値段は違います。それと同じように、ドメインもどこで購入しても同じですが、お店によって値段が違うのです。

では、どこで購入しても品質が同じということは、単純に値段だけでお店を決めればよいのでしょうか? いいえ、それも違います。

ドメインを売るお店には「レジストラ」「リセラ」の2種類がある

実は、一口に「ドメインのお店」と言っても、その実態はレジストラ(登録事業者)リセラ(再販事業者)の2種類に分かれています。具体的に言うと、お名前.comは「レジストラ(登録事業者⁠⁠」ですが、Yahoo!ドメインやムームードメイン、FC2ドメインは、レジストラの下にいる「リセラ(再販事業者⁠⁠」です。

レジストラにリセラと、いきなりカタカナが出てきて戸惑うかもしれませんが、次の図を見てください。青色のリセラ(再販事業者)は、緑色のレジストラ(登録事業者)からドメインを仕入れて、それを再販しているという違いになります。

レジストラとリセラの関係
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ムームードメインは図の通り、お名前.comやeNomといったレジストラからドメインを仕入れてそれを再販していますし、Yahoo!ドメインはMelbourneITというレジストラからドメインを仕入れて再販しています(FC2ドメインは仕入れ元のレジストラを公開していませんでした⁠⁠。けれど、普段ドメインを購入するときは、そのお店がレジストラなのかリセラなのかなんて意識しませんよね。

レジストラとリセラのどちらからドメインを購入しても、ドメインとしての品質に差はありません。ただ、どこから購入するとしても、サービスレベルが低いお店で購入すると「更新手続きを行ったのに、お店がドメインの更新申請をレジストリまできちんと上げず、ドメインが失効してしまった」⁠ドメインを買ったお店が倒産して、連絡が取れなくなってしまった」などの問題が起きることもありえます。ドメインを購入するときは値段だけで判断せずに、信頼できるリセラあるいはレジストラかどうかを、きちんと確認しましょう。

ちなみにお店を選ぶポイントは、他にもあります。主に次にあげた項目を確認して、どこで購入するかを総合的に判断するようにしましょう。

  • 「初年度はキャンペーン価格で180円だけど、2年目からは6,980円」のように、2年目以降行の価格が高額に設定されていないか
  • ドメインに関する設定変更には都度お金がかからず、管理画面から無料ですぐに変更できるか
  • ドメインを購入すると、DNSサーバが使える無料のオプションがついているか

レジストラはどこからドメインを仕入れている?

先ほど「リセラはレジストラからドメインを仕入れて販売している」という話をしました。ではレジストラは、いったいどこからドメインを仕入れているのでしょうか。

レジストラは「レジストリ(登録管理組織⁠⁠」からドメインを仕入れています。レジストラとレジストリと、1文字違いで混乱してしまうネーミングですね。ごちゃごちゃしてきたので、先ほどのレジストラとリセラの関係も含めて図にして整理してみます。

レジストリ・レジストラ・リセラの関係
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ドメインは、黄色のレジストリから緑色のレジストラに卸され、そこからさらに青色のリセラに卸されます。そして私たちがドメインを必要としているときは、先ほど言ったとおりレジストラから購入することも、リセラから購入することもできます。

ではレジストラにドメインを卸すレジストリとは、いったいどんな存在なのでしょう。ありとあらゆるドメインが生まれてくる、魔法の泉みたいなものなのでしょうか。

1つのTLDにつき1つのレジストリが存在している

そこで、レジストリについて少し話を掘り下げて説明していきます。

ドメインは「imjbank.co.jp」「yahoo.com⁠⁠、⁠example.net」のように、.(ドット)で区切られています。このドットで区切られたいちばん右のjpやcomやnetのことを「TLD」と呼びます。TLDとは、トップレベルドメインの略です。

そしてこのTLDを管理しているのが、先ほど紹介にあったレジストリです。TLDは、1つにつき、必ず1つの「レジストリ(登録管理組織⁠⁠」によって管理されています

例えば「imjbank.co.jp」のTLDは「jp」です。そしてこの「jp」というTLDは、日本の株式会社日本レジストリサービス(以下JPRS)がレジストリです。それから、⁠yahoo.com」「example.net」のTLDは、それぞれ「com」「net」です。この「com」「net」というTLDはVeriSign,Inc.がレジストリです。その他にも、2014年から販売が始まる「tokyo」「nagoya」というTLDは、お名前.comと同じGMOグループに属している、GMOドメインレジストリ株式会社がレジストリです。

ドメインが手元にくるまでの流れ
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このようにTLDにはそれぞれ1社ずつレジストリがいて、そこが、そのTLDの唯一の生産元となります。例えば「imjbank.co.jp」というドメインを購入しようとすると、先ほどのJPRSがレジストリです。⁠imjbank.co.jp」をお名前.comで購入しても(黒の矢印⁠⁠、ムームードメインで購入しても(赤の矢印⁠⁠、そのドメインの生産元は必ずJPRSなのです。

TLDの卸値は、レジストリ自身が決めます。comは卸値が安いので、お名前.comでも600円と安めの価格ですが、jpは元々の卸値が少し高いので2,840円と高めの価格で販売されています(執筆当時⁠⁠。

そして生産元のレジストリは、エンドユーザへ直接ドメインを売りません。しかし、お名前.comでも、ムームードメインでも、jpで終わるドメインが売れたら、生産元であるJPRSに必ずお金が入ります。

TLDごとにレジストリが1社のみと決められているのは、同じドメインが同時に2つ存在しないようにするためです。AさんとBさんが同時に「imjbank.co.jp」を購入してしまい、2人とも使おうとして、どちらのサイトを表示したらいいのか大混乱!のようなトラブルが起こらないように、つまり一意性を保つために、JPRSが「jp」というTLDを一元管理しているのです。

生産元であるレジストリがきちんとTLDを管理しないと、皆がドメインを安心して購入したり、使ったりできません。ではそんな責任重大なレジストリをどこに任せるのかは、いったい誰が決めるのでしょう。

ICANN(アイキャン)がレジストリを選ぶ

「あなたがJPドメインのレジストリです」と、JPRSを選んだのは誰かというと、ICANN(アイキャン)という組織です。ICANNはIPアドレスやドメイン名といったインターネットの資源を、全世界的に調整・管理する非営利法人です。⁠tokyo」「nagoya」のような新しいTLDを作ります、と決める決定権があるのもここですし、TLDごとのレジストリを決めるのもこの組織です。

実は、新しいTLDが欲しいときは、ICANNに対して「このTLDを作ってほしいです。うちがレジストリになります」と申請ができます。もちろん、ICANNが検討し、承認しなければそのTLDは実現しませんが、現在も「canon」⁠ntt」⁠sony」⁠toyota」といったTLDが、そのブランドを有する各社から申請されています。

少し前にGoogleが「.みんな」というTLDのレジストリになって、どんな「○○.みんな」が欲しいですか?というキャンペーンをして、話題になっていましたね。このようにTLDは英語だけでなく、日本語も存在しています。

ちなみに猫好きにはたまらない「cat」というTLDもあります。しかし「○○.cat」というドメインは、お名前.comでは販売されていません。なぜでしょうか。

どのTLDを入荷するかはレジストラやリセラが自分で決められる

それは、それぞれのお店(レジストラやリセラ)が、どのTLDを入荷するかを自分で決められるからです。お店の方針次第で、お名前.comのように数多くのTLDを取り揃えているレジストラもあれば、品ぞろえを絞っているYahoo!ドメインのようなリセラもあるのです。

では、お名前で「○○.cat」というドメインを販売していないのはなぜか? それは、お名前.comが「うちではcatを扱わない」という判断をしたからです。Yahoo!ドメインで「imjbank.co.jp」を販売していなかったのも同じ理由で、⁠co.jpを扱わない」という判断をしていたからなのです。

これがレジストリ、レジストラ、リセラの関係です。それでは「imjbank.co.jp」というドメインを取得して、Webサイトを開設しようと奮闘しているIMJ銀行の担当者の話に戻りましょう。

ドメインは誰でも買える? 特別な人しか買えない?

ドメインはどこで購入すればいいのか、というポイントも理解できたので、IMJ銀行の広報担当者は今回、国内最大手のレジストラの「お名前.com」でドメインを購入することにしました。取り扱っているTLDの種類が多く、購入しようと思えば「imjbank.com」「imjbank.jp」なども一緒に購入すできるため、フィッシング詐欺の抑止策としてTLD違いを押さえておくのもいいですね。

お名前.comで「imjbank.co.jp」を選択して、購入手続きを進めようとすると、次の確認画面が表示されました。

CO.JPドメインご登録条件確認の画面
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「○○.co.jp」のドメインを購入するための条件が表示されています。この条件とは次の2つです。

  • 日本国内で法人登記をしている会社、もしくは登記申請中の会社しか取得できない
  • 1組織につき1つの属性型JPドメイン名(co.jpやac.jp、go.jpのこと)しか取得できない

この2つの条件を満たさないと、⁠○○.co.jp」のドメインを購入することはできないのです。

こうした条件があるのは「co.jp」だけではありません。例えば「ac.jp」は日本の学校法人しか取得できませんし、⁠go.jp」は日本の政府機関しか取得できません。そもそも「jp」で終わるドメインは、日本国内に住所を持つ組織・個人・団体しか取得できません。

ドメインすべてに条件があるわけではなく、こうした条件が一切ないドメイン、あるいは条件はあるけれど、購入時に特に確認されないため、実際は誰でも購入できるドメインなどもあります。皆さんにとってなじみ深い「com」「net」といったTLDは、どこの国の誰でも無条件で購入できます。

今回の話では、株式会社IMJ銀行の登記は既に済んでおり、IMJ銀行として他に取得している「co.jp」のドメインもないという前提のため、この内容で問題ありません。そのまま手続きを進めましょう。

購入者の氏名や会社名、住所に電話番号を登録し、クレジットカードで決済して、これで「imjbank.co.jp」は無事、株式会社IMJ銀行のものになりました(後日、申請書と印鑑証明書を郵送する必要があります⁠⁠。

「Whois情報」は登録しないといけないもの?

ドメインを購入できてほくほくの広報担当者が、そのまま「次へ」ボタンを押すと、今度は属性型JPドメインのWhois情報を登録してくださいというメッセージとその登録画面が表示されます。

お名前.comのWhois情報登録画面
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Whois情報登録画面の「登録者情報」「技術担当者情報」などのメニューには、それぞれ組織名や氏名、住所などを入力する項目が並んでいます。住所や氏名などは、先ほど購入手続きの際に記入したばかりなのに、なぜまた聞かれるのでしょう。項目も多く面倒ですが、このWhois情報は絶対登録しなければいけないのでしょうか。

はい、Whois情報は必ず登録しなければいけないものです。ではこの「必ず登録しなければいけないWhois」とは、一体なんなのでしょうか。

Whoisは何のためにあるどんなもの?

Whoisとは、そのドメイン名を所有している組織や担当者の氏名、連絡先(住所、電話番号、メールアドレス⁠⁠、ドメインの有効期限などがインターネットで誰でも見られるサービスのことです。Whoisで検索すると、Whois情報が見られるサイトがいくつも出てきますので、皆さんも試しに自分が担当しているサイトのWhois情報を見てみてください。

このWhoisこと、ドメイン名の所有者が誰でも見られるサービスは、一体だれが運営しているのでしょう。Whoisは、先ほど「TLD1つにつき1つ存在している」と話した、あの「レジストリ」が管理・提供しているサービスです。TLDの唯一の生産元であるレジストリが、そのTLDのWhois情報を管理・公開しているのです。

たとえば「jp」を管理しているJPRSが提供する「Whois情報確認サイト」JPRS WHOISです。それではgihyo.jpを例に、実際にWhois情報を見てみましょう。

JPRS WHOISでドメインの所有者情報を見てみよう!

JPRS WHOISで、検索キーワードに「gihyo.jp」といれて検索してみると、gihyo.jpのWhois情報が表示されます。住所や電話番号、メールアドレスなどの連絡先も出てきました。有効期限の項目を見ると、現在の「gihyo.jp」というドメインの有効期限が「2015年3月31日」までであることも分かります。

gihyo.jpのWhois情報
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でも一番上のドメイン名が全部大文字ですね。⁠gihyo.jp」ではなく、⁠GIHYO.JP」になっています。これは間違いではありません。ドメインは大文字小文字の区別をしないので、⁠gihyo.jp」「GIHYO.JP」も同じドメインなのです。

ためしに大文字小文字混ぜこぜにした http://GiHyO.jP/を開いてみても、きちんとgihyo.jpのサイトを見ることができます。例えばサイトのプロモーションで、チラシにURLを書いて配るときに、http://GIHYO.JP/のようにドメイン部分を全て大文字にして表記しても、サイトには問題なくアクセスできます。さらに最近は、ブラウザが勝手に大文字を小文字に置換するため、ドメインを大文字小文字を混在させて指定しても影響はありません。

話が脱線しましたが、このようにWhoisを使えば、ドメインから所有者を調べることができます。それだけではなく、「所有者名」から、所有しているドメインの一覧を調べることもできます。プルダウンメニューの検索タイプを「ドメイン名情報(登録者名⁠⁠、検索キーワードを「株式会社技術評論社」にして検索してみましょう。

Whoisで技術評論社が所有しているドメインを検索した
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株式会社技術評論社が所有しているドメインの一覧が表示されました。⁠技術評論社.jp」という日本語ドメインも持っていることが分かります。

では続いて「yahoo.com」のWhois情報も見てみたいと思います。プルダウンメニューの検索タイプを「ドメイン名情報」に戻して、検索キーワードに「yahoo.com」と入れ、再びドメイン名から所有者名を調べてみましょう。するとなんと「該当するデータがありません」と表示されます。なぜでしょうか。

yahoo.comは「該当するデータがありません」となってしまう
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なぜならば、このサイトは「JP」のレジストリであるJPRSが管理・提供している、⁠jpドメインのWhois情報が検索できるサイト」だからです。「jp」以外のTLD、つまり「com」「net」は対象範囲外なので、ここで検索しても出てきません。

先ほど話ししたとおり、Whoisはレジストリが管理・提供しているサービスです。⁠jp」のレジストリはJPRS、⁠com」のレジストリはVeriSign,Inc.、⁠nagoya」のレジストリはGMOドメインレジストリ株式会社と、TLDごとにレジストリは異なるため、TLDごとにWhois情報を確認できるサイトも別々です。Whoisに登録しなければいけない項目も、TLDごとに微妙に異なります。

Whoisは確認してみたいけど、TLDごとに確認するサイトがばらばらなのは面倒だなと思った方は、aguse.jpというサイトがお勧めです。このサイトであればTLDに関わらず、Whoisやその他の情報が簡単に調べられます。

aguse.jpならどんなTLDでもWhoisが調べられる
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しかしaguse.jpではレジストリのサイトほど詳しい情報は出てきませんし、情報が若干古い場合もあります(更新されたWhois情報が、最長で一か月くらい経たないと反映されません⁠⁠。最新のWhois情報をすべて正確に知りたいときは、やはり先ほどのようにレジストリのサイトで確認するのがお勧めです。

Whois情報を正確に入力しなければいけない理由

このようにWhoisとは、そのドメイン名を所有している組織や、連絡先、ドメインの有効期限などが誰でも見られるサービスです。しかし、なぜ個人情報の取り扱いが厳格化しているこの時世に、ドメインの所有者をインターネットで全公開にさせているのでしょうか。

それはトラブルが発生したときに、インターネットの利用者同士が連絡しあって、自律的にトラブルを解決できるようにするためです。ここでのトラブルとは、例えば「あなたが持ってるそのドメインは我が社の商標を侵害しています。裁判を起こされたくなければ、30日以内にドメインを譲渡してください」というようなものです。

もしWhois情報がきちんと登録されていなければ、トラブル発生時に、そのドメインの持ち主に連絡することができません。ですのでICANNは、ドメインを販売するレジストラに対して「最低年1回、登録者にWhois情報を最新化してもらうように」という確認を義務付けています。

Whoisに正しい情報を登録しなかったり、嘘の情報を登録すると、場合によってはドメイン名の登録を抹消されてしまいます。ですのでドメインを購入したら、Whois情報はできるだけきちんと登録してください。

しかし「個人でドメインを買ったけれど、個人名や自宅の住所をWhoisに載せるのはちょっと抵抗がある……」という人もいると思います。お名前.comでは、そうした「プライバシーの面から個人情報をWhoisに載せたくない!」という人のために、⁠Whois情報公開代行」というサービスを提供しています。これはWhoisで表示される組織名や連絡先を、代理でお名前.comの情報にしてくれるサービスで、一般的にはプロキシサービスやプライバシーサービスと呼ばれています。

このプロキシサービスを使うと、Whois情報を調べたときに「このドメインの持ち主はお名前.comです」と表示されるため、個人名や自宅住所をさらさなくて済みます。ただし、これは主として個人向けのサービスですので、co.jpのように、会社向けのドメインでは利用できません。

WhoisにはクライアントとWeb制作会社、どちらの情報を入れるべき?

Whoisの役割について、かなり分かってきましたね。ではここで質問です。クライアントのWebサイトで使うドメインを、Web制作会社が代わりに購入したようなときは、WhoisにはクライアントとWeb制作会社、どちらの情報を入力するべきでしょうか?

Webサイトの制作や運用を任されているのだから、Web制作会社にしていいのかなと思うかもしれませんが、基本的にはクライアントの情報を記載すべきです。

ただ、Whois情報は、トラブルがあったときの連絡先として公開されているものなので、実際何かトラブルがあればそこに連絡がきます。またトラブルの際だけでなく、SSL証明書の購入時や、ドメインの移管時においても、⁠Whois情報に書いてあるメールアドレス」に対して諸々の確認メールが届きます。そのため、⁠運用も含めてすべて任されているので、クライアントに技術的な問い合わせや、確認連絡が来ても困る……」という場合には、社名や担当者名、住所などはクライアントの情報にしておいて、メールアドレスだけはクライアントとWeb制作会社の双方が含まれるメーリングリストにしておくのが良いでしょう。

また、Whois情報は先ほど言ったように誰でも調べられるため、特にWeb制作会社が請け負っていることを公にしてはいけないケースで、うっかりWhoisがWeb制作会社の情報になっていると、見る人が見れば「このWeb制作会社が関わってるんだ」と分かってしまうことにも注意が必要です。

ドメインを買えたら、Webサイトはそれだけで見られる?

では再び、IMJ銀行の広報担当者の話に戻りましょう。ドメインは買ったし、Whois情報も登録したし、これでドメインに関してやることはすべて完了!と広報担当者はウキウキです。Webサーバには、事前にサイトのコンテンツをアップしてありますので、満を持してブラウザでhttp://imjbank.co.jp/を開いてみると、なんと次の画面が表示されてしまいました。

IMJ銀行のサイトを見ようとしたら見られなかった
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ドメインは購入できたし、Webサーバにコンテンツもおいてあるのに、どうしてまだWebサイトが見られないのでしょうか。なぜかと言うと、今ドメインとサーバは次の図のような状態だからです。

ドメインとWebサーバが繋がっていない
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ドメインとWebサーバは用意したけど、それぞれ存在しているだけで、その間に繋がりがありません。そこで、これを繋げる必要があります。

この繋げる作業を、よくドメインとWebサーバと紐づけるのように表現しますが、imjbank.co.jpというドメインと、Webサーバの「何を」繋げばいいのでしょうか? それを知るためには、IPアドレスのことを知っておく必要があります。

サーバにはそれぞれIPアドレスがある

サーバにはそれぞれIPアドレスがあります。このIPアドレスは電話番号のように、必ず一意になっています。つまり、同じ電話番号が同時に2つ存在しないように、同じIPアドレスも同時に2つは存在しません。imjbank.co.jpというドメインと紐づけなければいけないのは、このIPアドレスです。

ちなみにIPアドレスにはグローバルIPアドレスローカルIPアドレスの2種類がありますが、これは普通の電話番号(外線番号)と、社内の内線番号のようなものだと思ってください。

内線番号だけ教えられても、社外から電話はかけられないので、単に「IPアドレス」と言ったときは「グローバルIPアドレス」のことを指していることが多いです。公開するWebサイトのドメインと紐づけなければいけないのも、もちろんこの「グローバルIPアドレス」です。

ここでgihyo.jpを例にしてIPアドレスを理解してみましょう。gihyo.jpのサイトが存在しているWebサーバのIPアドレスは「49.212.34.191」です。すでにgihyo.jpというドメインと「49.212.34.191」というIPアドレスが紐づいているため、http://gihyo.jp/を開くとgihyo.jpのサイトが表示されます。

ドメインとWebサーバのIPアドレスが繋がっている
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ドメインではなく、http://49.212.34.191/のように直接WebサーバのIPアドレスを指定しても、まったく同じgihyo.jpのサイトが表示されます。

IPアドレスでもドメインでも同じサイトが見られる
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サイトを表示するには、imjbank.co.jpというドメインと、サーバのIPアドレスを紐づければよいことが分かりました。ではドメインとサーバのIPアドレスを紐づけるには、どこで何をしたらいいのでしょう?

名前と電話番号を電話帳の関係は、ドメインとIPアドレスとDNSの関係

さてここで突然ですが、皆さんは新しく知り合った人に電話番号を教えてもらったら、まず何をしますか? 電話帳に登録するという人が多いのではないでしょうか。ここにドメインとサーバのIPアドレスを紐づけるには何をしたらいいのかのヒントがあります。

名前

電話番号

電話帳

ドメイン

IPアドレス

DNSサーバ

実は上の表のとおり、名前と電話番号と電話帳の関係は、ドメインとIPアドレスとDNSサーバの関係によく似ています。電話帳に「名前と電話番号の組み合わせ」が登録されていれば、電話帳から相手の名前を選んで電話をかけることができますよね。それと同じで、DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」が登録されていれば、ブラウザでドメインを入れただけでサイトが表示できるのです。

つまり、ドメインとサーバのIPアドレスを紐づけるには、DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」を登録すればいいのです。というところで、先ほどのエラー画面のメッセージをもう一度よく読んでみましょう。

「imjbank.co.jpのサーバが見つかりませんでした」というメッセージが表示される
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この画面は、DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」が登録されていないのに、imjbank.co.jpのサイトを見ようとしたため、サーバにたどり着けず、ブラウザが「imjbank.co.jpのサーバを見つけられなかったよ」と言っているのです。iPhoneの電話帳にAさんを登録していないのに、Siriに向かって「Aさんに電話」と話しかけて、⁠Aさんは連絡先に見当たりません」と答えられたようなものです。

というわけで、IMJ銀行の広報担当者の次のタスクは、DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」を登録することです。でも、そもそもDNSサーバってなに? どこにあるの?「登録」って具体的に何をしたらいいの? と、まだ問題が残っています。

そのあたりのDNSサーバにまつわるIMJ銀行広報担当者の奮闘は、次回詳しく解説します。

ドメインの有効期限が切れるとどうなるの?

最後に、ドメインの管理におけるトラブルを一つ紹介しておきます。

ドメインは基本的に1年契約なので、有効期限が近くなるとドメインを購入したお店から「もうすぐ期限が切れますよ、更新してください」とメールで連絡があります。しかし、ドメインを購入したサイト制作会社の担当者が、その時点で退職していたらどうなるでしょうか。

メールは担当者に届きません。そして誰も期限に気づかないまま、ある日ドメインの有効期限が切れてしまいます。ドメインの期限が切れると、その日からそのドメインのWebサイトは表示されなくなりますし、メールも受信できなくなってしまいます。お名前.comでドメインを購入していた場合、有効期限が切れたその日から、本来のWebサイトの替わりにお名前.comの広告ページが表示されます

期限が切れてから約2週間ほどの猶予期間があるため、その間に買い戻す手続きをすれば、サイトを元に戻すことは可能です。ですが、その期間を過ぎてしまうと、もうドメインは簡単に買い戻せません。ドロップキャッチといって、更新をし忘れて取り落としたそのドメインを、さっと拾って、広告だらけのアダルトサイトにしてしまったり、あるいは何十万円という法外な値段で「売ってあげようか?」と交渉してきたりすることを生業とする業者がいるからです。過去に誰かが使っていた実績のあるドメインは、一度も使われていないまっさらなドメインよりも集客力があるため、その価値を狙ってこうしたドロップキャッチが行われるのです。

そのためドメインを購入する際には、レジストラやリセラに登録するメールアドレスは、複数名に届くメーリングリストにしておくなどの対策をしておきましょう。

またサービスが終了し、サイトをクローズした後のドメインの扱いについても、よく考えておく必要があります。不要になったドメインは更新せずに手放しても構いませんが、そのドメインをドロップキャッチ業者が購入するとどうなるかについて理解していないと、後になってトラブルになる場合があります。⁠サイトクローズ後にどんなサイトが表示されても問題ないか?」⁠関連サイト上にあったクローズしたサイトへのリンクはすべて消してあるか?」などを、事前に確認しておきましょう。

さて、今回は「ドメインが生まれてから手元に届くまで」を、一通り追ってきましたが、ドメインに対する理解は深まりましたか?

エピローグ:ドメインを買ってWhois情報を登録してみよう

Webデザイナー「なるほどね、ドメインってこんな仕組みで売られてたんだ」

エンジニア「そうなのよ。じゃあ早速、お名前.comで買ってみようか。ドメイン名は何にするか決めたの?」

Webデザイナー「designer.comがいいなー!」

エンジニア「そんなのcomに限らず、どのTLDでも残ってないと思うよ」

Webデザイナー「あっ、ほんとだ! comもnetもinfoもbizもjpも全部×になってる」

エンジニア「2、3文字とか1単語のドメインは激戦区だからねぇ。新しいTLDが出るタイミングなら買えるかもしれない。今ちょうどworksとかexpertとかのTLDが一般登録開始になったところだし」

Webデザイナー「それか日本語ドメインで、漢字のフルネーム.jpとかもありだなぁ」

エンジニア「でも海外からアクセスしにくいし、国内ですらURLとして認識されにくいよ。名前が売りたいなら、名前をローマ字にしたものの方がいいんじゃないかな」

Webデザイナー「あ、ねえ、○○.comってドメインにしたとしてさ、portfolio.○○.comとかblog.○○.comとかを作るたびにお金かかるの?」

エンジニア「左側に文字を足していくのはサブドメインって言うんだけど、最初の○○.comを買って自分のものにしたら、△△.○○.comを増やすのにお金はかからないよ。増やしたい放題」

Webデザイナー「そういうもんなんだ」

エンジニア「そういうもんです。で、ドメイン名、何にするの?」

Webデザイナー「悩む……」

エンジニア「⁠⁠しかし形から入るタイプなのかな……。ポートフォリオの中身を考えてからのほうがいいと思うんだけど⁠⁠」

こうしてWebデザイナーの悩みが、また一つ解決されたのでした。

次回のお悩みは?

Webデザイナー「ドメイン買ったのに、ポートフォリオサイトが見られない! 何したらいいの?」

次回のサーバ知識相談室は、ドメインとサーバを繋ぐ「DNSサーバ」についてご紹介します。そもそもDNSってなに? DNSサーバはどこにあるの? ⁠ドメインとIPアドレスの組み合わせを登録」って具体的に何をしたらいいの? 疑問の尽きない「DNSサーバ」について学んで、⁠ドメインとDNS」でつまづかないWebデザイナーになりましょう。

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